表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『いもモー裏話』.....おねーたんたちの秘密、知りたいでち?  作者: 未知(いまだ・とも)


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

22/22

【外伝】エリアス、深く静かにブチ切れる

いもモー本編57話あたりを書いていたら……

リヒトの非道っぷりに、私の脳内でエリアスが深く静かにブチ切れていたので、その様子を書いてみました(^◇^;)


ストーリーの流れ上、本編に入れられませんでしたが、

本編をお読みになった後に、ifの一幕としてお楽しみいただけたら嬉しいです。

リヒトの配信により、幼い頃のまきぽんの姿が映し出された瞬間。


——コアルームの空気が、凍った。


ブリギッドが小さく息を呑み、三精霊たちもぴたりと動きを止める。


「えーくん……?」


ライ子がおそるおそる、エリアスの顔を覗き込む。


「……ブリギッド。通信回線、開いてください」


エリアスの声は、驚くほど静かだった。

静かすぎて、逆に誰も口を挟めない。


「しかし、今の負荷では……」


「構いません。手短に済ませます」


眼鏡の奥の瞳が、冷たく細められる。


いつもの彼なら、こんな場面でもまず負荷と優先順位を計算するはずだ。


けれど、今のエリアスは違った。

キーボードの上に置かれた指先が、わずかに震えている。


——怒りで。


「回線を繋ぎなさい」


「……はい、マスター」


有無を言わせぬ迫力に、ブリギッドが瞳の中で青白いコードを走らせる。


次の瞬間、まきぽんたちがいる境界の聖域に

割り込むように、通信用のウィンドウが開いた。


突然邪魔が入り、リヒトが眉をひそめる。


「……は? なんだよ」


ノイズ混じりの光の中に、ローブ姿の青年が映し出された。


エリアスの瞳は、まずまきぽんを探した。

青ざめて震えている姿に、優しい視線を向け——


それから、ゆっくりとリヒトへ向き直る。


《……随分と、品のない真似をしてくれましたね》


低い声だった。


怒鳴っているわけではない。

けれど、途端にその場の温度が下がった気がした。


リヒトは鼻で笑う。


「はっ! エリアスかよ。

 てめぇも見てたんだよな? こいつの情けねぇ姿をよ」


まきぽんの瞳が、悲しげに伏せられる。


「配信なんて結局、こういう剥き出しの感情が、一番数字取れるんだよなぁ。

 ……そうだろ?」


エリアスの表情は動かない。


《数字?》


その一語だけを、冷たく繰り返す。


《——なるほど。

 あなたにとっては、人の痛みも、記憶も、尊厳も……

 全ては『再生数の燃料』でしかないのですね》


「だったら何だよ。視聴者が見たいもん見せてやってるだけだろ?」


リヒトは悪びれもせずに、肩をすくめる。


エリアスはそこで初めて、わずかに眉を寄せた。


《……違います》


短い否定だった。

だが、その一言には明確な怒気が込められていた。


《見たいものを見せることと、

 見せてはいけない傷を暴くことの区別もつかないのなら——》


青白い光が、彼の背後で静かに立ち上る。


《あなたには、配信者を名乗る資格すらない》


リヒトは笑みを一瞬引き攣らせた。


「はっ、偉そうに……!」


《偉そうで結構》


エリアスは一歩も引かない。


《私は今、心からあなたを軽蔑しています》


その声音は、あまりに静かだった。

感情の昂りが見られないからこそ、そこに付け入る隙がない。


「なっ……!」


リヒトも反撃のために口を開こうとしたが、すぐに言葉が浮かんでこないようだ。


他人を煽って冷静さを失わせ、揚げ足を取ることを得意としてきたリヒトにとって——

これほどやりにくい相手はいないだろう。


《彼女がどれだけの夜、

 どれほどの悔しさを抱えて、それでも前を向いてきたか》


まきぽんは涙を滲ませていたが、エリアスの言葉に、少しずつ落ち着きを取り戻していった。


《それを何一つ知らないあなたが——》


彼はそこで一瞬、言葉を切った。

そして怒りを抑え込むように、軽く息を吐く。


挿絵(By みてみん)


《その痛みを、娯楽に変換するな》


怒鳴りつけるでもない、罵るでもない。

だがひたすら重い一言に、その場の誰も、すぐには口を開けなかった。


まきぽんでさえ、目を見開いたまま、画面の向こうの青年を見つめている。


エリアスは、再び彼女を見た。

そこには優しさの光が戻っていた。


《まきぽん》


「……エリアス」


《あなたは、見世物などではありません》


まっすぐな声。


《あなたが見せてきたものは、他人に笑われるための傷じゃない。

 それでも前へ進むために積み重ねてきた、確かな歩みです》


リヒトの作った黒いモニター群が、青白い光に照らされ、色褪せる。


《ですから、顔を上げてください》


その一言で、まきぽんの瞳に少しずつ光が戻っていく。


《リスナーが見たいものは、あなたの過去ではありません。

 ——あなたが見せてくれる未来です》


 短い沈黙のあと。


「……ありがとう、エリアス」


まきぽんは湧き上がる涙を堪えながら、震える手でスマホを握り直した。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。


エリアスって、普段は穏やかだからこそ、本気で怒った時がいちばん怖そうなタイプですよね。


そして彼が一番怒るのは、自分が傷つけられた時ではなくて、

大切な仲間の尊厳を、土足で踏みにじられた時でしょう。


本編どこだっけ? と思われた方は、もう一度ここからどうぞ!

『異世界で待ってた妹は、モーニングスターで戦う魔法少女(物理)だった件』

https://ncode.syosetu.com/n5538ky/63

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ