3、プラネット・リベンジ
一度、焦点をユメたちに移そう。
「スパイダーアンカー」
上空を慣性で駆け上がるなか、ユメは自分の右腕をプラネットの駆動に邪魔にならないように巻き付け、命綱のように自身と繋げる。
「いた!」
スピードが徐々に落ちていく中、水族館のテラスにアリスがいるのを見つける。
「コール! 『スパイダーネット』」
迫る勢いの中、空中でプラネットの形状が人型に変わる。
そこに、襲来するのは、流線形の飛行物『流星』。
このままでは正面衝突は避けられない。到達する前に撃ち落される。
「弾いて!」
プラネットは右の拳を振り降ろし、流星の軌道を反らす。反動でプラネットはより上昇する。
「左手薬指舐めないでよね!」
不意さえ突かれなければ、造作もない。ただ衝撃を受けたのかプラネットの右腕の動きが悪い。
「投げて!」
最高速を超え、減速するしかないプラネットにそう伝え、ユメはプラネットの左腕に掴まれ、水族館の真上まで投げられる。
右腕のワイヤーが急速に吐き出され、最大限25mまで伸び切ったところでユメの身体もプラネットに引っ張られそうになる。
「プラネット! 加速装置03番、パージ!」
後ろに引っ張られる直前にそう叫ぶ。
すると、射出に利用した物とは別に用意された加速装置がプラネットから分離される。それはユメがワイヤーを巻き付けたパーツだった。
「姿勢制御装置安定、衝撃急襲装置、正常動作確認、NOS加速装置……着火!」
パーツは60㎏程の外付けの筒状の鉄柱、それが青い炎を吹き出し上昇する。
その鉄柱はプラネットの強化のものではない。なぜなら、その先端は杭のように鋭利で、明確に《《破壊》》を目的としているからだ。
移動速度が0になりゆっくりと落下するユメを中心に加速装置はコンパスのように、太陽の重力に引かれ公転運動する惑星のように、地面と垂直な弧を描く。
「目標補足!」
ユメの瞳が、狙撃銃を構えるアリスの姿を捉える。
「最大加速游星探査軌道……!」
その鉄拳が、鉄槌が、十分な加速を伴い炸裂する。
床が割れ、階下の天井が崩れ落ちる。その反動はユメが着地する衝撃を打ち消し、決戦の地へと踏み込む一歩を手助けする。
「技名叫んで必殺技って……お前」
その嫌に耳に残っている声は、上空から。
「だっさ、漢字にルビ振ってるつもり?」
見上げるとそこには流星に右腕一本で掴まっているアリス。
弾いたくせに流星は、その速度を以てしてご主人様の元へ舞い戻っていやがる。
「そのつもり」
想定の範囲内、と躱されたことにまるで驚きもせずにアリスを見据える。
「今時のヒーローは黙って必殺技打つんだよ」
「違うよ」
壁からプラネットが這い上がり、ユメの背後に立つ。
「光の巨人と戦隊は言うし、ライダーはベルトさんが言うんだ」
ユメは加速装置に巻き付いていた腕を回収する。
アリスは狙撃銃を左手だけで構える。
――その爆発音が。本当の開戦の合図。
放たれる弾丸、盾となる機械の巨人。
「お前を殺す」
「キミを捕まえる」
宙を舞う流星に、ワイヤー伝いの手を伸ばす。




