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リリー様が捕食を終えるとデリー様がテーブルの上に大きなバスケットを載せた。

私がリリー様にお菓子をあげている間に急いで用意してくれたっぽい。

ほんとデリー様は神。

なんなら守り神のリリー様より神感あるわ。

これからデリー神て呼ぼうかな。


「はい。これご飯。お母さんの調子はどう?」


「ありがとうございます。

ご飯をもらってからだいぶ調子はいいです。」


「なんか薬とかも持ってく?常備薬しかないけど…」


「ありがとうございます…でも今は大丈夫です。」


お母さんは少しずつ元気になっているし、咳をしてるわけでも熱を出しているわけでもない。

必要以上に頼るのは流石にデリー様が神様だとしても気が引ける。

この世界の物価とかわからないから、食べ物もだけど薬とかすごく高価だったらやりきれないし。


「あ、でも、お薬について教えて欲しいです。私、本当に何も知らないので。」


「薬について?とは?」


「どんなお薬があるのかとか、どのくらいの価値があるのかとか、どこで手に入れられるのか、とか?」


「なるほど。わかった。今から説明する?」


「いえ、今日はもう遅いので、デリー様が良ければまた今度お話を聞きたいのですが。」


「もちろんいいに決まってるよ。こんなに小さいのに色々考えて頑張ってるんだもんね。えらいね。」


デリー様は優しく笑いながら私の頭を撫でてくれる。

リリー様もなぜか葉っぱで私の頭を撫でてくる。

なんだかちょっとむず痒いけど、嬉しくてそわそわする感じ。

なかなかハードな環境だけど、こんなにいい人達もいるんだな。

世界は広いし、可能性は無限大だ。


「デリー様、マリオ君、今日も本当にありがとうございました。いつかお返し出来るように頑張ります!」


私は思いっきり頭を下げて、リリー様にもありがとう、と囁いた。


デリー様は「送って行くよ」と言ってバスケットを持ってくれて、マリオ君は「またな!」と玄関で手を振って見送ってくれた。

帰り道、デリー様はこの国の事を色々お話ししてくれた。


この国はアステラス王国という国で、トップに王様がいて、貴族がそれぞれの領地を治めているのだそうだ。

ここら一帯はテンダー家の領地で、王様のいる中心部からは少し離れているけれど、良質な宝石が取れる鉱山があって、それなりに豊かな領地なんだって。

あのクソ親父は、領主様なのか。


デリー様はここで宝石を入手して王都におろしたり、アクセサリーのデザインや制作もしているそうだ。

ジュエリーデザイナーってやつだね。

あのお家は店舗兼住宅で、雨戸に囲まれてたところを開くと店舗になっているんだって。

今はデリー様と弟のマリオ君の2人暮らしで、王都にご両親がいて、結構大きな商店をやっているそうだ。

マリオ君は超元気そうに見えるけど、ちょっと身体が弱くて、環境のいいところで療養も兼ねてってことで、親元を離れてこっちで暮らしているらしい。


この辺は治安は良い方だけど、やっぱり子供の独り歩きはあんまりさせたくないとも言っていた。

ただ、私の事情も事情だし、その辺はお母さんとおんなじような反応で、渋々許してやる的な雰囲気。

たった2回しか会ってないのにデリー様が若干父目線になってる気がする。


門の前までそんな話をしながら歩いて、私はバスケットを受け取った。


「次は迎えにきてあげるよ。3日後の夜9時でいいかな?」


「何から何まですみません…早く自分でなんとかできるようになるので…」


「子供が遠慮なんかしなくていいから。僕もちょっと考えておくからね。

この間から、気になってたから会えてよかったと思ってるんだ。前より元気そうで安心した。」


デリー様の笑顔は眩しくて、私の頭を撫でる手は暖かい。

私がまた深々と頭を下げると、リリー様が顔の花弁をプチっと一枚抜いてデリー様に差し出した。


「これはお礼よ。あなた、宝石屋さんなんでしょ?」


デリー様の掌に花弁がふわりと乗ると、黄色い花弁は透き通った雫型の小さな宝石に変わっていた。


「えっ!なにこれ!?」


デリー様が驚いて宝石を宙に翳すと、薄い黄色の宝石が月の光を受けてキラキラと光る。


「シトリン?」


私が呟くと、デリー様がますます目を見開いて私を見てきた。


「わかるの?」


「見た目はそんな感じかなって。リリー様の一部だから違うかも。」


「そうじゃなくて。僕もシトリンかなと思ったけどさ。

そうじゃなくて、なんでそんな宝石の名前知ってるのって事だよ。あんまり、その、世の中のこと知らないと思ってたから。」


「あ…確かに。色々事情があって知ってる事と知らない事の差が大きいかも。宝石は、結構詳しい、です。

事情はそのうちお話しします…」


私はこの世界の事はほとんど知らないけど、前世の知識は残ってるから。

ちなみに前世は質屋さんでバイトしてたから、なんとなく宝石系の見分けはつくんだよね。

もちろん鑑定なんてしてなくて、品物の整理とか店舗の清掃をしてたんだけど、キラキラした物が好きだから店主のおじさんに時間がある時によく話を聞いてたんだ。


私はデリー様にお礼を言って、デリー様はリリー様にお礼を言って、なんだか可笑しくなって笑いながらおやすみなさいを言った。

相変わらずバスケットは重くて、離れまでの道を引きずりながら、私はいろんなことを考えていた。


私の世界はとても狭くて、今まで会ったのはクソみたいな屋敷の人たちと、天使なお母さんとリリー様とデリー様兄弟だけだけど、いい人も悪い人もいるのはいつの世の中も一緒なんだろうな。

でも良い人に出会えた事に感謝。

DESUノートのおかげなのか守り神リリー様のおかげなのかわからないけど、うん、明日からも頑張れそう。





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