おかえり
35
君が目を覚まさなくなって、一年が過ぎようとしている。
君がいない日々は、景色は、灰色で。一日一日がとても長く感じる。
できるようになったことが、一つだけあるんだ。
魔力を、制限できるようになったんだよ。
そう言ったら、彼は褒めてくれるだろうか。
顔を見ることができるのに、君のことを感じることができない。
寂しいんだ。君と、話がしたい。
君の…笑顔が、見たいよ。
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「っ!」
あの日、彼と手を繋いだまま意識が遠のいていった俺は、目を覚ましたら家にいた。正確には俺の部屋のベッドの上だ。
ミュエラが連れてきてくれた時にいた場所だから、そこに戻ったのは当然のことなのかもしれない。
すぐに隣を確認すると、無造作に放り出されたように、彼も目を閉じて眠っていた。手も、しっかり握ったままだ。
良かった。彼が…ちゃんと俺の隣にいる。
俺は心から安堵すると同時に、すぐに日付を確認した。
天界にいってから大体一日。でも、突然姿を消した俺とアンジュを、きっと家族は探してくれている。一日だって、十分長い。
俺は彼の寝顔を少しの間眺め、そっと頬を撫でた後、静かに腰と首に手を回し、彼を持ち上げた。
いわゆるお姫様抱っこのような状態だ。
そしてそのまま階段をゆっくりと降りていった。
リビングに、家族全員がそろっていた。
みな椅子に座って頭を抱え、すすり泣きする声も聞こえてきた。
俺がゆっくりと扉に近づくと、母が足音に気づいて、こちらを見た。
「ル……イ?」
母の声に、父、ルカ、ルナも驚いて顔を上げる。
昨日は眠れなかったのだろう、顔がやつれていて、目元も赤く腫れあがっている。
「ただいま……」
俺は小さな声でそう言った。
「おかえり」
父はそう返し、ルカとルナは俺のそばに近寄ってきた。
「あ…アンジュさん、なの?」
俺の腕の中で眠っていた彼を見たルカがそう言う。
見た目は少し違くても、彼女たちが気づいてくれたことが嬉しかった。
アンジュにも、教えてあげたい。
「うん。…心配かけて、ごめんなさい。俺の話を聞いてほしい」




