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死んだ聖女は天使と遊ぶ ~犯人を捜したいのに、スローライフを強いられます!~  作者: 雪村灯里
最終章 死んだ聖女は天使と共に戦う

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第62話 隠し事

 ベルメールが来てから3日。屋敷の玄関のドアは応急処置で直し、あれから何も変化は無い。掃除をしながらベルメールに関する一連の行動を整理する。


 フローティアが死ぬ一か月前。ベルメールは魔界の扉からケルベロスとムーナを無理矢理引っ張り出した。ムーナいわく、ベルメールは『魔王がよかった』と。


「ベルメールは、魔王を魔界から引きずり出したかったけど、失敗したのか……」


 正確には引っ張り出せたが、魔王だと気づかなかっただろう。初期のムーナは可愛い獣の姿だし、言葉も話せなかったから。

 彼は魔王を引きずり出すために次の行動を取る……魔界の扉を開ける為には、強い魔力が必要だ。それに結界の杭も邪魔になるはず。


「だから、聖女を殺すことにしたのか。私があの日死ねば魔界の結界の張替は、新しい聖女が出現するまで出来なくなる。何なら私を殺して使役すれば扉も開けられて一石二鳥だ。それに、ベルメールが私の魔力た籠った魔法石を集めているのは理にかなう」


 彼の目的は魔王をこの世界に呼び出すこと。ただしその先の目的はまだ分からない……。

 聖女暗殺は、ベルメールが自分と利害が一致する人物を取り込んだのだろう。恐らくシアン大臣。彼は聖女の存在を疎ましく思っている。聖女を自分の駒として動かしたいタイプだ。でも彼が直接ベルメールを城に招き入れたとは考えにくい。

 マジェンダ大臣も、シアン大臣の尻尾を掴むのに手こずる頭のいい彼の事だ。自分の手を汚さずに事を進めるだろう。と言う事は彼以外にも協力者が……誰だろう。都合よく動いてくれる駒は。


 いやな胸騒ぎがした。


聖女わたしに近い人物が、彼の駒なのでは?)


 換気を終えて窓を閉めようとしたその時。黒い鳥が室内に飛び込んで来た。

 それは私の頬を掠め、鋭く痛みが走る。床に突き刺さるように止まったその鳥はッ黒い煙を上げると手紙に姿を変えた。


 黒い封筒に、赤い封蝋。こんな事をするのはベルメールしかいない。恐る恐る封筒を掴む。柔らかくて厚みが有り、紙以外のモノが入っている。慎重に封を開けると……


「――ひっ!」


 ちいさく悲鳴を上げてしまった。封筒中には赤黒いインクで書かれた便箋が一枚と黒い髪がひと房。そして後ろから不意に話しかけられる。

 

「『汚い手を使う』って、宣言してましたね?」


 フローが私の後ろに立っていた。いつもと変わらない表情と声色。私の傷ついた頬にそっと手を添えるが、彼女の感触は無い。


「手紙には何と?」


 フローに問われて私は慌てて手紙を読んだ。赤黒いインクは鉄臭く、色の濃淡にむらが有った。


「ひ、『人質を頂きました。返してほしくば、貴女メルティアーナと交換です。もちろん、他言無用。明日の夕方一人で魔界の門の前に来なさい』……人質って!」


「わかりませんか? メルが動かざるを得ない人物。見捨てられない人物です。同時に彼女はメルを売った人物でもあります。彼女は弱みを握られ過ぎました。一度弱みを握られると永久に強請ゆすられることを、理解できてなかったのでしょう。可哀そうな子。逆を言えば強請れる材料を持っているのは、彼女しかいなかったから適任なのでしょう」


 フローは真っ直ぐに私を見つめて淡々と語り出した。そんな彼女に恐怖を感じた。次第に彼女の様子は変わってゆく。目を細め薄ら笑いを浮かべた。その笑みは妖艶だけど、どこまでも冷たかった。


「せっかく逃がしてもらったのに、また捕まるなんて馬鹿な子。どこまでも足を引っ張りますね」


「やめて、フロー……どうしたの? 誰の事? ねぇ……私に何を隠しているの?」


 私の知らない彼女を見ているようで怖かった。後にも先にもこんな怖い笑みを浮かべる彼女はこの一回きりだった。

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