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「あのね、ご飯は僕が用意してあげるよ。でも小さい子が夜だけ働くのは難しいかな。昼なら無くはないけど。」
「昼に家を出るのは難しいので…」
「君はテンダー家の使用人の子供とかじゃないの?なんでそんな…」
デリー様は私の全身をさっと見回して言葉を詰まらせた。
ガリガリ、ボロボロ、足に布だもんね。
なんなら初対面は裸足だったし。
「私はテンダー家の娘です。お母さんはたぶん正妻です。お母さんにはそう聞いてます。
でも、よくわかんないけど、お母さんも私も酷い扱いを受けていて…
あの家を出たいから、そのためのお金を稼げたらなって。」
「そうかぁ…」
デリー様は、ガシガシと頭を掻いてから小さくため息をついて私の頭を撫でた。
「君は頑張ってるんだね。えらいよ。お母さんの自慢の娘だね。」
前世を思い出してから今まではこの環境や扱いに不満や怒りはあったけど、どうにかしないとって必死だった。
思い出す前は心が死んだみたいに感情が薄くて、ぼんやり生きてた。
なんかお母さんと話してる時と同じような、ほあんとしたあったかい気持ちが湧き上がってきて、どうしてなのか涙が出てくる。
ボロボロ泣き出した私にデリー様もリリー様も慌てた様子でオロオロしていてるけど、涙はなかなか止まらなかった。
デリー様にしばらく頭を撫でられながら宥められて私はようやく泣き止んで頭を上げた。
「ずびばせんでじた。ずびっ。」
「いいんだよ。とりあえずご飯をあげよっか。
すぐそこに僕の家があるから、一緒においで。」
私はデリー様に手を引かれて歩き出す。
街に入るとそれなりに人が動き回っていて、食堂なんかもちらほらみえる。
思ったよりも大きな街っぽい。
いざとなればここで残飯あさりもできそうだななんて考えていると、デリー様が「ここだよ」と言って立ち止まった。
そこは大きめの一軒家くらいの2階建ての建物で、ドアや窓は雨戸のような厚い板でしっかり覆われている。
デリー様は建物の裏手に進んでいって、裏口らしきドアの扉を軽く叩いた。
鍵の開く音がしてドアが開かれると中から光が漏れて、私と同じくらいの男の子が顔を出した。
「デー兄、おかえりー。早かったな!」
「ただいま。ちょっとお客さんを連れてきたんだ。」
「誰?」
「うーん、可愛い女の子?」
「女の子ぉ?」
男の子はデリーさんの後ろを覗き込んで私を見るとびっくりしたように目を見開いた。
「ほんとだ!可愛い!!」
「えっ。」
「あはは。そうだろ。キャサリンちゃん、どうぞ。」
デリー様に優しく背中を押されて家の中に入ると、家の中は明るく照らされていて、おしゃれな家具が素敵に配置されていた。
なんていうか、私の住む離れが田舎のおばあちゃんの家で、デリー様の家は都会のマンションみたいだ。
文明すら違うかんじがする。
なんだか汚い格好で部屋を汚すのが申し訳ない気がして、部屋の中へ進むのが躊躇われる。
「どうしたの?こっちにおいで。」
デリー様が私の手を引いてソファに座らせようとするので、私は踏ん張ってフルフル首を横に振った。
「私、汚いからソファ汚しちゃう。立ってる。」
「そんな事子供が気にしないの。汚れても洗えるから。」
デリー様と私がそんなやりとりをしていると、側でむずむずしていた男の子が待ちきれないとばかりに私の前に飛び出してきた。
「俺、マリオ!お前の名前は?」
「あ、私はキャサリン。」
「キャサリンな!よろしくな!肩のタンポポは何?」
「これは守り神のリリー様。」
「えっ!」
「えっ!」
「えっ?」
「ふふん!」
びっくりした様子のデリー様とマリオ君。
何にびっくりしたのかわからない私。
何故か得意げなリリー様。
私は目をパチクリして肩のリリー様と顔を見合わせた。




