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さて、これからどうしたらいいだろう。

私はDESUノートを前に頬杖をついて考えを巡らせた。

DESUノートはまっさらで前世で私が書き連ねていたあれやこれやは一切残っていない。

でもよくよく見てみると背表紙の下に小さく「美優☆」ってサインが入ってる。

間違いなくDEATHノートだと思うんだよなー。


呪具って何かはわかんないけど、なんか呪えそうな気がするからこれに書けばいいのかな。

先祖代々とか言われたけど、私からしたら前世で使ってた安い大学ノートだし有り難みなんかこれっぽっちも感じない。

とりあえずなんか書いてみようとしたけれど、残念ながらペンがない!

もちろんマジックなんて存在もしない。


あちこちの引き出しや棚を手当たり次第に見て回ったけど、出てくるのは埃とゴミだけだった。

そういうの見れば見るほどあのオッサンがムカつく。

そういえば派手なオバさんと生意気そうなガキンチョ連れてるのを見た事があるから、もしかしたら本邸でよろしくやってるのかもしれない。

私一人娘じゃないのかもしれないな。


ムカムカしながらまたDESUノートを開いた時に、ピンと閃いた。

呪いって言ったらこれでしょ!

私は徐に右手の人差し指の逆剥けをぴーっと引っ張った。

「いった〜い」

逆剥けはちょっと抉れてじわじわと血が滲んでくる。

左手で指を握り込んで血を絞るとぷっくりと指先に血の滴が集まった。

でもそんなにたくさんの血は出てないし、すぐ乾きそうだ。


慌ててノートに「ごはん くすり」と書いた。

「くすり」の「り」はほぼ掠れて点が二つみたいになったけど、まあいい。

血文字で「ごはん くすり」ってほんとに呪いっていうか恨み辛みっていうかいい感じに雰囲気出てる。

ちょっとおかしくなって、やっぱり私の気分は浮上した。


前世のDEATHノートも何の効果もないけど私の気持ちをアゲてくれたし、今世のDESUノートもそんな感じなのかな。


夜になり、私はテンダー家の屋敷を抜け出してご飯と薬を調達しに行くことにした。

ノートに書いたからって何も降ってくることはなかったし(ほんのちょっとは期待してたんだけどね)、自分で動かなくっちゃ仕方ないと思ったから。

薬は難しいかもしれないけど、食べ物はどうにかなるかもしれないし。

まずは外の世界を知らないとどうすることもできないもんね。


今まではこの離れに押し込まれて何もわからず過ごしてきたけど、前世の意識が戻った今となっては本当に情けない。キャサリンにもお母さんにも、しっかりしろよ〜と言ってやりたくなる。


私達の生活を振り返ると、まず朝に1人分の朝食が運ばれる。朝食っても多分本邸の食べ残しでほぼ残飯だ。

残飯なんてたくさん出るだろうに朝だけ、1人分だけしか持ってこないあたり、底意地の悪さを感じる。

それをお母さんと2人で分け合って食べる。

お母さんは多分ほとんどを私に食べさせていたと思う。量は少ないからあっという間に食べ終わる。

水だけは外の井戸から好きなだけ汲めるから、私達はいっつも水を飲んでいた。

そのあとはお腹がすくから、なるべく動かない。

ひたすらじっとしている。


お母さんが元気な頃は物語を話してくれたり歌を歌ってくれたりもしていた。

夜になると薄い毛布にくるまって2人で眠った。

あの頃は朝晩2回ご飯がもらえてたような気がする。昔すぎてはっきり覚えてないけど。


お母さんが病気になってからは移ったら困るからとあの部屋に閉じこもり、私がご飯やお水を運ぶようになった。あまり長い時間部屋にいることを許してもらえず、私は隣の部屋のベッドの上で三角座りをして窓の外をずっと見ていた。


いや、こっそり離れから出入りするのは出来たんだから、どうにかしろよ、まったく。

お母さんだって、他の人と会うこともないのにそんなひどい感染症に罹りようがないって。

ただの栄養失調から来る免疫低下のせいだから。

でもその栄養失調で死にそうなんだけどさ…


私はグルグル鳴り続けるお腹を誤魔化すようにさすりながらこっそりと門に向かった。

服はボロボロで靴はないし、私だって栄養失調だ。

そんなに遠くまで行くのは無理そうだからなるべく近くに料理屋とかあって、その裏くらいにゴミ箱が置いてありますように…

神様仏様よろしくお願いします。


もう残飯食べ慣れてるから多分ゴミ箱漁るのくらい余裕だもん。

むしろ素早く動く体力がないから盗みとかは無理。

気持ち的にもまだ犯罪には抵抗あるしね。

残飯漁るのは犯罪じゃないはず。ないよね?



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