表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
死んだ聖女は天使と遊ぶ ~犯人を捜したいのに、スローライフを強いられます!~  作者: 雪村灯里
第二章 魔界de強制スローライフ

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

22/76

第21話 ミルクティー色の魔物は戯れる

 暗い森の中、私は魔物に追われている。戦うために魔法を使おうとするけど、右腕が石のように重くて動かない。


魔法が強みだった私が、こんなに弱くなるなんて……魔物の触手が私の右腕を掴み、ぬるりとした感触に思わず背筋がゾクゾクとした。


「ひっ! いやーー!!!」


 ――と、ここで目が覚める。


 昨日の私は、疲労で気絶するように眠りに就いたのだ。夢も見ないくらい、深く眠れるなと思いきや……しっかり悪夢を見ていた。


「はっ!!!」


 夢で良かった……私は問題の右腕を見ようと、腕を上げようとした時だった。右腕が重くてあったかい。


 左手で右腕を触ろうとしたら……“もふっ”とした柔らかい毛並みを感じる。ギョッとしてブランケットを捲るとそこには……


「むぅ?」


 あのミルクティー色の魔物がいた。右腕に纏わりつき、腕をぺろぺろと舐めている。


「ひあぁぁぁぁぁぁっぁぁぁっぁぁ!!!」


 おもわず叫んでしまった。な、なんで君がこんな所に??

 魔物は私の叫びにも動じず腕を嘗めていた。だから、あんな夢を見たのね?


 私の叫びを聞いて、フローが壁をすり抜けて駆け付けた。


「――!! どうしました! メル!!!……まぁ」


 フローも魔物を姿を見て、「まぁ~た、アナタですか?」と呆れていた。その数秒後、扉が激しくノックされる。


 ――ドン!ドン!ドン!


「何が有りました!? 大丈夫ですか!? 入ります!  失礼します!!」


 ルイスも真っ青な顔して、私の部屋に飛び込んで来た。私と魔物をみて察したのか、

彼は慌てて魔物を私から引き離す。……が、しかし。尻尾でビシバシと抵抗される。


「こら! あばっれるな!」


「むぅ~! いや~! はなす~!!」


 魔物から、『むぅ』以外の言葉が聞こえたのだ。しかも人の言葉……三人は思わず魔物を注目する。


「君、喋れるの??」


「むぅ! はなす~! さわらない~」


 魔物は激しい抵抗の末、ルイスの手から逃れると私の元へと戻ってきた。

 右腕をしっかりホールドすると満足げな顔をした。ルイスは困惑しながらも私を心配する。


「メル大丈夫か? 怪我は……」


「うんないよ、大丈夫。驚かせてごめんね? 目が覚めたらこんな状態で……私も驚いちゃった」


右腕を上げて二人に見せた。この魔物は腕を動かしても動じない。


「すっかり懐かれてるじゃないですか。それに屋敷の中に入って来るなんて……壁か天井にでも、穴が空いているんですかねぇ?」


「ひみつ~♪」


 魔物はキャッキャと嬉しそうに話した。こんなに喋る子なのか……私は魔物に尋ねてみる。


「君、名前はなんて言うの?」


「むーな!!」


ムーナ!! かわいい。鳴き声は名前から由来してるの?? 個体名なのかな? 種別の名前なのかな? 思わず興味が湧いてしまった。


「まぁ! 魔物にも名前が有るんですね?」

「人間に似た、知能と社会性が有るのか? この魔物は一体どんな生態をしているんだ」


二人もブツブツと悩み始めた。それはそうだね。私はムーナに自己紹介をする。


「私はメルって言うんだ。彼女はフローで彼はルイス」

「める~・ふろ~・るいす~!!」


「すごい! 言えた!!」


「むーな、まのもの! める、ちゅき~! むーな、ここにいる~!」


 『ちゅき~』嬉しそうに甘えてきた。


 はわわ……可愛い!! こんなかわいい子に甘えられたら、なんでも許してしまいそうだ。そう言ってムーナは私の右腕を嘗め始めた。


「二人とも、ムーナもこの屋敷においてもいい? こんなに懐かれると、情が湧いちゃうよ……魔物の生体にも興味があるし、魔境で生活する上のヒントが見つかる気がするの」


「なぁ~に言っているんですか。可愛くても魔物ですよ?」

「そうです! 僕も反対です。引っかかれたり、咬まれたりして、病気になったりでもしたら……」


だよね? 私の認識が甘かったよ……この子聖女の力で清めたら、消えちゃうかもだし……やっぱり森に返した方がいいかな?


「むーな、にんげんたべな~い! おみずのんだからきれ~い!」


そう言うと、ムーナはぴょ~んと跳んで机に飛び乗った。そこに置いてあった虫眼鏡のような魔法道具を咥えて、もう一度こちらに戻って来る。


「この魔法道具って……毒見眼鏡だ! ドロシーから聞いたことある。魔力を少し流して、このレンズを通して対象を見ると、人間に有害な毒を持っているか分るんだよね?」


「ああ。僕も祖母から借りて使った事があるな」


毒消しが高級で普及していなかった頃は、この道具を使って毒などの有害なものを見分けていたらしい。


幸いにも毒見眼鏡は私のか細い魔力にも反応してくれた。柄に嵌めこまれた魔法石が淡く緑色に光る。私は毒見眼鏡でムーナを覗き見た。


毒や病原菌が居ると、黒く靄がかかるはずだけど……視界良好。靄一つなかった。


「何も悪いものは持って無いみたい」


 ルイスも毒見眼鏡で確認してもらった。勿論結果は同じ。

フローとルイスは、どうしたものかと顔を見合わせた後、同時にため息を吐いた。


「まぁ、追い払っても、戻って来そうですからね? 仕方ありません」


「ああ、そうだな。ただし、メルを怪我させることが有れば、すぐにこの魔物は追い出す。いいね?」


「やったー! ふたりとも、ありがとう! 良かったね? ムーナ!」

「わ~い! いっしょ~!」


 ムーナは、嬉しそうに私の右腕にしがみ付いて頬ずりする。


「ムーナ、くすぐったいよ……それに私の腕、結晶が尖っているから危ないよ? 怪我しちゃう」


「もんだいな~い!」


 ――ぱりん!


「「「え゛っ!?」」」


 ぼりぼりぼりぼり……


 腕から生えていた結晶の一つを……飴でも噛み砕く様に食べた! 食べたぁ!?

 突然の出来事に、三人とも目が点だ。


 妙な空気が流れたのだけ、よく覚えている。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ