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死んだ聖女は天使と遊ぶ ~犯人を捜したいのに、スローライフを強いられます!~  作者: 雪村灯里
第一章 聖女暗殺

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第9話 侍女たちは何かに怯える

 大臣達から『大広間に全員集合!!』――と、指令が出たと言わた。私は急いで着替えて、廊下に出る。すると私の監視役・ルイス君と目が合った。


 彼は私の姿を見て少し驚いた後、すぐに目を逸らし冷たい表情になった。


(なっ、何か悪い事したかな?? 服装どこか変だった??)


 私は慌ててヘッドドレスの位置を確認する。

 幽霊ゴースト(仮)のフローも部屋から出てきたので、私は扉を閉めてルイスに声を掛けた。


「お待たせして、申し訳ございませんでした……」


 彼はコホンと小さく咳払いをした後、笑顔に戻った。……良かった、さっきのは見間違いか。危うく怒られるのかと思った。


「いえ、こちらこそかして申し訳ございません。では、大広間へ向かいましょう」




 私達は廊下を歩いていると、後ろから声を掛けられた。


「フロー!! 大丈夫!?」


 聖女担当の侍女達が2人、駆け寄ってきた。……フローの同僚で私の侍女だ!!


 話し好きのリズと、おっとりして優しいアリサ。これは、バレないように気を引き締めないと。私は息を整え、気持ちを落ち着け念じる。


(私はフロー……。冷静沈着……)


「ええ、もう大丈夫。心配かけて、ごめんなさい」


「良くなって安心したわ! フローが倒れた時はもうびっくりしちゃった。でも、どうしよう!  聖女様があんなことに……。この国はどうなっちゃうのかな??」


 リズはクルクルと表情を変えながら嘆く。良かった、今の段階で私が偽フローである事は彼女にバレていない。しめしめ。


 片や相方のアリサは顔色が悪かった。リズほど口数は多くないが、普段なら穏やかに相打ちをして、会話に参加するタイプの子だ。


「アリサ、顔色悪いけど大丈夫? 体調良くないの?」


 私は思い切って尋ねてみた。


「えっ……。だ、大丈夫。聖女様が亡くなって、怖いなって……」


「そうなのよ! アリサったら、事件が有ってからずっとこんな感じで震えてて……。でも、本当に怖いよね? ドラゴンを撃退するような方が、殺されるなんて……」


 アリサは不安からか、制服の左袖を右手でギュッと握った。

 よく見ると目の下にはクマが有り、顔色が悪い。昨日よく眠れなかったのかな??   


「フローはどこ行ってたのよ! 許可も出さずに朝帰りなんて。彼氏?」

「彼氏だなんて!!」


 思わず声を荒げてしまった。前を歩いていたルイスが、冷ややかな目で私を見る。

 更には隣りを静かに歩いていたフローもムッとして私の顔を覗いてきた。


(イメージが崩れるって言うんでしょ!? 分かってるって!)


「……違いますよ。黙っていたのですが、実は魔法を習っていて……。昨日はそれで出かけていました」


 私の答えを聞いたリズは、露骨に残念そうな顔をした。


「なんだ、彼氏じゃなかったのかぁ……。聖女様殺しの犯人、噂だとクラウス導師様が怪しいんじゃないかって。聖女様とは仲が良かったじゃない? 油断させて――って。それに、第一発見者は導師様とシスターって話よ?」


 クラウス導師は、女神寺院の中で一番偉い人だ。長いプラチナブロンドの髪を結った50代のイケオジで、優しく人気がある。


 リズが言う通り、(聖女)と彼は気軽に話す仲だ。彼が女神から神託を受けて、私が選ばれた。


 その為、何かと気にかけてくれるのだ。父親と娘というのかな? そんな関係。


 よく大臣に怒られる私を『よく言って、聞かせます』と庇ってくれる人でもある。彼が居なければ、2・3時間と続く大臣の説教から抜け出せない。


 大聖堂の鍵は彼が管理しているけど……。私を殺す理由が見えない。



 私は小さく咳払いをして、リズを諭した。


「リズ、不確かな情報をそれらしく話してはダメよ? 内部の人間の犯行とは決まっていないのだから」

「ゴメン! そうよね? クラウス導師様がそんなことする訳無いわよね? やるとしたら反聖女派の人間よね? 確かに、外から誰か入り込んでいたら怖いわ~!!」


 彼女はまた一人でキャーキャー言いながら怖がるが……、私は眉をしかめた。


「反聖女派?」


 思わずぽつりとつぶやいてしまった。

 その言葉を聞くと、アリサはビクリと肩を震わせる。


(ねぇ、待ってぇ? 反聖女派って何??)


 私の視線は、隣を歩くフローに向けて瞬時に泳いでゆく。彼女はこっそりと私に耳打ちした。私以外に見えないなら声も聞こえないだろう。


「近年、聖女の存在を疑問視する派閥が出来たんです。その中心人物は3大臣の内の1人、シアン大臣です」


 ……シアン大臣。


「君たちィィィ!遅いぞ!!!」


 大広間に足を踏み入れると、盛大に怒鳴られた。その声で室内がしんと静まり返る。その声の主は、鋭い目で私達を見ていた。 私達三人は素早く室内に入り、後方に並ぶ。


(私達の後ろにも、まだまだ入室しようとしてる人は居るのに……なぜ聖女担当の侍女達だけ怒鳴るの?)


 私はムッとした表情で怒鳴った人物を見る。

 彼こそが、何かと(聖女)を目の仇にする男。シアン大臣だ。

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