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死んだ聖女は天使と遊ぶ ~犯人を捜したいのに、スローライフを強いられます!~  作者: 雪村灯里
第二章 魔界de強制スローライフ

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第50話 旧聖女は新聖女に遭遇する

 同時刻に到着していた聖女様の馬車の前に、私達は並んだ。馬車の中で待機していた人々を出迎える。


 馬車からは、女神寺院の責任者――クラウス様の後任に就いた新導師と、新聞で見た少女がおずおずと降りてきた。彼女はマジェンダ大臣にエスコートされ地上に降り立つ。


 聖女の白い装束に身を包んだのは可愛い少女だ。毛先がくるんと巻いた蜂蜜色の髪に緑の瞳。だが、表情は可愛い容姿とは不釣り合いの険しい顔をしていた。怒ってる??


 マジェンダ大臣が集まった皆の顔を見渡し口を開いた。


「今日はシアンの代わりに私が立ち会う。儀式の準備は進んでいるか?」

「魔術師団、予定通りでございます」

「女神寺院も滞りありません」

「騎士団も周囲の警備に当たっています。近くに魔物等も見当たらず、本日は幸運に恵まれているかと」


 各所の首長が報告した。その答えにマジェンダ大臣は無言で頷き、女神院の導師に告げる。


「導師様、予定通り儀式を執り行いたいと思います」

「ええ。マジェンダ殿、わかりました。……魔物が少ないのも聖女様のお陰かもしれませんね?」


 機嫌を取るかのように導師は聖女様に話しかける。


「当たり前です。私に恐れて魔物が近づかなかったのでしょう。さっさと準備して。私は早く儀式を終えて帰りたいの」


 …………ええー!?


 自信満々な発言だ。一瞬、自身の魔物避け効果を疑い、一人静かに慌てふためいてしまった。しかし周りの空気は違かった。皆、顔には出さないが落胆を隠している。この光景、見たことある! 前々聖女様の時も似たようなことが有った。


「ではみんな。準備を進めるように」

「「「はい」」」


 皆返事と共に、持ち場に帰って行った。私も魔術師団のココ団長に促されて準備を手伝う。ココ団長は移動しながら、ため息と胸の内にしまっておけなかった言葉を零した。


「はぁ。先週はすごくいい子だったのに……聖女様()って、()()()()()()癖が強いのかしら……――! ゴホン。ティア急ぎましょう。雲行きが怪しくなる前に」


 ええ!? 達!? いつも!?


 ◆


 儀式は静かに始まった。


 大きくそびえ立つ魔界の扉の前。私達は列を組んでたたずむ。


 扉の前に到着すると導師が言葉を唱え、彼の合図と共に新聖女様が古い結界杭を抜く……のだが、まだ微妙に発動している杭は彼女には抜けない。なので、杭を抜く振りをした。


「新しき時代を守る、新しい杭を」


 導師の言葉と同時に、ココ団長が私に目線で合図を送ったので、新しい結界杭を聖女様に渡した。


「魔界の扉よ。新しき時代も静かであれ」


 聖女はその言葉と同時に杭を力いっぱい地面に突きたてる。

 本来ならこの時点で新しい杭が発動して魔法石が輝くのだが……もちろん光らない。

 儀式の注意事項にも書いてあった。今回は形式的な儀式だと……。


「なぜ光らないのよ……」


 悔しそうに彼女は零した。近くにいた私がやっと聞き取れるような小さな声だった。彼女を不憫に思ったその時……


「光りなさいよ! この杭!!」


 そう叫んだ彼女はもう一度杭を抜き、何度もガンガンと地面に打ち付けた。その光景を見た一同は、時間が止まる。


(えええ??? ストップ! ストップ! そんなことしたら杭が壊れちゃう!!)


 聖女様がご乱心だ!!

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