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ぼくは戦争を知らない⑩
-八月拾五日-
天気は快晴。
蝉の声がうるさい、うだるような夏の日だった。
大地は荒れ、疲れた人々がラジオに耳を傾けていた。
雑音の多いラジオから、聞こえてきた言葉。
『堪え難きを堪え、忍び難きを忍んで…』
なにをいいたいのかわからない放送は、日本が戦争に負けたことを伝えていた。
後にいう、昭和天皇の玉声放送。
堪えたのは国民だ。
忍んだのも国民だ。
天皇は苦しんでいない。
握りしめた拳を地面に叩きつける。
今回の戦争に意味があったのか、真実を問いたかった…。
怒りをぶつけるべき相手はいない。
ここにいるのは、疲れ、生きる意味を失った民間人だけだ。
唇を噛み締め、溢れた血が大地の上に滴り落ちても、怒りは収まらなかった。
(あの二人は無事だろうか…)
大空に散っていった部下や仲間に思いを馳せ、かの地においてきた兄弟を思った。
(どうか…無事で…)
それだけを考えて、長い年月を生きてきた…。
昭和弐十年、八月拾五日。
その日は、とても暑い日だった。




