表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
死んだ聖女は天使と遊ぶ ~犯人を捜したいのに、スローライフを強いられます!~  作者: 雪村灯里
第二章 魔界de強制スローライフ

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

37/76

第34話 上空は凍えるほど寒い!

「ぴゃ~!しゃむ~い!!」

「まぁ、そうですよね。この高度とスピードで北上するんですもの」


 私達は今、ドラゴンの姿に戻ったアーリィの背に乗って空を飛んでいる。


 ムーナの悲鳴の通り、目的地に近づくごとに空気は冷えていく。フローは寒さを感じない為、涼しい顔をしていた。彼女は寒さの概念を思い出しながら、私の隣に浮かんでいるのだろう。


 王都を過ぎると山が多くなり、遠くに見える山の頂は美しく雪化粧している。さすが速さを誇るアーリィ。頬を撫ぜる風は冷たく痛い。でも、鞄の中に居るムーナと背後に居るルイスのお陰で私は暖かかった。


「ムーナ、もうちょっとだから頑張ろうね?」


 私はローブで彼女が入ったカバンを包む様にして暖めた。

 

 ◆


「よく頑張った。皆、もうすぐだ」


 どれくらい飛んだだろう。ルイスの言葉通り、遠くに小さく街が見えてきた。だが街中では着陸できない。ドラゴンが現れたとパニックになる! なので、私達は少し離れた開けた土地に着陸した。


「みんな長時間お疲れ様。あれが北都サイレンだ」


 アーリィの背から降りて、ルイスが指さす方を見た。石と木で造られた建物が多く並ぶ街だ。その為街は、全体的に石の灰色が多い。でもその暗さを打ち消すように、明るい屋根の色がアクセントとなり、街は穏やかな空気を纏っていた。


「ここがサイレン。本では読んだことあったけど初めて来た」

「私も来るの初めてです。まさか死後に来れるとは思いませんでした。長く生きるものですね」


 私はフローのゴーストジョークに「ははは……」と困り顔で笑った。

 談笑をしていると背後で空気が大きく動いた。驚いて振り向くとルイスの胸にぶつかった。


「今、アーリィが着替えてるからもう少し街を見ていてくれ」


 そう言われて気付いた。あ! ドラゴンの状態って、人間でいう裸と同じなんだと。

 ゆっくりと視線を街へ戻し、フローと話しているとアーリィの声が聞こえてきた。


「あ~! 服、面倒どくせぇ。上はいいだろ? 着替え終わったぜ」


 3人して振り向くと上半身裸のアーリィがいた。彼からはほかほかと湯気が立っている。あれだけの距離を飛んだら暑くなるよね。


 暑そうな彼に、寒がりのムーナはぴょんと飛び乗った。


「あっち~!! こら毛玉! 暑いんだからくっつくな!!」

「やだ~!!  アーリィあったか~い♪」


「さすが予定通りだ。アーリィご苦労だったな」

「ふん! まぁな。なぁ、それより褒美は? 今日はいつもより長く飛んだんだからイイだろ?」


 息が荒いアーリィはルイスを押しのけずいっと私に近づく。大きな彼の手は私の腕を掴んで引き寄せた。その様子を見てルイスとフローがざわついた。


「こら! アーリィ!」

「そうですよ!!」

「うるせぇ! 腹が減ってるんだ!!」

「やっぱり、お腹空くよね? いいよ?」


「「「はぁ!?」」」


「あれだけの長距離飛んだらさすがに疲れるよね…… アーリィのおかげではやく着いたよ! これ食べてゆっくり休んで」


 私は鞄の中に仕舞っていた、ポーションと果樹園で取れたリンゴを渡した。もちろん! 聖女の祈りのバフ付きです!! どうでしょう!?


 私はドヤ顔でアーリィを見つめた。こんな事が有ろうと準備していたのだ。遠足に“おやつ”はつきものだと、何かの本で読んだ。


「ああ! もう!! 調子狂うぅぅぅぅ!!!」

「え? 要らなかった??」

「いるよ! ありがとなっ」


 アーリィはポーションを喉に流し込むと、リンゴをむしゃむしゃと食べ始めた。


 私はルイスとフローに向けて、Vサインを送るが……二人は飽きれた顔をしていた。その理由を、私は未だに理解できていない。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ