市
~冒険者ギルド~
"ギイッ……"
扉を きしませ、フルフェイスの兜をかぶった背高ノッポな男と、背が低い痩せっぽっちの少女が入ってくる。
どちらも髪がボサボサで目が隠れ、着ているもの身に付けてるものも、くたびれ感 満載だ。
(……みだしなみ が ねぇ。まぁ、人が少ない時間帯に来るだけ、マシだけど……)
受付嬢──もとい、ギルマスとしては、一般人──特に依頼者──に敬遠されないよう、最低限 身繕いして欲しいところだ。
とは言え、万年 最低ランクで、受ける依頼は安価な薬草 採取ばかり……。モンスター討伐やダンジョン探索、護衛などの危険な依頼は一切 受けない となれば、貧乏で櫛も買えまい。
「……薬草の納品ですね?」
"コクリ……"
男が うなずき、薬草 籠を背中から下ろすや、少女が中身をカウンターに のせてくる。
男は口をきかず、書類のサインや会話など、最低限の やり取りは少女の担当だ。
「……はい、確かに。
では、こちらにサインを──」
"カリ カリ カリ……"
「──こちらが報酬になります。ご苦労様でした。」
"ペコ……"
少女が おじぎをすると、男は無言で空になった薬草 籠を背負い、二人で出ていく。
受付嬢は、それを見やりながら、手元の報告書に目を落とす──
(さすがに、あの二人じゃないわよねぇ……)
どちらも中肉中背ではない。
回復魔法は 無論、上級バフなど 使えそうに ない。