1/4
【BL片恋短編集】第1話 「風車」
BL片想いシリーズ 第1話です。
地上に出ると、広場があった。
ビルの合間の空はラベンダーから藍へ色を変えていた。俺は一日履き続けて蒸れた革靴でエレベーターの最後のステップを踏んだ。軽自動車が一台走れるくらいの車道を渡る。
宵の口とはいえうだるように暑い。夏休みなのだろう。小学生くらいの子供がはしゃいでいる。からからと音がする。小山に差し込まれた無数の風車が、ビル風に吹かれささやかな音を立てているのだった。
「三崎」
西日もないのに眩しそうな顔をしている。同僚の水野が手を上げた。
「待たせたな」
隣に肩を並べる水野は、俺よりすこしだけ背が高い。
「いや」
これから行く店は決めていなかった。
水野は、俺と一定の距離を保って立った。他の、同僚、もしくはすこしだけ親しい友人、と同じくらいの距離。水野は「あちー」と舌を出しながら、ネクタイを緩める。
「マジで、暑いな」
つられて結び目を緩めれば、水野がこちらを見る。
「何?」
「……いや。なんでも」
(了)
両片想いのサラリーマン。二十代終わりくらいを想像しています。




