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お母さんの話を聞いた後、私は何度も何度もお母さんにありがとうと大好きを伝えて、リリー様と自分の部屋に戻った。
井戸の水で足と手を洗って、外出用のボロ服から部屋用のボロ服に着替えていると、リリー様もなんか疲れた様子でヨタヨタとベッドに潜り込んでいる。
「もしかしてリリー様さっき宝石出して疲れてるの?」
ピンときて聞いてみると、リリー様は半分目を閉じて頷いた。
「そうよ。自分でもこんなに疲れるなんて思わなかった。」
「そっか。ゆっくり休んで早く元気になってね。
でもさ、宝石出せるんなら、デリー様にあげるより私にくれれば売ってお金にできるんじゃない?」
リリー様は無言で半目のままジロッとこっちを睨んでくる。
「いや、違う違う。そうじゃなくって。ごめん。
デリー様にも感謝してるからお礼をしてくれたのはすごく嬉しいし、リリー様に無理して私達のために宝石作り出せって言う気もないよ。
ただほんのちょっと、まあ、ずるいけど、そういうことも考えなくもなかったっていうか…
早くこの家出たくて、焦ってたかも。ごめん。」
なんとなく気まずくなってすぐに謝るとリリー様はふーっと息を吐いて花びらを震わせた。
「まあ、人間だもの。綺麗なことも汚いことも考えて当然よ。それが普通なんじゃない?
大事なのは考えたことの中で何を実行していくかだもの。
あなたがいい子なのはわかってるから大丈夫。」
リリー様は少し優しい声で静かに笑っている。
子供みたいなリリー様が今はすごくちゃんとした大人みたいだ。
「リリー様ありがとう…
なんか、考えるだけでもすごく自分が汚くてずるい人間でダメなんじゃないかって気持ちもずっとずっとあったんだけど…」
本当は、前世から思ってた。
こんなふうに人に怒ったり、クソとかコロスとか言っちゃう自分はすごく心の狭くて汚い人間なのかなって。
もしかしたらこんな事考えちゃうの自分だけで、私はものすごく悪い人間なんじゃないかなって。
すぐ近くに天使みたいな人がいたから、余計に自分の醜さが感じられて、DEATHノートを書くとスッキリするけどどっかで傷ついてもいて、でもどうしようもなくて。
いい人でいたいけど、湧き上がって来る気持ちは抑えられないし、見ないふりをしても消えてくれないし。
ウジウジしてても仕方ないから、自分で自分を励まして、そんなふうに生きてた。
うまく言葉にできなくて、でもリリー様の言葉でなんか少し心が軽くなった気がして、私はリリー様を握りしめた。
本当は抱きつきたい気持ちだったけど、リリー様のスタイル的に両腕に抱え込むことが難しかったから。
リリー様は半目のままグエッと小さく唸って葉っぱをパタパタしていた。
やっぱりリリー様も神様だったわ。
リリー様の少しカサカサした体?茎?を堪能してからまたベッドにおろすと、リリー様はテロンと伸びて枕に頭を乗せた。
「あの宝石は宝石じゃないから売れないわよ。」
「へ?どういうこと?」
「どう説明したらいいかしらね…
えーと、私はあなたに半分憑いてるような状態なのよ。
あなたを依代にしてたら完全に憑いてる事になるんだけど、そうじゃないから半分ね。
で、私は守り神だから眷属的な存在をいくつか持てるんだけど、その印があの石なのね。
あの石は私とあなたとデリーを繋ぐ縁をすごく強くする物って感じかしら。
だからアレは受け取ったら手放すことは出来ないのよ。」
「ちょっとすぐに理解するのは難しいんだけど…
なんかそれって良くなくない?
デリー様にお礼って渡してだけど、お礼どころか呪いじゃない?
ダメなやつじゃない?」
「私と縁ができたらデリーにだっていいことあるに決まってるじゃない。私、守り神なんだから!」
「そうかな〜。百歩譲ってそうだとしても、本人に話して決めてもらうべきだったと思うよ〜。」
「…それはそうかも知れなかったわね…。次に会った時に嫌がったら返してもらいましょ。」
「そんなことできるの?」
「できるわよ。」
よかった。
デリー様に迷惑をかけることは本意じゃないもんね。
まあ、もう既に結構迷惑はかけてるけど。
3日後デリー様に会えたら、まずその話をしなくっちゃ。
あとはまだ行ってない左の道に一度行ってみたい。
私にできることが何かあるかをさがして、これからの計画をしっかり立ててみよう。
私は1人じゃないから、きっと大丈夫だ。




