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一緒にいてもいい?


「よし!アンジュ、何する?」


 先日ルカルナと行ったゲームセンター。その入り口で、カヤが僕の希望を聞いてくる。

 正直、この男はあまり得意ではない。何だか、雰囲気とか距離感が少しだけあの人に似ている気がするから。それに、ルイも…


「クレーン…ゲーム」


 それでも無視をするのはよくないと、カヤの問いに端的に答える。

 そもそもゲームセンターに行きたいと言ったのも、直近でのルイとのお出かけの思い出だからだ。ルイに取ってもらったあれも、とても大事にしている。


「いいね、行こう!」


「ちょっ…」


 そんな僕にお構いなしに、カヤは僕の手を取ってゲームセンターの中へ入っていった。


「どれやる?クレーンゲーム得意なん?」


 カヤの、相手の反応が悪くてもめげずに話しかけてくるところは尊敬する。それに、彼自体が嫌いなわけではない。嫌いと言えるにはまだ、彼のことを何も知らないし。ただ勝手に僕が嫌悪感を抱いているだけ。


「やったことない。ルイが…とってくれたから」


「ほぇ、ルイいつの間にクレーンゲーム得意になったんか?」


「俺ができないこと、お前も良く知ってるくせに」


 カヤとルイのやりとりを聞いていると、自分だけが遠くにいるみたいな気持ちになる。とにかく、何かモヤモヤするのだ。

 それに、カヤと話すルイは見たことない表情ばかりだし、話し方も砕けているように見える。僕にはいつも優しいけれど、カヤに対しては素を出しているような、気を許しているような感じがして、親友と言っていたのはこういうことなのだろうかと、少し悲しくなった。


「アンジュ?」


 ルイが僕の顔を覗き込んでくる。顔を上げると、ルイが心配そうな顔で僕を見ていた。嬉しいのに、複雑な気持ちが僕を襲う。ルイは何も悪くないのに。


「あ、えっと……」


「じゃあアンジュ、俺と勝負するか!」


 カヤが唐突にそんなことを言い出した。ルイも僕もぽかんとする。


「それとも、アンジュもこういうの苦手かな?」


 そう言って、こちらを見たカヤの顔がにやついていて、バカにされた感じがした僕は、その挑発にまんまと乗せられてしまった。


「僕にできないことなんてないし!」


「そうかそうか。じゃあ三十分後にゲームセンターの外集合な、俺は一人で行動するから!」


 言いたいことだけ言ってカヤはさっさと奥へ行ってしまった。


「ほんと、マイペースだな…」


 ルイが隣で呆れた声を出す。でもその口角は上がっていて、再び僕の胸がモヤモヤする。


「アンジュ、無理に勝負しなくていいからね。お金もそんなに持ってないでしょ?」


 確かに、人間界に来るときに支給されたお金は思っていたより少なくて、手持ちはあんまりないけれど。ルイが心配してくれているのも分かるけれど、カヤに馬鹿にされたままなのも、何だか癪で。でも、どうせクレーンゲームをするなら…


「…とりあえず見て回ってみる。欲しいのあったら取るし」


「そっか。一緒にいてもいい?」


 ルイの言葉に頷く。カヤの所ではなく、自分の所にいてくれるのが嬉しい、そう思うのは僕の性格が悪いからだろうか。



 とりあえず端から順にクレーンゲームの中身を見ていく。大きいぬいぐるみやお菓子など、様々な景品が箱の中に閉じ込められているようだなと、ぼんやり思った。

 そして、ある一つのクレーンゲームの前で僕は立ち止まった。中には動物のぬいぐるみ。何となく、自分に似ているような気がした。


「このぬいぐるみ、ちょっとアンジュに似てるね」


 立ち止まった僕の視線を追ったルイも同じことを思っていたようで、そう口にする。ルイの言葉に僕は、このぬいぐるみを取ることに決めた。

 ポケットに入れていた財布を取り出して、そこから目当ての小銭を探す。見つけたそれを、以前ルイがやっていた動きを思い出しながら入れる。チャリンという音とともに、クレーンゲームから、起動したような音楽が鳴る。


 ボタンに手を置くと、突然緊張してきた。ルイに見られているというだけなのに、何だか恥ずかしくて、あれだけ豪語しておいて全く取れる気がしなかった。


「アンジュ、時間決まってるから急がないと…」


「わっ…!」


 ぼーっとボタンを見つめていた僕の視界に、いきなりルイが映りこむからびっくりして、反射的にボタンを押してしまう。


「あ……」


 ボタンを押した後、すぐに手を離してしまったから、アームが変なところで止まってしまった。これでは次の移動でどれだけ頑張っても取れることはない。

 僕はもう一つのボタンも適当に押してアームを下ろすと、変な位置にいるにも関わらず、取れるかもしれない希望を含めた機械音が鳴り響いて、さらに恥ずかしかった。もちろんアームは何を掴むこともなく、空っぽのまま上がっていき、そのまま定位置に戻っていった。


「ご、ごめんアンジュ…」


 ルイは自分の責任とばかりに、とても落ち込み始めた。


「別に…」


 さっきのは自分のミスだ。次は時間も気にしながら集中しなければと、もう一度財布を取り出して小銭を探し出す。


「あ、俺が出すよ…」


「いいっ、自分でとるから…。ルイは他の所でも見てきたら?」


「………うん、ごめん」


 しばらくは取れないだろうから、ルイを退屈させてしまうと思い言った言葉だったが、ルイはさらに落ち込んだ様子で、他の所へ歩いて行ってしまった。


「あ……」


 突き放したかったわけでも、怒ったわけでもなかったのに、言葉とか表情は難しい。いっそ自分の思っていることが、そのまま相手に伝わればいいのに…


「よし…」


 反省するのは後でとして、今はこの目の前にあるぬいぐるみを取るのが先だ。これが取れればきっとルイも喜んでくれるはず。

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