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p.2

 しばらくは、紅茶とシュークリームを楽しみながら、他愛も無い話に相槌を打つ。そのほとんどが、美香の愚痴と言う名の惚気話で、内心うんざりするが、それは、顔には出さない。美香の惚気は今に始まったことじゃない。


 何故だか私に懐いた彼女は、大学時代の私の思い出のほとんどに登場する程に、常に私の隣にいた。


 出会ってから、これまで、彼女の話題はいつだって恋愛絡みだ。美香の、のほほんとした性格はイヤになるくらい男に受ける。しかも、本人も恋愛脳なので、誰それに告白された、誰それがカッコいいなんて話は、日常茶飯事だ。


 だから、私は彼女のこれまでの恋愛遍歴を全て知っていた。もちろん、彼女の結婚相手についても、付き合い始めてから、結婚に至るまでのほとんどを知っているだろう。


 それは、言い過ぎでも何でもない。なぜなら、彼女から聞かされる愚痴や惚気と同じくらい、今は不在にしている彼女の結婚相手の義博からも、彼女との日々を聞かされているからである。


 義博とは、美香よりも付き合いが長い。高校からの付き合いになる。彼とは、好きなものから嫌いなものまで不思議と気が合い、気がつけば、一番気心の知れる仲になっていた。


 だから、2人が付き合い出したと知った時は、正直驚いた。美香は、義博がもっとも苦手とするタイプの女子だったからだ。


 ほわほわとしていて、いかにも守ってあげたくなる、そんな女のことを義博は面倒だと思っていたはずだ。それなのに、今では、結婚までして美香を庇護下に置いている。なぜ、そのような心境になったのかは、どんなに問い詰めても、いつもサラリとかわされて分からずじまいだが、結局のところ、義博も他の男達と変わらないと言うことなのだろう。


 美香の少し間の抜けた甘ったるい声を聞きながら、適当に相槌を打ち、ぼんやりと自身の思考に浸かっていると、不意に、美香が手の平を打合せた。


「そうだ! 茉莉花に渡したいものがあったのよ。ちょっと待ってて」


 そう言いながら席を立った美香は、小さめの紙袋を持ってすぐに戻ってきた。


「コレ、私から茉莉花に」


 美香は、紙袋をテーブルに置くと、ずいっと私の方へ押しやった。


「何?」

「開けてみて」


 訝る私に、満面の笑みを向ける美香。促されるまま、私は、紙袋の中身を取り出した。


 手にしたそれは、ピンクと薄い緑の花が小さくまとめられ、少し長めのリボンが掛けられた花束。意図がわからず、私は、美香に向かって小首を傾げた。

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