練習用ラブコメ
「え、お前修学旅行で告るの!?」
こいつは、小林。俺の親友の中で一番信頼できるであろう男だ。そいつと、放課後の教室で恋バナをしていた。 俺には、好きな女がいる。そいつに、修学旅行で告白をする。そんな内容の恋バナだ。
「ああ、そうだ。もう2年も片思いだから、卒業するこのタイミングでケリをつけたい」
俺たちは、現在中学3年生の2月2日。そして、中高一貫というわけでもないから、ここで告らなければ、もうチャンスはやってこないだろう。だから、来週の2月8日から6泊7日の修学旅行で告る事にしたのだ。
「いいじゃん!!何日に告るのか決めてるの?」
まだ詳しいところまでは考えてないわけだが。
「6日目、夜にホテルの屋上に誘うつもり」
それを聞いた小林は少し考える素ぶりを見せた。
「最終日前日の夜景、丁度いい場所じゃないか。だけど、そんな所に呼び出してしまったら、君の好意が勘付かれちゃうかもよ?」
勿論それも知っている。だが、別に気にするようなことではない。なぜなら、
「そんなのもうとっくにバレてるから」
少し、顔が熱くなる気がする。もしかしたら、バレてないかもしれない。誘う時にバレるのかもしれない。だけど、好意を向けられている事に気付いたとして、だれが不快になるのだろうか。それこそ、よっぽど嫌われていない限り有り得ないだろう。そして今、俺とあいつの関係性は、良好である。だからこそ、もう好きなのはバレている、という心持ちであいつの事を誘うつもりだ。
「へー、そうなんだ」
「なんか軽いな」
「じゃあ、騒がれたかった?」
「別に、それは求めてないが、少し意外だったもので」
それに、小林が言葉を返そうとした瞬間、教室の扉がゆっくりと開く。そして、入ってきたのは、今話題に上がっていたあいつ、こと鈴木だった。そして、それがわかった瞬間、背筋が凍りつくような感覚に襲われた。今までの会話が、聞かれていたのだろうか。まさか、こんな時間まで人がいるなんて想定していなかった。しかも、それが鈴木だという覆りようのない事実に、ただ茫然としていると、小林の声が聞こえた。
「あ、鈴木さん!どうしたの?」
「ちょっと忘れ物しちゃって取りに来たのー」
ああ、やはり可愛い。まず、そもそもとして顔が、美しい。黄金比が美しいと思えなくなるほど、彼女の顔は美しかった。さらに、そこに可愛い性格ときたものだ。どこにこいつに惚れない男がいるというのだ。
「小林くんと、小沢はなにしてたのー?」
鈴木の可愛い所を考えるのに脳のリソースを割いていた俺は、その問いかけに反応できなかったが、またしても小林に助けられる事になる。
「あー、ちょっと恋バナしてたんだー」
それを聞いて、鈴木は、少し動きが止まった。そして、次に出てきた言葉は、
「それって、小林くんの?それとも、、、」
そこまで言い掛けて、言葉が詰まったらしい。まさか、俺の名前、忘れられたのか!?だとしたら俺、3日は寝込むぞ。
そんな俺の気持ちを理解したのか知らないが、なぜか突然ニヤニヤし始めた。
「ん?こいつの話聞いてた」
なんで、言うんだよ!!バカじゃねえのか!!
「あー、悪い、俺ちょっと忘れてた用事あったわー、じゃ、お先ー」
そう、わざとらしく言う小林は気持ち悪いくらいに、親友だと思いたくないほどにニヤニヤしていた。そして、そのまま立ち上がり、バックを背負い、鈴木が開けたドアから出て行く。
そして鈴木と2人きりになったわけだが、気まずい。だが、来週に付き合おうとしている人と会話が出来なくて、どうする。そして、喋る言葉を探していると、鈴木が俺の方に歩み寄ってくる。
「誰が、好きなの?」
近寄ってきたにも関わらず、目を逸らされる。これに、俺はなんて返すべきなのか。今、言ってしまうか?
そして、感情と思考がぐちゃぐちゃになっていき、、、考える時間がない事に気づく。鈴木からしてみれば、自分の言葉を無視されている、と言うふうに見えるだろう。それは駄目だ。だから、俺は一番簡単な選択肢を選ぶ事にした。
「俺が好きなのは、鈴木って奴だ。誰にでも明るく接していて、たまに元気がなさそうなことがあっても、話しかけたらいつも通りに接してくれる。そんな、君が好きだ」
言って、しまった。本来であれば13日に言うはずだった言葉を、ここで、言ってしまった。言っちゃった。言っちゃった。あー、あー。
そして、そして、鈴木が俺の方を見詰めてくる。
「私も、小沢の事、好き」
「じゃあ、僕と付き合って下さい!」
勢いとその場の雰囲気に後押しされたから出た、その言葉。鈴木が、俺の事を好きだった。全くそんな素ぶりを見せなかったが、そう言われた。これは、確定と言っても過言じゃないだろう。
そして、鈴木は少しはにかんで、答えた。
「これからよろしく」
その言葉が耳に届いてから理解するまでに、そう長い時間はかからなかった。




