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デリーさんのおかげで私とお母さんは朝昼晩と栄養満点なご飯を食べることができた。

腐りやすそうな調理済みのご飯から食べてるから、まだフルーツやパンなんかはそれなりに残ってる。

たった1日しっかりご飯を食べただけで、お母さんの顔色はだいぶ良くなったし、私の身体も軽い感じがする。


最近は話をする元気もなかったけど、気力と体力が少しアップして、昼間はお母さんと久しぶりにたくさんお話しもした。

その時に、なんとなく受け取ってしまったDESUノートの事も聞いてみたら、お母さんもよくわからないとの事だった。


私も初めて聞いたんだけど、お母さんの実家は男爵家より格上の子爵家なのだそうだ。

お母さんは子供の頃は幸せに暮らしていたそうなのだけど、13歳の時に両親が病気でほぼ同じ時期に亡くなって、その時にお母さんのお母さん、つまり私のおばあちゃんに当たる人にDESUノートを渡されたのだとか。


おばあちゃんも死ぬ間際で息も絶え絶えだったから詳しい説明を聞くことはできなくて、ただ「あなたを守ってくれるはず」とだけ言われて大事にしまっていたんだって。

両親が死んで傷心のお母さんに優しい言葉で取り入ったのがお母さんのおじさんに当たる人で、気がつくとお母さんの実家はおじさん一家に乗っ取られて、お母さんはお父さんに嫁がされたそうだ。


DESUノート、全然お母さんを守れてないじゃん。


私の中でDESUノートの信頼度は底辺に落ちたけど、前世のDEATHノートだって何の力もないのに私の支えになってたところがあるから、微妙な気分。

なにしろ物心ついた時から私はこの離れに閉じ込められていたせいで、この世界のことを何も知らない。

まずは知るところから始めないと、お母さんと逃げ出すこともできない。

なんせお母さんもかなりの世間知らずな雰囲気だもん。


本邸が寝静まったのを見計らって私はまたそっと屋敷を抜け出した。


昨日の反省を活かして、今日は足にボロ布を巻いて紐で括ってある。

靴下や靴がないから苦肉の策。

やっぱり裸足で歩くのはちょっと無理だもん。

道は砂利ではないけどアスファルト舗装もされてない土を固めたような道だし。

時々小石や馬糞が落ちてて、8歳の体の私にとっては難易度中位の道だ。

消毒液もないから傷とか作りたくないんだよね。


門を出て進んで、昨日デリーさんにあった場所をさらに超えると道が3つに分かれている。

真ん中と左の道には他の家らしい建物が見えて、右は暗くて何も見えない。

とりあえず帰りに迷う心配がないように、今日は真ん中の道をひたすら進むことにした。


道の向こう側にちらほら灯が見えるから、きっと人にも会えるはず。

暗い夜道に少し心細くなりながら私はひたすら前に向かって歩いて行った。


道は少しカーブを描くように左に曲がっていって、テンダーの屋敷が見えなくなる頃にようやく建物が近付いてきた。

服とか家とか道とかで近代日本的な感じではないだろうなと思ってはいたけど、想像以上に、なんて言うか不思議な世界だ。


テンダーの屋敷は小ちゃいお城みたいな建物で、私たちの住む離れは狭いって言っても1LDKくらいはある、プレハブ感のある小屋だ。

そして私やお母さんも含め、今まで会った人はみんな顔が濃い目で、金髪茶髪に青い目や緑の目。

だから、この世界は中世ヨーロッパ風味の世界かと思ってたんだけど、通りに並ぶ建物は平屋の瓦屋根で、ほんのり日本風味。


日本人ぽい人も暮らしていたりするのだろうか。

きょろきょろ見回しても人気がない。

明かりが漏れている窓を横目で覗いても家の中までは見えなかった。

いくつかの建物が集まっている一帯の向こうにも道は続いているけど、先は真っ暗だ。


ちょっと休憩してから、とりあえずこの辺をぐるっと回って今日は帰ろう。

私は道の端にひとつだけ置いてあった大きな石に腰をかけた。


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