表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
死んだ聖女は天使と遊ぶ ~犯人を捜したいのに、スローライフを強いられます!~  作者: 雪村灯里
第一章 聖女暗殺

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

4/76

第3話 聖女と魔女の師弟関係

 城を抜け出した私は、気持ち良~く鼻歌を歌いながら夜間飛行を楽しんでいる。すると、遠くで淡く輝く光のヴェールが見えた。


 「結界の調子、今日も良さそうだな~♪」


 まぁ、結界を張っているのは、私なんですけどね? 聖女の力である『守り』と『はらい清め』を使ってます。


 護国ごこくの聖女の大きな役割は『祓い清め、祈り、守り』3つの力を用いて国を護る事。

 国境と主要な町、そして魔界の扉に結界を張って、この国によこしまなモノが入ってこない様に守っているのだ!


 この国の聖女は、女神様からの神託によって決められる。神託で示された特徴を持つ人物を探し当てると、私のように魔力が強く聖女の力(3つの力)が使える女性が見つかるのだ。不思議な話しだよね?


 結界で守る以外のお仕事は、国の催事や式典への参加と……これは聖女の個性にも依るけど、冒険者パーティーが拾ってきた呪いの品のを浄化したり、勇者(予定)に武器を強化して渡したり、ポーションなどの回復アイテムに付加効果を付けて作ったり、エトセトラ。多岐たきに渡る。


 聖女としての生活も、やりがいと充実感があって好きだけど……堅苦しく自由が少ない。


 なので、聖女ではないこの時間がとても楽しい。背中に羽でも生えたかのように体も心も軽い!  門限が無ければ、文字通りどこまでも飛んで行くのにな。


(なんて言ったら、フローティアに怒られちゃう)


 しかし、楽しい夜行飛行もあっという間に終わってしまった。町はずれの魔法店に到着する。


 その建物はつたに覆われて、軒下のきしたには色とりどりの光を灯すランプが吊り下げられている。不思議な空気を纏う店だ。


 魔法店とは、魔法に関わる本屋や道具、薬草や鉱物などを販売しているお店。


 この世界の人間は当たり前のように魔法を使うけど、得意不得意はどうしてもある。それを補うために魔法道具を利用するのだ!


 私は店の裏口に回り、軽くドアをノックする。


「おばぁ!こんばんわ。ティア(・・・)だよ~!!」


 私は聖女だとバレてはいけないので『ティア』と名乗っている。


 ノックして少しすると、扉がガチャリと開く。その隙間から、濃い紫色のローブを着た、可愛らしい老婆が顔を覗かせた。


「あら、いらっしゃい。そろそろ来る頃だと思ったわ。中に入る前に庭の月下美人を見ていらっしゃいな」

「うん! 見る見る!!」


 彼女の名前はドロシー。昔、王宮魔術師として働いていたらしい。現在は一線を退いて、町の魔法屋としてのんびり過ごしているそうだ。「ティアは孫みたいなものよ~」と、私を可愛がってくれる、優しい魔女だ。


 二人で庭に飾られている月下美人の元に向かう。鉢に植えられた、中肉の長い葉を持つ植物からは、白く大きな花が咲いている。それは星明りに照らされて、神秘的な美しさだった。


「わぁ……! これが月下美人の花? きれい……」

「そうでしょう!? 花言葉が有るのよ?『ただ一度会いたくて』っていう」


 月下美人は年に一度、夜に花開く。


「一夜限りしか咲かないから、その花言葉なの?」

「そうよ。ロマンティックよね? ティアもそう思える大切な人が現れるといいわね」


「う~ん、どうだろう? 私は魔法に夢中だからな~。恋とかそう言うの分からないや」


  聖女の塔に長く引きこもっているから、出会いも無い。今まで燃えるような恋も悲しい別れもしたことが無い。いまいちピンと来なかった。


「ねぇ、おばぁ! 召喚魔法陣を考えて来たんだけど見て欲しいの」

「あら? もう考えちゃったの? いいわよ、中にお入りなさい」


 彼女の作業部屋に通されると、私は机の上に持ってきたノートを広げた。


「この魔法陣どう思う? これなら前回、魔力のロスが出てた部分が改善されるし、もう少し実力がある召喚獣を呼べると思うんだよねぇ」


「ティアは熱心ね。私が現役なら王宮魔術師団に入れたかったわ」


 ――王宮魔術師団!


 そう言われて私は「そんなぁ~。へへへ」と乾いた笑いを絞り出す。しかし内心ではビクビクしている。もう王宮内にいるからなぁ。


 彼女は魔法陣を細かく見ながらチェックした。


「そうね、この魔法陣なら前回より精度が上がっているわ。でも、魔力の消費が多すぎるわね……」

「ん~。魔力消費。全然考えてなかった。そしたら……この部分を3つに分けて構成すれば、魔力を抑えられるかな?」


 ドロシーと話していると、学ぶことが多くて楽しい。魔力の消費量なんて、ほんと気にしていなかった!彼女は私の提案を聞き、魔術式を計算している。


「制御が難しいけど……かなり改善されるわ。今回は魔法陣を修正して本番は次回ね」


 次回!? フローの許可がすぐとれるか分らないから、何とか今回召喚したい!!確かにかなり書き換え作業大変だケド……集中すれば出来なくもない。いや、やる!! 私は孫っぽくゴネた。


「大丈夫! これ位なら一晩で……出来るよっ! 明日の夜明けに間に合わせるからさ~。ねぇ、おねがいっ」

「そうね~……万が一明け方までに修正が終ればね? 間違ってたり、ティアの体調が悪い時は次回にするわよ?」

「うん! 分かった!!」


 やった~! よし!修正頑張るぞ!! これが成功すれば、私も召喚獣を得る事に成る。 非常に楽しみだっ!! 私が召喚獣を使役したらみんな驚くだろう。また一つ強くなれるぞ!!


 ――などと、この時は浅はかに考えいた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ