プロローグ
「せーの!」
バシャッ!
掃除が終わった後の薄茶色のくっさい水をぶちまけられて私の胸から下は水浸しになった。
制服クリーニングに出さなくちゃ。
明日からジャージ登校か…
あ、ジャージ破かれてるな。
今日帰ったら縫わないと。
「あれー?水ぶっかけたのにこの汚れ落ちなくね?」
トイレ掃除用のモップでグイグイ押されて私は床に倒れ込んだ。
「ちょ!まじウケる。てか床やばいって。どーすんの?」
「こいつが拭くっしょ。」
「あ、今日から月見バーガーだよ!帰りマッケよってこーよ。」
「行く行く!お腹空いたー。」
4バカカルテットはギャーギャー騒ぎながら私の方を見もしないで去っていく。
私は立ち上がり雑巾で床を拭いてモップとバケツを掃除用具箱にしまった。
律儀にそんなことしてる自分がバカみたいだなとは思うけど、なんとなくそのまま帰るのは落ち着かない。
ほんとあいつらいつかコロス。
そもそも私達は5人グループだった。
クラス替え最初の席が近かったという理由でなんとなくつるんでいただけだけで、もともとすごく気が合うわけじゃなかった。
いや、どっちかっていうと全然合わない。
何が嫌かって、あいつらいっつも誰かしらの悪口を言ったりちょっとした嫌がらせをしたりしてる。
私だって別に聖人君子じゃないから人の悪口とか言っちゃうことはあるけど、あいつらはレベルが違う。
人をいじめてないと死んじゃう病気なんじゃないかと思うくらいだ。
なんとなく距離置いてFOしようとしたら今度は私の事をターゲットにした。
あいつらは1ヶ月くらいでターゲットを変えるし、殴るとか蹴るとかお金を奪うとかはしない子悪党だからまだ我慢してるけど、でもいつかコロス。
今日はデスノート書きまくってやる。
私は1人ほくそ笑んだ。
それにしても臭っさい。
家に帰ってシャワーを浴び、脱いだ制服をビニール袋に入れる。
あとでこっそりクリーニング屋に持ってかなきゃ。
親にいじめられてるってバレるのはなんかヤダ。
適当に転んだとか言い訳すればいいけど、この臭っさい制服を見たら流石になんか察しちゃうと思う。
私は元々メンタル強めだし、すごい痛い思いとかも今の所していないのでまだマシだ。
あと1ヶ月だけ耐えろ。がんばれ美優。
でも我慢ができたって実際ムカつくし、あいつらを許せるわけない。
まずはこの怒りを忘れる前にDEATHノートに書き込んでやる。
私は鍵付きの机の引き出しから大学ノートを取り出した。
大学ノートの表紙には黒いマジックで『DEATHノート』と書いてある。私の字で。
もちろんこれは普通のノートであの漫画のような素晴らしい力は持ってない。
ただ私のストレス解消用の日記みたいなもんだ。
もうすでに半分くらいは埋まったDEATHノートを開き、ペンを選ぶ。
今日は赤いマジックにした。
より恨みパワーがのせられる気がする。
<9月12日、ゆうこ、まなみ、えり、みさにトイレで掃除用に使った水をかけられて制服をクリーニングにだす。支出:780円
ゆうこ→机の角に足の小指をぶつける
まなみ→鼻毛が出てるのを好きな子に指摘される
えり→犬のうんこを踏む
みさ→腐った牛乳を間違って飲む
神様お願いDEATH!>
このノートのマイルールは日付と誰に何をされたかを書いて、それに対しての仕返し呪いをかく。最後は神様へのお祈りで締める。
DEATHノートって言っても○○で死ぬみたいのはまだ書いたことはない。
だってほんとに死んだら罪悪感感じそうだし。
ノートを閉じてからまた鍵付きの引き出しにしまい、少しスッキリした気分で私はクリーニング屋に向かった。