うん、綺麗
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「アンジュ!」
「ルイ!」
君が俺を見つけた時にする笑顔、それが大好きだ。ずっと見ていたい。
あれから数年後、俺たちは同じように成長していった。
アンジュの背も高くなり、あの頃より肉付きも良くなった。それでも俺はまだ彼を見下ろしているし、まだまだ細すぎるくらいだが。腰とか、腕とか、細すぎて折れるんじゃないかと思うくらい。
数年前に時間を戻そう。
あの時、俺は彼に、アルノとアンジュが同一人物だということだけ伝えた。もちろん混乱していたけれど、思ったよりも受け入れてくれるのが早かった。どうやらカヤと話したらしい。
相談役に徹しすぎだろ、と少しおかしくなってしまった。すぐにまた家に招待しなければ。
それにアンジュは、少しだけ思い当たる節があったらしい。目いっぱい混乱した後、妙に納得していたのでそれも面白かった。
それも踏まえて彼に、「僕のことは、アンジュと呼んで欲しい」と言われたのだ。
そして現在、俺は大学に復帰して無事に卒業。今は普通に働いている。
アンジュも、再びスーパーで働きだした。アンジュとしての記憶は戻っていないが、俺がその話をすると、そこで働くと言って聞かなかった。
彼が少しずつ前を向こうとしているのが嬉しかった。
そうそう、少し前にとても驚くことが起こった。
カヤを招き、家で遊んでいた時のこと。みんなの前で、ルナがカヤに愛の告白をしたのだ。
俺とカヤは、もう驚きすぎて目を見開いていたが、アンジュとルカは知っているみたいだった。仲間外れの気分で、少し寂しかった。
カヤは戸惑い頬を赤らめていたが、今でも二人が付き合っている様子はない。ルナが積極的に話しかけているのはよく見るから、頑張っているのだろう。
兄として少し嫉妬するが、相手がカヤならまあ許容範囲内だ。
今日は久しぶりに、ミュエラとミュエルが家に来る。
アンジュには、早めに二人を紹介していた。気が合うみたいで、すぐに仲良くなっていた。
ミュエルはカヤに少し似ているし、相性がいいのだろう。
「やあ、来たよ~」
約束の時間より少し前に、ミュエラとミュエルがやって来た。
相変わらず、綺麗な顔。変わらない容姿。天使ってすごいな。
「いらっしゃい」
家に招く。
「おう、ミュエラミュエル。久しぶりだなぁ~」
「カヤ!来てたんだ!」
家の中にいたカヤが、二人に声をかける。ミュエルが嬉しそうにカヤに飛びついていく。
カヤに二人を紹介したのも、アンジュと同じ時期。
カヤは事情を知っているし、俺が紹介したかった。案の定、とても仲良くなっている。
「ミュエラさん、ミュエルさん、いらっしゃい」
「いらっしゃい~!」
「ルカ、ルナ」
妹たちが、ミュエラに抱きついている。これをミュエルにしていたら、俺は吹き飛ばしてしまうところだった。
ミュエラは姉のような存在なのだろう。ルカとルナは、彼女をとても慕っている。
この空間に、俺の大切なものが詰め込まれている。全員が集合するのは、これが初めてだった。
俺の隣には、一番愛おしい人。
「アンジュ」
彼はみんなが集まっている方に目をやって、口をぽかんと開けていた。
「アンジュ…?」
俺がそう尋ねると、彼がそろそろと俺を見る。少しだけ、顔が青ざめているように見えた。
気まずそうに口を開ける。
「…ねえルイ、僕って、もしかしてすっごい恥ずかしい勘違い、してた……?」
その言葉に、俺は今までに感じたことのないものが、胸に押し寄せてくるのが分かった。目頭が熱くなるのを、必死にこらえる。
「…アンジュ、遅いよ…」
俺はそう呟いて目を潤ませ、彼を抱きしめた。
「ごめん。……………なあ、ルイ。…僕はかっこいいだろう?」
アンジュが少し笑った後、俺の腕の中でそう言った。
唐突なその問い、俺じゃなかったら意味が分からないだろう。
でも、俺はその答えを知っている。だって、俺は君と出会ったあの日を鮮明に思い出せるから。
だから俺はアンジュの瞳をしっかりと見つめて、こう言った。
「うん、綺麗」
fin
本編は完結です。
来週はおまけを投稿しますので、読んでくださると嬉しいです!




