表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
死んだ聖女は天使と遊ぶ ~犯人を捜したいのに、スローライフを強いられます!~  作者: 雪村灯里
第二章 魔界de強制スローライフ

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

59/76

第56話 勇者様のお遣い

 目覚めた勇者にムーナを賭けた決闘を挑まれ、危うく一色触発だったが……


「えーっと……落ち着いた?」


 私達はリビングでお茶を飲んでいた。ただ、アーリィと彼らが連れていたドラゴンは庭で戯れていた。

 姿勢よくお茶を飲んだ勇者はカップを置き、ハキハキと答える。


「はい! 先程はとんだ失礼を!!」


 額に出来た新しい擦り傷が痛々しい勇者君。あの後、彼はルイスの顔を見て我に返り、事情を聴くと床に手をつき詫びたのだ。床に額を打ち付けんばかりの激しい謝罪。勿論もちろん、みんなで止めた。副団長の顔をしたルイスが勇者に尋ねる。


「ごほん。なぜこんな所に? 君たち一行は北西の森に討伐依頼が出ていたと思うのだが」

「はい! 実は極秘行動を命じられておりまして!」

「おい……」

「ちょっと……」

「助けて頂いたんだ! それにルイス様だ。信頼に足るお方だぞ!! それに……」


 そう言って彼は、離れた所に座っていたムーナに熱視線を送っていた。ムーナは彼とバチンと視線があうと一瞬肩がビクリと跳ねさせて、頬を染めて顔を逸らした。

 

「それで、極秘行動とは?」


 ルイスが話を続ける。


「はい! 先日、聖女様が結界を張った魔界の扉の前に『不要な杭が有るから回収してこい』と。しかし、扉に近づく事も出来ず、あんな状態に……」


「「「え?」」」


 私達三人は思わず声が漏れてしまった。正確にはフローの姿は彼らに見えていないので、私とルイスの声しか聞こえないのだケド……


 私達は目線を合わせて確認する。


「それを依頼した人物は誰だ?」

「すみません、俺達も名前は分からないんです。とある大臣の使いとされる……眼鏡を掛けた金髪のへらへらした若い男から命令されました」


 大臣の使い……眼鏡を掛けた金髪のへらへらした若い男。心当たりしかなかった。フローを殺したベルメール(屍術師)だ。しかもその杭、うちに有る。


「せっかく聖女様の加護を頂いたのに……! 俺達が未熟なばかりに!!」

「それだけではありません。この森の魔物、他の土地の魔物と違うんです。なんというか、狡猾で……」

「それに強いんです。他の土地より圧倒的に……」


(あー……予想はついていたけど、聖女様に聖女の力が無い事は王宮の外では伏せられてるのかな?)


 そんな疑問が顔に出てしまったようだ。私を見てルイスが静かに頷く。


(ですよね?)


 それに、この森に関しては私の所為だ。勇者ご一行は悪くない。私は顔を引きつらせながらルイスに話しかけた。


「杭って、あれの事ですかねー。ルイス様」

「……ああ、そうだな。昨日、魔物が加えてたやつかもしれないな」


 席を立ち、自室から結界杭を持って来て勇者達に見せた。杭を見せると彼等の表情は明るくなった。

 今の杭は魔法石が無ければ、ただの杭だ。たとえ渡しても聖女の力を持つ者しか制御できないし、使えても結界を張る事しかできない。勇者と魔術師が嬉々として反応する。


「これ! これです!!」

「ああ、でも……魔法石がない」


 ぎくぅ!!

『魔法石は先日、砕いてアクセサリーに仕立てました!』 なんて言えない。私は慌てて嘘を並べる。


「魔法石は取れてしまったようで……私達の手元に来たときにはもうありませんでした。しかし、この杭を何に使うんでしょうか? 壊れているのに」


「前聖女様の残した魔力を集めているらしいです。それを使って魔界の扉を壊すと」


「「「壊す!?」」」


 あの扉、壊せるの? 壊したらどうなるのだろう……魔物が来ない世界が到来するのか、逆に魔物達がこの世界に押し寄せるのか……どちらかと言えば壊すというより開けようとしているのでは……?

 私達が唖然としていると、勇者はしみじみ語る。


「なので俺達も彼に協力しようと。しかし魔法石が無いか……探すか……」

「や、やめた方がいいのでは!? 魔物だらけです! それにこの森から魔法石を探すなんて、砂漠で砂金を探すのと同じくらい困難ですよ!!」


 探されては困る。だって、無いんだもの!!

 ルイスも冷静に助け舟を出す。


「ああ、今回は偶然君たちを助けられたが、今後も出来るとは限らない。装備と人員をそろえてから臨んだ方がいいだろう」

「ルイス殿がそこまで言うのなら……」


 勇者達は納得してくれた。翌朝彼らは、壊れた杭を持ち再び冒険の旅に出発する。


「ムーナ殿、この旅が終ったら迎えに来ます」


 そう言って勇者は、ムーナに向かいウィンクをする。彼女は恥ずかしそうに私の後ろに隠れて、彼に向かいもごもごと伝える。


「う、うむ……遊んでやってもいいのじゃ……」

 

 両思いなのかな? でも勇者の言葉がフラグっぽいので、本当に気を付けて旅をしてほしい。

 ちなみに、私は真夜中に彼らの装備品と武器に聖女の加護を付与したので、往路よりは楽な旅路になるだろう。私達は三人と1匹の背中を見送る。彼らが見えなくなった頃、いつもと様子が違う人物がもう一人居た。


「アーリィ、どうしたの? ぽーっとして? 風邪? 熱でもある??」

「え? いや、俺にはメルがいるから……そんなんじゃない……」


 え? アーリィも恋の病?? 思わず聞いてしまった。


「あのテイマーさんが気になるの?」

「ちがっ……でも、小さくて可愛い……」


 ほほう。これは春の予感がする。まだまだ寒い日が続いているけど、いいものを見れた気がした。


 みんなで春を迎える事が出来ればいいのだが……

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ