第44話 お礼の気持ち
ルイスの言うとおり、通り沿いに魔法店は有った。
私はそこに駆け込む。賑やかにドアベルを鳴らし、息を切らして店内に入ったため店主に驚かれてしまった。
「いらっしゃい……お嬢さん、どうしたんだい? まさか、追われているのかい?」
「はぁ、はぁ……い、いえ……! 欲しいものが有りまして…………あの……護符って有りますか? 戦士や騎士の間で流行っている」
私が急いでいたのには理由がある。ルイスにお礼にプレゼントしたいのだ。彼が私にサプライズで洋服を買ってくれたので、ならばこちらもサプライズ返しをしたい! ルイスが話しているうちに買い物を済ませないと!!
戦士や騎士、冒険者の間では護符が人気なのだ。小さなブローチ状からピアス、ネックレスまで様々な形の装飾品に魔法石を仕込み、その魔法石に魔法の効果を持たせている。火から災いを受けにくくなったり、傷が癒え易くなったり。
「なんだ、びっくりした。あぁ、あれかい? あるよ? ほら、こっちにおいで」
私は手招きする店主の元に向かった。彼の前には立派な戸棚があり、目的の護符は綺麗に陳列していた。どれも細かい装飾が施されて可愛かった。
「うぅ……」
しかし、値段は可愛くない。
「棚のモノは、全て有名な魔法使いや寺院で効果を付けて貰っているんだ。効果を付ける前のモノなら安いんだけどね……知り合いの魔術師がいたらその方がお買い得だよ? ほら」
そういって見せてくれた未完成の護符は、デザインは同じでもお値段が格段に安かった。
私のお財布事情としてはこちらが嬉しい。つまりこれを買って更に知り合いの魔術師や寺院の司祭に効果を付与してもらうのか……。
知り合いの魔術師、魔術師……!!
「知り合いの術師……います!」
私!
すると店のドアベルがリンと鳴った。話を終えたルイスが店に到着してしまった。間に合わなかったか……
店主は店内に入ってきた彼と、動揺した私の顔を見てこっそりと私に問いかける。
「あのお兄さんにプレゼントかい? じゃあ、これとかいいんじゃないかい? 二つ買ってくれたら勉強するよ? ……今来たお兄さん、そこで待っててくれんか? 店の奥は通路が狭くて、すまんのう」
店主さんナイス!! 勧められたのは、レザーのバンクルに青い魔法石がシルバーの台座に嵌めこまれたものだ。
「え!!……いいんですか? 2つ買います! あとこれも……」
「たくさん買ってくれるね? 毎度。いま包むから、お兄さんの所で待ってなさい」
会計を済ませると、店主が品物を包んでくれた。私は店の中ほどで待っているルイスの元へ向かう。
「待たせてすまなかった。買い物はもういいのか?」
「うん、丁度終わった所!」
「懐かしいな、婆様とよく来たよ……」
「おや? 美形の青年が居ると思ったら、ドロシーさんの所のルイス君じゃないか」
「ええ、ご無沙汰してます」
「君も隅に置けないね。……お嬢さん、お待たせ。幸運を祈っているよ」
店主は意味ありげにウインクをしながら品物を渡した。
「ドロシーさんにもよろしく伝えておくれ」
私達は店主に見送られながら店を出る。
無事変えたのは良かったけど、どうやって渡そう? どうせなら早めに渡したい。
私は頷き、ルイスの腕を引き歩き出した。




