サイバー芳一
昔々、ネオ・アカマセキの荒波がサーバーラックを冷やす阿弥陀寺という場所に、エンジニア和尚と、サイバネ琵琶の名手・芳一が住んでおった。
夜な夜な、壇ノ浦のデッドストレージから這い出てくる平家のレガシー・プログラム(亡霊)に呼び出される芳一を守るため、和尚は「般若心経(プロファイル∶空)」をバイナリデータに変換した最強のステルス・プロトコルを芳一の全身にエンコードしたのじゃ。
ところが、作業中にバックアップ電源がダウンする不測の事態が発生。耳のセグメントだけが「コンパイルエラー」を起こし、迷彩が正常にレンダリングされず、物理レイヤーに実体化したまま残ってしもうた。
深夜、平家の武者が霊子スキャナーで境内を探ると、そこには誰もいないはずなのに、空間にポツンと二つの「高エネルギー体(耳)」が浮いておった。武者はそのエラー部位を強引にデプロイ(切断)し、戦果として持ち去ってしまったのじゃ。
翌朝、耳のあった場所からオイル(血)を流して失神する芳一を見て、和尚は嘆き悲しんだ。
「すまぬ芳一……耳のテクスチャ・マッピングだけ、パッチが当たっておらんかった……!」
しかし、芳一はタダでは起きなんだ。和尚が新造した「黄金の義耳(魂子受信アンテナ)」を装着し、平家に奪われた「生身の耳」と魂子もつれを維持したまま、敵のメインフレームへ逆探知を仕掛けたのじゃ。
今や芳一は、失った耳をハニーポット(囮)に変え、琵琶の旋律で敵の怨念リアクターにビット反転(成仏コマンド)を送り込む「パッチ漏れの芳一」として、サイバー下関の伝説になったということじゃ。
めでたし、めでたし。
耳ではなく爪を剥がしながらのデバッグはこちら
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