第31は天使話 聖女はドラゴンの番にな……
以前、私が聖女を務めていた時に大魔法を乱発してダークドラゴンを撃退した。そのドラゴンが人の姿で現れた。しかもかなりの空腹状態だ。
ピンチはチャンス! プライドの高いドラゴンに食べ物を与えてテイムしようとしたら。私は彼に捕まり……
「お前、旨いな?」
チャンスはピンチに変わった。
(あーーん!! 失敗!? 体力回復するの早くない? さっきまでコクヨウにタックルされてヘロヘロだったのに!!)
横抱きで抱えられながら、私はガックリと肩を落とした。
(いや、まって? 『旨い』ってどういう事?? 私食べられていませんが!? )
彼が食べた果物は、お屋敷の果樹園で収穫した何の変哲もない林檎。命の危機は感じないものの……彼の目に熱がこもる。
「コクヨウ! お行き!!」
「メ゛ッ゛」
「ふごっ!!!」
フローティアに命じられたコクヨウは、タックルをドラゴン君にかました。彼は前のめりに吹っ飛ぶ。
もちろん、私も投げ出られる訳で……受け身を取りコロコロと転がった。
ルイスが駆け寄り起してくれた。
「大丈夫か?」
「うん、大丈夫」
だけど、それを見たドラゴン君が、私達に向かって吼えた。
「俺の女に触るな!!」
「なぁーにが俺の女ですかぁぁぁ!!! 」
「「ひえっ」」
私とドラゴンは小さな悲鳴をあげる。フローの逆鱗に触れたようだ。ドラゴンだけに。
「それに、さっきお前って呼んでましたよね?? お前じゃありません。メルティアーナ様です!!」
ドラゴンに言葉の雷が落ちる。フローの迫力と眼力で、ドラゴンはタジタジしながら私の名前を復唱した。
「メ、メルティアーナ様……」
話しがややこしくなる前に、彼と契約してしまおう。私は彼のまえにしゃがみ尋ねる。
「メルでいいよ。君の名前も教えてくれる」
「アーリィだ」
「アーリィ、私と契約しよう」
「俺を倒した奴に屈するのは、まだ心の整理がつかない。だが、あんなもの喰わされたら……メルの気持ちは分かった。契約に応じる。俺の番として」
俺の番?
私達は彼が何を言っているか理解するまでに時間がかかった。
「「「番ぃぃぃぃ!?!?!?」」」
「ああ、テイマーは俺達と契約する時は極上の肉を準備する。そして、身に付けているものを相手に渡して契約締結だ。だが、種を越えて愛を誓う時は自身の魔力を込めた食べ物を食べさせるんだ」
彼は気恥ずかしそうにこちらを見ながら答えた。私はもう一度行動を回想する。待って? つまり……
「ええーっと、アーリィの話から推察するに、あの果物には私の魔力が籠ってて。私はアーリィに求婚したことになるのかな?」
「そうだ。メルの魔力は旨かった。今後もメルを喰いたい」
わあぉ……とんでもないことになってしまった。背後の空気がピリついている。振り返るのが怖い。
「アーリィ、ごめん! 私、知らないで渡しちゃったの。番の件、撤回できないかな?」
「はぁ!? 何だと? でも、知らないとはいえ食べちまったからな。こんなうまい奴手放したくない」
「吐かせます?」
フローが物騒な事言い出した!
「その、私……まだ結婚とか」
「そんな恥ずかしがるなよ、一気に食べるなんてもったいない! 大丈夫。八つ裂きにはしない。永く優しく食べるからよ……」
「メ、メルを……優しく食べるだと……?」
ルイスの声が低く震えている。私は困りながらアーリィを見上げる。
「アーリィの事をよく知らないし……他のテイマーと一緒で、まずは主従関係からじゃダメかな?」
「意外とウブで可愛いじゃないか。まぁ、メルがそこまで言うなら……まずは俺の主として主従関係でも……」
「「主従で!!」」
フローとルイスが食い気味にドラゴンに対して答えた。驚いて振り返ると、二人の顔は真顔だった。あの、契約者は私なんですけど! しかし、このチャンスを逃すわけには行かない。
「やった! じゃあ、主従契約で決定ね。はい、これ契約の証の物品ね」
私は流れるような動きで、身に付けていたバングルを外し彼の腕にはめた。これで契約は締結された……はず!
急に進んだ契約締結に困惑していた彼は、私達とバングルを交互に見ていた。
「まぁ、近くに居れば魔力を喰えるからイイか……わかった。我、主よ。よろしくな」
彼は本音を漏らしながら、私の右手の甲に口づけをした。果たしてその本音、私が聞いて良かったのか。
何はともあれ。無事ドラゴンの主人になりました!
朝から疲れたー……




