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第3話|未来を変える作戦

どうしよう...!

エントランスの集合時間まで、あと1時間しかない!


今から「やっぱりやめます」なんて言えないよね……?

いや、言えるなら言いたいよ!でもそんな勇気ある?ないよ!


どうしよう、心臓がバクバクしてる。

このまま行ったら、また同じ未来になる。


だめだ、何か……何かを変えなきゃ!

何でもいいから変えるの!


そうだ、少しでも違う流れを作ればいいんだ。

過去と同じシナリオをトレースしなければ未来は変わるはず。


まずは……見た目から変える!!


メイクを少し濃くしてみよう。

いつもよりリップを強めにして……。

髪も結んでみる? うん、まとめ髪で大人っぽく!

あとは……メガネ!?

いや、さすがに唐突すぎるし......そもそも持ってないじゃん私!


よし、まだ時間あるし、香水でも買ってみようかな。

漂う香りが少し違う、それだけでも何かが変わるかもしれないよね。


急いでオフィスビルの地下のドラッグストアに駆け込む。


……って待って!


あの時も緊張して汗の匂いが気になって、同じように香水を買ったんだった!


ちょっと!同じことしてどうするの!?

これじゃ変わらないじゃん!


どうしようどうしよう!!

パニックになりながら考える。


落ち着け!落ち着け、私!


あの時は、直樹が先にエントランスで待っていて、私が後から合流した。

なら……その順番を逆にしてみよう!


私が先に着いて待っている側になる!

これなら違う展開になる……はず!


抗え!私!!


ビルのトイレに駆け込み、必死にメイクを直し、結んだ髪をきゅっとまとめる。

香水の代わりにボディシートで汗を拭き、急いでエントランスへ。


約束の時間より15分早い18:15。


息を切らしながら到着すると、直樹の姿はまだなかった。


よし!すでにあの時とは違う未来になってる!

この調子で未来を狂わせるのよ!


ひとりで勝手にガッツポーズ。

……怪しい人に見えてないかな、私。


そして、10分後。


「ごめん、お待たせ!」


直樹が現れた。

くっ、来た!笑顔がまぶしい!


「いえ、私も今来たところなので」


「……あれ?詩織さん、さっきと雰囲気が違うね。あと、髪、さっきまで結んでなかったよね?」


「は、はい! せっかく良いお店行くので、少しテンション上がっちゃって」


「え、そんなに喜んでくれるなんて嬉しいよ! 誘った甲斐があったな!」


あっ……やっちゃった。

うわああああ!やっちゃった!!


これ……完全にデートに気合い入れてる女子じゃん!!


未来を変えに来たはずなのに、真逆のアピールになってる!


そこまで考えてなかったーー!!!


って、未来が変わらないどころか……これ、直樹との結婚が加速してない!?


その後、お店に着くまで、話す内容はぜんぶ前と同じ。


同じ道を歩いて、同じ話題で笑って…… デジャブすぎて心臓が痛いよ。


……あれ?


これってさ、完全に前回のトレースじゃん!

同じ未来歩んでるじゃん!


気づいてしまった。

このままだと結局、未来は一ミリも動かない。


そっか……それであれば、会話の内容を変えればいいんだ!


そうだ、未来を変えるのは行動だけじゃない。

あの時の私は、直樹に好かれたくて、好かれる答えばかりしてた。


...だから今度は、その逆をやる。


──むしろ、引かれるぐらいの返しをする。


「なんか違うな」と思ってくれたら……告白自体なくなるんじゃない!?


よし、これで未来をズラしてやる!


そんな決意を胸に、ついにレストランへ。


ここよ、ここ。

私の運命を狂わせた、あのイタリアンレストラン。


でも……美味しいから許す。


本当に予約が取れないお店で、人生で二回食べられるなんて逆にラッキーじゃない?


席について、直樹がコースのライトプランを注文する。


「詩織さん、お酒飲めたっけ?どうする?」


きた、この流れ。


当時の私は緊張を紛らわせるためにワインを頼んだんだよね。


ここで選択肢を変える!


「あの、私あまり飲めなくて……ウーロン茶でもいいですか?」


「うん、わかった。僕もそうするよ」


あれ?

......あっさり。


これ、本当に未来変わってる?


ウーロン茶が運ばれ、乾杯して前菜がテーブルに並ぶ。


……うわ、これこれ!

このサラダ!久しぶり!

ドレッシングの香りがもう反則。

一口食べた瞬間、10年の時を超えて舌が覚えてた美味しさが蘇る。


「詩織さん、すごく美味しそうに食べるね」


そりゃそうよ!待ちに待った2回目のサラダ!

期待を裏切らないどころか、思い出補正で美味しさ倍増中だもん!


「そ、そうですか?だってこんなに美味しいサラダ食べたの初めてで!」


もうここは楽しむ!

未来は変えるけど、これは楽しむ!


会話は仕事の話中心で、意外と穏やかに進んでいく。


……そして、メインディッシュを待っているときだった。


そういえば...この時だよね。

直樹が私を試すような...私の心を揺さぶる質問をしてくるの...


私、知っているの。

直樹から告白された後に聞いたから。

あの質問は、告白がうまくいくかを探ってみたって、直樹本人が言っていたから。


直樹の作戦は筒抜けよ。

さあ、心の準備はできた。いつでも来て。


「詩織さんってさ、理想な結婚相手ってどんな感じの人なの?」


きたあああああ!!!


この質問、この空気!

10年前もこれがトリガーだった!

今考えると、デートでこんなこと聞くなよと突っ込みたくなるけど...


当時の私は「優しくて頼りになる人で...辛い時とかにずっとそばで守ってくれる人がいいな」って答えちゃったんだよね。

明らかに直樹を意識した回答だった。


でも今日は違う。

直樹の正反対を突きつける!


「アウトドアでワイルドな人ですね。無人島サバイバルとか、アフリカの奥地を旅するとか……そういう非日常を一緒に体験したいです」


どうだ!

インドア派の直樹よ、これで諦めろ!


「え!?そうなの!?意外だな……」


よし!

引いた......よね!?

自分とは全く違う人だなって思ったよね!?


「でも、そういう生活も刺激あっていいかもしれないね!非日常を全力で楽しむとか、面白そうだなあ」


ちょっと!なんで乗ってくるのーーー!!!


直樹!あなた絶対無人島サバイバル無理じゃん!絶対腹空かせて初めに倒れる人じゃん!


どうしたの!?


もしかして……逆に私に興味湧いてる!?


次!次で挽回!


「じゃあ、理想のプロポーズとかあるの?」


理想ね……当時はロマンチックなこと言っちゃった。


だから今回は逆!真逆でいく!


「フラッシュモブがいいですね。場所はイオンとか、ららぽーとか、普段の買い物中に急に始まるサプライズ!って憧れます!」


どう?これならドン引きでしょ?


「あははは!それいいね!逆に一生忘れられないプロポーズになるじゃん!」


ねえ直樹、なんで楽しそうなの!?


これはやばい。

避けるどころか、むしろ好感度上がってない!?


その後も意識して“引かれる答え”を連発したのに、全部逆効果でウケてしまう。


まさかギャップ萌えで評価が上がるなんて、想定外すぎる!


「あ、そろそろ時間だし、行こうか」


終わった……たぶん未来変わってない。

これ絶対5分後に告白されるルート入ってる......


このまま付き合うとか...ないよね...?


ダメよ、詩織!その後にどういう世界が待っているのか、あなたよく分かってるでしょ!


でも...話しててひとつ思ったことがある...


未来を変えるために、私は"自分の選択を変えよう"とばかり思ってたけど……


もしかして……直樹自身を変えたら、未来が変わることもあるんじゃない?


直樹の選択肢を、私が変えられたら……違う道になるのかな?


直樹との結婚生活が幸せに続くってこともあるのかな...?


でも、それってできるの?

私がもう一度、直樹を選ぶってことなの?


……どうしよう、わからなくなってきた。


未来を変えるって、こういうことなのかな。

それとも、また同じ未来に足を踏み入れてるだけ?


私は...どうすればいいんだろう...


私に、直樹からの告白を断ること...本当にできるのかな...

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