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死んだ聖女は天使と遊ぶ ~犯人を捜したいのに、スローライフを強いられます!~  作者: 雪村灯里
第二章 魔界de強制スローライフ

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第49話 しわ寄せは各所から

 私は『新聖女が、魔界の扉を封印する儀式を近くで見るチャンスがある』と聞いてやって来たのに……『ただ立ってるだけでいい』って聞いたのに……。


「ティアさん、そう。その調子よ。魔術式書き込むの上手いわね? 」

「あ、ありがとうございます……」


 魔術師ティアとして王宮魔術師団に潜り込んだら、移動中の車内で結界杭を大量に作る羽目になるとは……マジェンダ大臣の事だ、私にこの仕事を手伝わせるのも織り込み済みだろう。恐ろしい!

 しかし、こんなに大量の杭を何に使うの? 業務上の機密で教えてくれないかな? ダメもとで隣りで休憩している魔術師に聞いてみた。


「あの、なぜこんなに沢山の結界杭を作るんですか?」


 お疲れ顔の女性魔術師は、意外にも理由を教えてくれた。


「最近、王宮が何者からか呪いやら攻撃を受けてるのよ……新しい聖女様は結界を強化することが出来ないから、その代り私達魔術師が造れる結界を重ねるの。聖女様の結界と違って持続時間は短いけど、無いよりはマシだからね……」


 ひえっ!? 結構怖い事になってません? でも何で馬車の中で……


「王宮の工房でつくらないんですか? こんな安定しない場所じゃ大変じゃ……」

「王宮内も一枚岩じゃないの。聖女様が遺した魔法石の一部が盗難に遭ったの」


 ええ!? 盗難!?


「だから大切なものは自分達で守らないと。この杭だって妨害されちゃ敵わないし。はぁ、ほんと誰が攻撃しかけてるのよ……まったく。調査も進まないし、このままじゃ消耗戦になっちゃう」


 魔術師は愚痴るように項垂れた。水面下で尻尾を掴ませない何者かとの戦いは続いているのだ。

 城ではそんなことが起ってたの!? ルイスは城の事を全然話さないから! ……でも、誰が敵か味方か分らないような状況で、私のような異分子が居ていいのだろうか?


「そんな大切な事、私にやらせていいんですか?」

「もちろん、完全に信じてはいないわ。少しでも怪しい動きしたら拘束するけどね……でもマジェンダ様が手伝いに寄こしたと言う事は、こちら側の人間だと思ってる。あんたも訳有りそうだし。うっ、下向いて作業してたから気持ち悪い……」

「あの、良かったらポーション飲んで休んでください。私、大丈夫なんで……」


 私は鞄の中からポーションを取り出して魔術師に差し出した。彼女はポーションを飲むと荷台の端で仮眠を取り始めた。


 何なの!? ブラック通り越して鉄火場だ!! こうなったら黙々と作るしかない。私は到着までの間必死に杭に魔術式を刻みまくった。でもやっぱり……


(きもちわるい……)


 到着し、荷物を運び終え休憩を取っている私は、ポーションを取り出し煽り飲んだ。身体にしみる……清涼感が堪らない。


 到着までにノルマの魔法具は造り終えた。後方で魔術師団の人達が話す声が聞こえる。


「はぁー!魔物に出会わなくて良かった」

「そう言えば。今回はまだ魔物を見てないわね?」


 魔物避け、しっかりと効果を発揮できて何よりです。


 さっき話した魔術師のお姉さんも『仮眠を取ったらすっきりした』とさっぱりした顔をしていた。私が調合して祈りのバフを掛けたポーションが効いたようだ。良かった良かった。

 安心したのも束の間、魔術師団に招集がかかり最終確認が始まった。ココ団長が配置図を指差しながら説明する。


「今の所予定通り、魔物の被害も無く全員到着したわ。儀式は正午ピッタリに開始されます。配置は事前打ち合わせ通り。式典班も必要な魔法具を持って配置について。ティアはこの杭を持って聖女様の後ろに従って歩いて。私が合図するから、合図の後この杭を聖女様に渡して頂戴ちょうだい


 一気に説明されたあと、見覚えの有る長い杭を渡された。

 細かな彫刻が施された杭。杭の頭には赤い輝きを秘めた魔法石が嵌められている。


(これは! 私が城で魔力を込めた杭!! 偽物にすり替えられなくて良かった)


 どうやら、屋敷で作った杭は出番がなさそうだ。私は安心して、杖の代わりに杭がおさまっている腰のホルダーをチラリとみる。


「前聖女様が遺されたものだから、大切に扱ってね」


 団長の言葉で皆しゅんとなる。魔術師団からも惜しまれる聖女になれていたんだと思うと、ほっとしたような申し訳ないような……。


 ああっ!もどかしい!!暗殺事件が無ければフローも死ななかったし、みんな忙しい思いをしなくて済んだ。せめて私に何かできないだろうか……


 黙って考え込んでいると、団長は手を打ってみんなを配置に向かわせた。


「さぁ、準備を進めて頂戴。魔物が少ないからって油断禁物よ! 式典班行くわよ!!」


 杭をギュッと握り締め、式典班の魔術師達と駆け出した。この後、新聖女を目にすることになる。どんな子なのか楽しみだ!!


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