プロローグ
かつて、この世界には絶対の神が存在した。
神は大地に恵みを与え、空に光をもたらし、
人々に「役割」という祝福を与えた。
選ばれた者たち――
英雄、聖女、賢者、王たち。
彼らは神の代行者として、世界を導く存在とされた。
選ばれし者には、強さと知恵と美しさが与えられた。
彼らに従うこと、それが「正義」であり、「救い」だと、誰もが信じて疑わなかった。
だが。
いつしか神は沈黙し、
役割だけが空しく残った。
誰が選び、誰が裁くのか。
その理は、曖昧なまま、絶対のものとされた。
選ばれた者たちは力を誇り、
選ばれなかった者たちは、ただ沈黙を強いられた。
「選別」という名の儀式。
生まれつき救う資格のない者は、見捨てられる。
それが、この世界の在り方だった。
希望を託された少年レオ=ヴァレンティアは、
そんな歪んだ世界の中で、
それでも真っ直ぐに生きようとした。
誰よりも信じ、誰よりも信じられる存在であろうと、歩み続けた。
――けれど、世界は彼に背を向けた。
裏切り。
絶望。
そして、再会。
物語はここから始まる。
少年が、たったひとりの少女に出会い、
この世界すべてを敵に回す覚悟を決める、
そんな物語だ。