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死んだ聖女は天使と遊ぶ ~犯人を捜したいのに、スローライフを強いられます!~  作者: 雪村灯里
第二章 魔界de強制スローライフ

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第25話 魔法の練習

 この屋敷に移り住んで、一週間経った。


 埃だらけだった屋敷内は、すっかり綺麗になった。実質二人で良く頑張ったと思う。庭や畑はこれからだけど。コクヨウが地道に草を()んでいる。この生活に慣れ始めた私には、少しだけど時間の余裕が出来ていた。


 今日はルイスが王都へと出かけているので、私達は留守番だ。私は空いた時間見つけては、庭の端で魔法の練習をしていた。石の上に置かれた枝に、魔法で火をつける。隣でムーナが興味深げにそれを見ていた。


魔法が使えないと、この世界では不便だ。かまどに火をつけられないし、水も運べない。それに……


「メル、練習の調子はどうですか?」


「うん! 調子がいいんだよね。腕の大きな欠片が無くなって、魔力が流れやすくなったの。だけど……今度は強弱の調節が難しくて。油断すると想像より強火になっちゃう」


「まぁ。全てが(すす)になるのは困りますね」

「そうなんだよね……いざという時に、強火になったら余計危ないし」


 私はぼやきながら魔法の練習を続けた。これをひたすら繰り返した。この練習は子供の時に一度して以来で、大人に成ってからもするとは思ってもみなかった……


「気を付けてくださいね? うっかりの強火で、腕に結晶がふえない様に。あと根を詰め過ぎてはダメですよ? 私、本を読んでいますので何かあったら言ってください」


「うん! わかった。気を付けるよ」


 フローは家の中へと消えて行った。


「メル、魔法使えるようになりたいの~?」


「うん。なりたいよ~。私ここに来る前は、魔法が大得意だったんだよ?」


「メルの魔力はおいしぃ~! いいにおい~! わらわ、メルの魔力好き~!! また使える~!!」


 ムーナの言葉はちぐはぐだけど、この子なりに励ましてくれているのだろう。私は笑顔でお礼を言った。


 集中して練習を続けると、時間を忘れてしまう。


 視界の端で、何か動くのが見えた。コクヨウかなとも思ったけど、別方向からコクヨウの満足そうな鳴き声が聞こえてくる。


 その正体を捉えようと目を細めた。木の影に隠れて誰かがこちらを見ている。


「ムーナ、危ないからここに居てね?」


 私は置いてあった杖を持つと、ゆっくりと木の後ろに隠れる人物へと近づく。

誰だろう? こんな所に……お客さん? ためしに話しかけてみた。


「あの~……どちら様ですか?」

「―――!」


 私の声に驚いた人影は、こちらに向けて何か投げた。


「メル! まほう!! つかう~!!」


 ムーナからの注意と同時に、私も反射的に魔法を放っていた。癖とは怖いものである。つい数日までは不発だったけど、今の私は違う。


 力の調節が出来ない私は……飛んで来た物に、石つぶてを当てて跳ね返そうとした……つもりだった。だけど、そこそこ大きな岩を浮かせて投げていた。


「「あっ……」」


 これには、お互いに驚いてしまった。


 飛来物を打ち落した岩は、そのまま木陰の人物の元へと跳んでいく。


「ごめんなさい!! 逃げてください!!」


――どごーん!!


 派手な音を立てて、岩は地面にめり込むのであった。


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