表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/12

ぼくは戦争を知らない③

「ぼく、先生のところへ行ってくるよ」

「そうか、じゃあ…先に帰るぞ」

「うん、ごめんね。ありがと」

放課後、岡野たちと別れてぼくはひとり社会科資料室に向かった。


廊下の一番奥のドアをノックする。

「はいよ、誰だ?」

中から先生の、のんびりした声が返ってきた。

「あの…羽咲です」

「鍵は開いてるぞ」


その言葉に、ドアを開けて中に入る。

「失礼します」

「どうかしたか?」

「えっと…すみませんでした。授業中に倒れてしまって」

「いや。やっぱり、内容が生々しかったか?」

ぼくは首を横に振った。


覚えているのは、原爆が投下された後の広島、そして長崎の街の光景だけ。

「ココア、飲めるか?」

「はい、大好きです」


しばらくして、先生はアイスココアを持ってきてくれた。

グラスをひとつ、ほくの前に置いて、もうひとつは自分の前に。

「いただきます」

甘いココアは気分を和らげてくれる。


「あの、先生…。予知夢って信じますか?」

「予知夢かぁ…。あったら羨ましい超能力だよな」

バカにするでもなく、先生はそう答えた。


「岡野から、ちらっと聞いたんだが、お前には予知能力があるらしいな。それも強力な夢見の」

「そんなんじゃないです」

ぼくは首を振る。


「たまたまってことも考えられますよね」

「いや、たまたまで古墳が出たらびっくりするだろう?今回も夢を見たらしいな。で、今回は?」

先生はぼくをみる。

「…戦争の夢を見たんです。ビデオで見た、原爆投下後の街の光景…。あれをぼくは見ていました。…ビデオじゃなくて、こう直接肌で感じた、というか。そこにいたというか…」


有り得ない話なのに、先生は笑いもせず、真剣にぼくの話を聞いてくれている。

「そうか」


ふと、目の前のグラスに入っているココアが揺れだした。

「あれ?眩暈?」

「ばか!地震だ、伏せろ‼」

がしゃーん!

机の上にあった地球儀が、床に落ちてバラバラになるのを、ぼくはスローモーションで見ていた…。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ