4/4
星
青白い頬に、点々と黒子が散っている。
私は己のそれを嫌っていたが、彼はそれを、星のようだ、と言った。
彼とは年が同じだった。
母の兄の息子。つまり私の従兄弟。
私は生れつき股関節に障害があり歩く速度が人より遅い。しかし従兄弟はその長い脚で、だれよりも速く歩き、走ることができた。同じ血を分かつのに、こんなにも違う。恵まれた体躯に、恵まれた頭脳。
高等学校の帰り道で、川原の草むらに並び座る。傾く西日が彼の形のよい鼻梁に影を作っている。この草むらで、彼は私に口づけをする。
その理由を、私は聞かずに、いた。
互いの会話が途切れ、かすかな息遣いだけが聞こえるような瞬間、彼は私の頬を、撫でた。
「星みたいや」
「なにが?」
「お前の、これ」
といって、彼は私の黒子を撫でる。
それからまるで線を繋ぐように口づけをするのだった。
翌年、彼は死んだ。
お国のため、という理由で。
了




