ルイなんか、大嫌いだ!!
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「俺は、今のアンジュが好きなんだよ。信じて」
ルイは、僕のためにここまで言ってくれた。
僕も、きちんと向き合わなければ。怖くても。
「…………僕も、僕もルイのこと」
(愛してるわ、アルノ)
言いかけた時、僕の頭の中にある声が流れてきた。
「っ!!」
思わず口を塞ぐ。全身が怯えたようにぶるぶると震えだす。
(本当にダメな子ね。出来損ないのアルノ)
(でも、私はあなたを愛しているわ。こんなにあなたを想っているのは私しかいないのよ。分かってくれているわよね?)
(もういいわ)
次々に流れてくる声。どれも聞き覚えがある。頭をおさえても、関係なく流れてくる。
これは…僕の、記憶だ。
アルノ、それが僕の名前。
「……アンジュ?」
「っ!……違う!」
「?」
「違う。僕は、アルノだ。アンジュじゃ…ない」
「!……アンジ」
「違うっ!……………嘘つき」
僕は全てを思い出した。それと同時に、裏切られたような気持ちになる。
目の前にいる彼は、僕に嘘をついていたんだ、ずっと。
「…え?」
僕の言葉にルイが悲しそうな顔をしたけれど、僕の怒りは収まらなかった。
まるで枷が外れたように、口から言葉が溢れてくる。
悲しい、苦しい、どうして……
「ルイの嘘つき、嘘つき!……僕が好きだって、今の僕が好きだって言ってたのに!やっぱり、僕のことなんて見てなかった!」
母だって、僕のことを置いていった。
好きだって、あんなに愛してるって言ってくれてたのに……本当はいらなかったんだ、僕のことなんて。
「ちが」
「優しくしないでよ!期待させないでよ!……僕のこと必要としてくれる人なんて、本当はいないんだ!どこにも!」
ルイだって、そう。本当に好きなのはアンジュって人。
なのに、僕に好きだって言って……
「……あ」
「嫌だ、嫌だ。置いていかないでよ、ごめんなさい、お母さん……」
「っ!」
想定していた中で、一番最悪の事態が起こった。
アンジュが、人間の頃の記憶だけを思い出した。それはつまり……
でも、どうすればいい?アンジュに本当のことを伝えて、信じてもらえる?
「……あ、アルノ…。ごめん」
俺は、泣きながら震える彼を抱きしめた。
「謝るってことは、そうなんだね」
(僕は本当に、いらない存在なんだ)
「違う…でも、ごめんアルノ。今はこれしか言えない」
「………もう、いいよ」
「えっ……」
「もういいよ!ルイなんか……ルイなんか、大嫌いだ!!」
ルイの身体を押し出し、そう言い放った。
「っ!」
ルイの傷ついた顔が視界に入った。胸がすごく痛いけれど、僕だってすごく傷ついたんだ。
「アンジュっ!!」
走り出した僕の背中に、ルイの叫び声が降りかかる。
ほら、やっぱり最後に口にするのは、その名前なんだね。




