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死んだ聖女は天使と遊ぶ ~犯人を捜したいのに、スローライフを強いられます!~  作者: 雪村灯里
第一章 聖女暗殺

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第7話 イケメン騎士は怒らせると怖い

 医務室からフローの部屋に向かおうとしたら、断れない流れ(オート)で護衛が付いてしまった。


 私とフローは騎士ルイスの隣を歩きながら、いつもよりざわめく城内を進む。

 どうやら、私以外フローの姿が見えていないようだ……


(第3騎士団のルイスか~。私、苦手なんだよなぁ~)


 第3騎士団は聖女関連の仕事を請け負う。なので私はルイスの顔を知っていた。彼は私より4つ年上で、異例の若さで出世した副団長だ。  


 先日、彼からはダークドラゴンを撃退した時に、こっぴどく叱られた。優しい顔して怖い。


(はぁ……もう感情がめちゃくちゃだよ)


 思わずため息を吐いた。気持ちの整理をさせて欲しい……。


 私は歩きながらも、城内の様子を観察する。


 皆、慌ただしく右往左往している。キョロキョロとしていたら、突然ルイスに声を掛けられた。



「フローティア嬢は、聖女様をものすごくお慕いしていたのですね? 冷静沈着なあなたが取り乱す姿を初めて見ました」



 (ひぃっ! びっくりした~)



 フローは、そんな私を見て『答えてください』と、言わんばかりに顔を覗いてくる。


「ええ……メルティアーナ様とは、初等学校からの付き合いでしたので。気が動転してしまいました。誰があんなひどい事を……」


「ほう……それは初耳だ。聖女様とはそんなに長いお付き合いだったのですね? 貴女(あなた)はご自身の事を話したがらないのに、驚きました」


 ルイスは目を細めて私を見つめた。


(その目、本当に驚いていますか??――いや。私、何かマズイこと言った?)


 フローを見ると、彼女は渋い顔をして首を横に振っている。個人情報を言うなって事らしい。


 言われてみれば、フローは周囲に自身の事を話していないかも……これ以上話すとボロが出そうで怖いっ。それに面倒だ。話題を変えて、彼から情報を聞き出そう。


「今、城内はどのような状況になっているのですか?」


「医師の検死も終わり、聖女様のご遺体は棺に納められ、大聖堂に安置されております。3大臣より犯人捜しの令が下り、怪しい人物は聴取されています。貴女は倒れてしまったので、目覚め次第とのことでした」


 なるほど、私もこれから聴取が有るのか。この聴取で犯人が見つかれば一番いいのだけど……


「貴女は……昨晩、出かけていたのですか?」

「――! は、はい。町はずれの魔法店に。魔法を勉強に行っていました!!」


 言ってからハッとして、思わず手で口を塞いだ。私は、何を素直に答えているの!?


 彼をチラリと見上げると……氷の様に冷たい視線で私を見ている。思わず背筋がブルッと震えた。


(ルイス、君は私を犯人だと疑っていないかい??  いや、疑っている!!)


 私は助けを求めるようにフローを見ると……額に手を当てて、頭が痛そうなポーズをしていた。


 驚いて止まってしまった思考が徐々に動き出す。きっと、先に聴取された侍女達の間で話しが出たのだろう。『今朝、(フロー)が部屋に居なかった』と。


 ああっ……それに使用人は原則出かけるときは許可を取らないといけない。アリバイはすぐに証明できず、規律を破ったのもバレた。


 つまり私は自ら墓穴を掘った。


 あわあわと狼狽えていると、更に質問が飛んできた。


「町はずれの魔法店とは……以前、王宮魔術師だった魔女の店ですか?」

「ハイ……ソウデス……ドロシーさんノ店デス」

「城を黙って抜け出すのは感心しませんね」

「ハイ、申シ訳ゴザイマセン……」


 冷や汗がだらだらと流れてくる。もう、嘘はつけない! 余計に疑われたら堪らない!! 


  行動については正直に話そう……そう誓いながらも、実際は動揺で目が活きの良い魚の様に泳ぐ。そんな私を余所(よそ)に、彼の質問は続く。


「貴女が戻ってきたのは、いつですか?」

「大聖堂に駆け込む少し前です……あの、これ尋問みたいじゃないですか?」


 そうだ。私はこれから聴取されるのに、何故ルイス君に尋問されるんだ!

 私が彼に問いかけると、このイケメンはにっこりと笑って答えた。


「いえ、聴取ですよ? 言いましたよね? 貴女は()()()()()って」

「え? 聴取? なぜ騎士の貴方が?」


 彼は歩みを止めた。


「今回、僕達第3騎士団が犯人探しに名乗りを上げました。私達の聖女様をあんな(むご)たらしい目にあわせた奴が許せません!」


 彼は拳を強く握り締め、悔しそうに答える。『私達の聖女様』って彼に言われると、私は彼等に嫌われて無かったんだと少し安心してしまった。そんな懸命に探してくれて嬉しいよ……。


 ルイスは私を見ると満面の笑みで告げた。


「――と言う事で、フローティア嬢。貴女は黒に近いグレーです。今朝、不審な行動をとっていた人物には、見張りを付けるよう指示が出ています。なので、僕が貴女の見張りを担当します。しばしの間、仲良くしてくださいね?」


(……ぇぇぇええええええ!?)


 私は助けを求めるようにフローを見るが、『こっちを見ないでください! 不審がられます!!』と首を横に振られてしまった。


 ルイス君と、仲良くできるかなぁ?

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