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お姉とわたし

作者: しろかえで

お姉に負けない良いものを書きたいけど、難しい!!(-_-;)

「お姉にはわかんないわよ!!」


 身重で実家に戻っている姉に、つい強い口調で当たってしまった。


姉に悪気が無いのは分かっている。怒号を浴びせるなんて胎教にだっていい筈はない。


現にしゃもじを持ったままの母がこちらに向かってノシノシ歩いて来る。


おおかた“悪者”の私に小言を言いたいのだろう。


いつもの事だ


 姉は父親似の黒目がちで優しい顔つきの美人で……昔から『蝶よ花よ』と育てられた。


 大学時代のバイトは専ら“キャンギャル”でその顔通りのスウィートボイスで行うマイクパフォーマンスも派遣先で大ウケだったらしい。

派遣先からスカウトの様に入社した会社で2年弱総務付きの受付業務を務めた後、得意先の御曹司に見初められて結婚退職、5年間もの『お姫様生活』を満喫した後、出産の為に実家へ戻って来た。

 前世でどれほどの“徳”を積んだのかは分からないが、舅姑からも“一人息子であるダンナ”より可愛がられているらしい。

二人からしょっちゅうスマホにラブコールが入って来る。


 『七難隠す』とは言わないが、姉も普通に腹黒い……いや、『世のステレオタイプ』にマッチすべく自らの行動をコントロールしているわけだから、その分だけ、より腹黒いのかもしれない。


 なぜこんなにしつこく姉をディスったのかと言うと元々は……母親譲りの自分の“鷲鼻”に私自身がため息をついたからだ。


「会社行きたくないなあ」って



それを耳にした身重の姉は“どこかのドラマ”みたいに私を背中からふんわりと抱いてこう言ったのだ。


「コロナ禍の中で就職して、最初の1年の大半をテレワークで頑張って来て……せっかく出勤できるようになったのに……そんなこと言っちゃダメよ」


姉は……悪くはないけど無神経なんだ!!


昨日、オフィスでの初めての顔合わせで……


「今までは一堂に揃うのはZ●●mの画面だけだったからな! せっかくだから自己紹介の時はマスクを外そう!」と言う課長の指示で……


嫌だったけど、マスクを外した途端、フロアーの気温が2度下がった気がした。


 一番ショックだったのは……この1年、画面越しに憧れていた営業企画課の宝生(ホウショウ)さんが、マスクを外した私を見た同僚のクスクス笑いに和した事だ。


 その瞬間、私は強烈なトラウマに襲われた。


あれは高校時代……

さして好きでもなかった同級生に告白されて付き合い始めた。


私だって“女”だし、情にほだされて……それなりの“シチュエーション”を期待するようになっていった。


でも()()()()前に相手から言われてしまったのだ!!


「このあいだ『鷲の捕食』の動画見たらヤバくてさ!お前に顔近付けたらオレも()られそうであり得ねえや」って!!


どうやらヤツが惹かれたのは当時、同級生の中では大きい方だった私の“胸”だったらしい。


 そんな事は思いもよらなかった私はとてもショックで……食事が喉を通らくなって激ヤセし、結果、男とも別れた。


 こんな事、家族には言えないし……細くなった食も戻らず、今では、棒ならぬ杭の様なカラダだ。


 こんなんだから大学時代も“男知らず”で……素敵な人は遠くから“鑑賞”するだけだった。


 高望みなんてしない!! ただ傷付かなければそれでいい。


 画面の中の宝生さんだけで良かったのに!!



見られたくなかった!!


そして見たくなかった!!!



こんな私には姉の人生は眩し過ぎる!!


赤の他人なら見ない振りもできるけど、

姉妹じゃ否が応でも目に入る。


だから姉にも!!


言われたくは無かったんだ!!



これは自虐がベッタリコートされた嫉妬だ!!



「お前は愚かだけど、心は“めしい”ではない! そうだろう?!」


鏡の中の……“私”に向かって私は呟く。


しょっぱい涙が流れ込んで……鏡に写る鷲鼻もプクン!と膨らむ



……お腹の“甥っ子”が可哀想だから……お姉に謝ろ!



 リビングへ戻るとお姉はソファーにゆったりと座って小さな小さな靴下を編んでいた。


“あざとさ”も突き詰めれば“人となり”になるのね……


 お姉は私の気配に気付いて顔を上げると微笑んで、隣のクッションをポンポンと叩いた。


クッションに座ると、お姉は私の腰に手を回して来た。


くやしいけど温かい。



「どうしたの?」


「うん……また鷲鼻で笑われた」


「そっか!オトコ?」


「うん!」


「そんな見る目の無いヤツは放っておきなよ!」


「違うよ!“見る目”があるから笑うんじゃん!」


「あら、あなたまで私の可愛い妹を……えっと!なんだっけ?!最近の言葉で……ほら!“デスク”じゃなくって!あれよ!ほら!」


「“ディスる”?」


「そう! 私の大切な妹をディスるなんてとんでもないわ!! ちょいとスマホ貸しなさい! クレーム入れるから!!」


「止めてよ!バカバカしい!」


「バカバカしいって思う? じゃあ、あなたもそんなオトコ達はバカバカしいって思いなさい!」


「ったく! これだからお姉には敵わない!」


「そう?! 私は『あなたには適わない!!』って思うけど」


「どこが?!」


「そうねえ~たくさん有り過ぎて悔しいから一つだけ教えてあげる! あなたはね!

背筋伸ばしてキチンと立つとめちゃめちゃ綺麗なの! うん! 女優の松雪泰子さんみたいに!!」


「それ、いくら何でも盛り過ぎだよ!」


「あなたが“盛らな過ぎ”なの! だからね、どうしても“鷲鼻”って気になってしまうなら、

あなたはまた怒っちゃうかもだけど……

あなた、“目チカラ”は十分あるから、アイラインはもう少し薄めに引いて 眉をふんわりメイクなさい。

そのメイク、“コロナ癖”が抜けてないんだと思う。

あなたの方がずっと長く外を出歩いているのだから周りをよ~く観察しなさい。女の子たちはどんどん変えてきてるわよ」


こう言ってウィンクするお姉は本当にあざとい!!


でもやっぱり

私は


お姉が大好きだ!!


まあね、いいんですよ!


お姉の『女で得する事と損する事』にまだまたお客様がいらしてますから


邪魔は致しません(:_;)




でも……ご感想、レビュー、ブクマ、ご評価、いいね いただけたらとても嬉しいです<m(__)m>



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― 新着の感想 ―
[良い点] 出来過ぎた兄弟姉妹への嫉妬、あるあるですねー (^_^;) 血の繋がりがあればこそ、こじれ方もやっかいだったり…… (。ŏ﹏ŏ)  まぁ、今回は、主人公もお姉さんも素直な性根で、、幸先…
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