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おかえり

35


 君が目を覚まさなくなって、一年が過ぎようとしている。

 君がいない日々は、景色は、灰色で。一日一日がとても長く感じる。


 できるようになったことが、一つだけあるんだ。

 魔力を、制限できるようになったんだよ。

 そう言ったら、彼は褒めてくれるだろうか。

 顔を見ることができるのに、君のことを感じることができない。

 寂しいんだ。君と、話がしたい。


 君の…笑顔が、見たいよ。








 **


「っ!」


 あの日、彼と手を繋いだまま意識が遠のいていった俺は、目を覚ましたら家にいた。正確には俺の部屋のベッドの上だ。

 ミュエラが連れてきてくれた時にいた場所だから、そこに戻ったのは当然のことなのかもしれない。


 すぐに隣を確認すると、無造作に放り出されたように、彼も目を閉じて眠っていた。手も、しっかり握ったままだ。

 良かった。彼が…ちゃんと俺の隣にいる。


 俺は心から安堵すると同時に、すぐに日付を確認した。

 天界にいってから大体一日。でも、突然姿を消した俺とアンジュを、きっと家族は探してくれている。一日だって、十分長い。


 俺は彼の寝顔を少しの間眺め、そっと頬を撫でた後、静かに腰と首に手を回し、彼を持ち上げた。

 いわゆるお姫様抱っこのような状態だ。


 そしてそのまま階段をゆっくりと降りていった。





 リビングに、家族全員がそろっていた。

 みな椅子に座って頭を抱え、すすり泣きする声も聞こえてきた。

 俺がゆっくりと扉に近づくと、母が足音に気づいて、こちらを見た。


「ル……イ?」


 母の声に、父、ルカ、ルナも驚いて顔を上げる。

 昨日は眠れなかったのだろう、顔がやつれていて、目元も赤く腫れあがっている。


「ただいま……」


 俺は小さな声でそう言った。


「おかえり」


 父はそう返し、ルカとルナは俺のそばに近寄ってきた。


「あ…アンジュさん、なの?」


 俺の腕の中で眠っていた彼を見たルカがそう言う。

 見た目は少し違くても、彼女たちが気づいてくれたことが嬉しかった。

 アンジュにも、教えてあげたい。


「うん。…心配かけて、ごめんなさい。俺の話を聞いてほしい」

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