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せーぶあんどろーどのせかいで!  作者: かき氷とシロップ
始めての出会い。始めての冒険。
3/3

一度目の死

「さてと、気分転換の散歩。あんな話聞いたらそら胸糞悪くもなるわけだがな」


町の皆が死んだ。生き残ったのは、か弱い少女一人。

よくよく考えてみると、なんでこの状態で精神が崩壊していないんだ……。

不思議なやつだ、ティミストは。


……さっきから、そこらをぶらぶらしてるが物珍しいものは見つからない。

中世もので定番の、木材と石と土を使った三角屋根の家。さっきから、こればっかり視界にうつる。


「はぁ……」とため息をつき、ティミストのところに戻ろうとする。


180°ターンしたところで──、


「そんなに何も無いって言いたいの?図々しいわね。ナギサは」


心を開かれたと思われる口調だが、今だその声は冷たさと鋭さを持ち合わせる。だが、すこし幼く甲高く、可愛らしくもある。

腕を組み、仁王立ちしたその姿はどこか強さを感じる。

ベージュ色の髪、その色と同じ毛の耳、ルビーのような赤い瞳。

灰色のローブに青いジーパンのようなものを身につけた少女。


──ティミストがいた。


「……いつの間に居たんだよ」


ビビりつつティミストに聞こえないような小さな声で呟く。と、


「……何か言った?」


方眉を上げながら聞いてくる。


「いや、なんでも」

「ただ……」

「ただ?」


ただ、お前が怖いよ。いろんな意味で。


こう言おうとしたが、喉から口に出るすんでで踏みとどまった。ティミストを傷つけるかもしれないから。

さすがに異世界に来てまで人生に疲れたくはないし。


「なんでもない。散歩も終わったし、腹も減った。食料無いか?飯作るよ」

「はぁ……。モヤモヤするわ……」


顔をうつむかせ、「やれやれ」とでも言いたい口調だ。その言葉に続けるように、呆れた表情でこちらを見る。


「あるわよ。美味しい食事になることを期待しているわ」


そう期待の目と微笑みを向けられ、ティミストから目をそらす。


「どうしたの?」

「なんでも!行くぞ!」

「照れ隠し?」

「うるさい……」



「さーてと!作りますか昼食!」


制服の袖を捲り、包丁を持つ。料理の準備は満タンだ。


んで、今日のご飯はスープにそこらの家から貰ってきたパンを食べる。


スープはじゃがいも、ニンジン、キャベツをぶちこみ塩と胡椒(高級品らしいのでしょっぱい木の実で代用)で味を整えたものを作る。

パンは普通に食パン。


まずは、かっさらったまな板の上で、じゃがいもを小さめのサイコロ状に切り、ニンジンはイチョウ、キャベツは一口大にちぎる。


あらかじめ燃料の敷かれた石の上に鍋を乗せ、水を入れる。で、全部入れる。


「んで、火はどうする?ティミスト」

「魔法でいいじゃないの」


ティミストは魔法が使えるのか。いやまぁ異世界だから当たり前だけれども。


「じゃ、見せ場どうぞ」

「ファイアー」


燃料を人差し指で指差し、そう唱える。と、指先から火が飛び出し、燃料に火がついた。ちょうど、俺が想像してた中火くらいだ。


「おぉ、すごい」

「すごいも何も、これは基本の基本よ?」

「いやぁ……俺魔法使えないし」

「……ナギサって相当おバカさんなのね」


おバカさんって可愛いな。

そんなことはどうでもよくて、水が沸騰するまで待つ。


「水が沸騰したら火、弱くして」

「はーい」


出来上がるまで待ち遠しい!自分で料理するのはあんまりないが、することは好きなんだよなぁ。実際、中学生くらいにはお菓子作りにハマっていたいのだ。

沸騰って結構かかるよな。話題を提示して時間を潰そう。


「ティミストってさ」

「?」

「種族的にはなんて言うの?」


そう問うと、ティミストは顔をうつむけ黙ってしまった。


「……えっと、ごめん。聞いちゃいけないやつ?」

「そんなことないわよ。私は半獣人族。だから耳が頭についてるの」

「へぇ。獣人と半獣人ってやっぱ血の濃さで違う?」


「そうね。元々、どうやってできたかは未だにわかってないの。でも、最初は獣の特徴を持った獣人。ってことがわかってるわ。そこから更に人と交配した結果、人の形をした獣人、獣としての毛が薄くなって人の血が強くなった半獣人、更に濃くなって私たちのような耳と尻尾だけついて、獣のような爪を持つ、半獣人」


「獣人の中でも三つに分類できるのか!すげーな!」

「あっ、そろそろじゃない?」


感心していたら、ティミストが鍋を指差した。たしかに、沸騰している。そろそろだ。


「じゃ、おねしゃす」

「ちょっと鍋どけて」


そう言われ、すこし疑問に思ったが素直にどける。

「ウォーター」


ティミストの手からすこし水が生成される。それが火へと向かい、「シュー」と音を立て消える。


「思ったよりも力業じゃねぇか……」

「火を作ったらあとは勝手に燃えるんだから、しょうがないじゃない」

「ファイアー」


さっきと同じ唱えをし、次は弱い火ができた。

これでちょっと待てば完成だ。


「ねえ、ナギサ」

「ん?」

「体、悪いところ無い?」

「特になし。だ」

「……そう」


一連の会話のなかで、ティミストがなぜかすこし顔をうつむけた。


「なんでもないわ」


「──?」


「まぁいいや。食おうぜ」

「そうね」


笑顔を取り戻したティミストが、また鍋をどけるように指示をする。その通りに行動し、先程と同じように水をかけ、火を消す。

鍋を平たいところに置き、木の食器の中にぶちこむ。そしてパンをそこら辺に置く。


「じゃ、いただきまー……ごほっごほっ!」


手で口を抑える。咳に乗って唾液っぽいのも出てきた気がする。

自分は普段、マスクをしている。唾液がマスクに出たようだから、マスクを外し、改めて飯を食おうとすると──、


「……は?」


右手で外したマスクの内側には赤い液体が付着していた。

考えられるは一つ。


「──血?!ごほっ!」


また咳が出る。口を左手で拭く。

左手に目をやる。そこにも血がついている。


「ヒュー……ヒュー……」


息をするたび、喉から笛のような音がなる。

……命の危機を感じる。


「ティミスト、助けて……」


「ナギサ……」


「──ごめんなさい……ごめんなさい!」


そう言い、ティミストは走ってどこかへ行ってしまう。


「ティミス……かはっ!」


手を伸ばすがティミストにはもう届かない。


「ごほっごほ!」


咳で腹に力が入り、吐き気も込み上げてくる。


「ごほ……おぇ!」


血に混じり胃酸が出てくる。

胃から食道、そこから喉に口に。

その感覚が気持ち悪くてまた吐いてしまう。


痛みも出てきた。

苦しい。痛い、つらい。殺してほしいくらいに。

頭がガンガンと、鈍器で殴られたように痛む。


「ごほっおぇ……」


血の味、胃酸の味がして、気持ち悪い。

全身の感覚を遮断したい。咳が出て、血が出て、胃酸が出て、涙が出ている。


ドクドクドクドクドク。と、自身の鼓動が激しくなっていくのを感じる。気持ち悪い。なんでこんなことに。なんでこんな目に。


視界が狭まり、ぼやけてくる。

──死ぬ。そう感じる。


「ヒュー……ヒュー……ヒュー……」


地面に膝を付き、そのままダイブする。

今まで出したものが体にまとわりつく。その感覚が気持ち悪くて、また吐いてしまう。

地味に温かく、粘り付き、血の臭い、胃酸の臭いが更に気分の悪さを加速させる。


──体に力が入らない。目が完全に閉じそうだ。

死ぬ。死ぬ。死ぬ。


視界が真っ黒になったとき、俺は、『三条渚』は死んだ。


そう確信した瞬間、意識をどこかに持ってかれた。

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