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【BL片恋短編集】第1話 「風車」

BL片想いシリーズ 第1話です。

 



 地上に出ると、広場があった。


 ビルの合間の空はラベンダーから藍へ色を変えていた。俺は一日履き続けて蒸れた革靴でエレベーターの最後のステップを踏んだ。軽自動車が一台走れるくらいの車道を渡る。

 宵の口とはいえうだるように暑い。夏休みなのだろう。小学生くらいの子供がはしゃいでいる。からからと音がする。小山に差し込まれた無数の風車が、ビル風に吹かれささやかな音を立てているのだった。

「三崎」

 西日もないのに眩しそうな顔をしている。同僚の水野が手を上げた。

「待たせたな」

 隣に肩を並べる水野は、俺よりすこしだけ背が高い。

「いや」

 これから行く店は決めていなかった。

水野は、俺と一定の距離を保って立った。他の、同僚、もしくはすこしだけ親しい友人、と同じくらいの距離。水野は「あちー」と舌を出しながら、ネクタイを緩める。

「マジで、暑いな」

 つられて結び目を緩めれば、水野がこちらを見る。


「何?」


「……いや。なんでも」





(了)


 


両片想いのサラリーマン。二十代終わりくらいを想像しています。

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― 新着の感想 ―
作者様は情景描写とキャラクターが連動していて、二人の空気感が伝わります✨あれ、最後チラ見しました?✨
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