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第9話 兎の進化先は何処か

 タブレットを覗き込むシンと麻々乃は視線を合わせて頷き、シエルカードの話題を出さないように雑談を始めた。



七枚之悪魔デモン・オブ・セッテか。噂には聞いていたけど、市場に出回っていたとはね」

「金田、そろそろ授業が始まる。席に戻った方が良い」



 素直に席に戻る金田を確認した麻々乃はまたしてもシンの肩を小突いた。



「カードは?」

「ずっと鞄の中だ」

「面白い情報が入った。きっとシンは喜ぶ」

「なにっ?」



 振り向こうとしたタイミングで教師が扉を開いた。



「お前ら煩いぞー。カード出してる奴は仕舞えよー」



 こうして興奮冷め止まぬ中、午後の授業は始まったが学生達は集中出来る筈が無かった。



 放課後。

 いつもの四人はいつもの喫茶店に向かった。



「シン、これ」



 案の定、見せつけてくるタブレットの画面を覗くとSNS上の誰かの呟きが表示されていた。

 日本語ではない為、読む事が出来ないシンに代わり麻々乃が読み上げる。



―――――――――――――――――――――――――――――――――――――


出 【魅惑の魔物】

求 【嫉妬の魔猫まびょう


―――――――――――――――――――――――――――――――――――――


 シンは片っ端からネットの海を渡り、【魅惑の小悪魔】の進化先カードを探したが、どこにも出品されていなかった。

 麻々乃も一通り、SNSとフリマアプリをチェックして確認漏れは無いと思っていた矢先、この呟きが現れた。

 その投稿時間は鷺ノ宮 朝陽が魔王杯開催を宣言した瞬間だった。



「これ、何語だよ」

「フランス語。シンのカードはフランスにある」

「……遠いな」

「そうじゃねーよ。この【嫉妬の魔猫】を手に入れれば、国際便でやり取りが出来るぜ。めっちゃ送料を取られるけどな」



 ニカッと笑うリョウを押し退け、亜梨乃がテーブルに乗り出した。



「この【嫉妬の魔猫】ってカード、昼間の記者会見の時、アタッシュケースの中にあったよね?」

「「えっ?」」



 シンとリョウは同時に間抜け面で間抜けな声を上げた。



「あった。隣に【色欲の魔兎まと】のカードも」

「えー。何、お前ら。視力良過ぎじゃね」

「それが俺のカードか」



 シンは隣に置いた鞄の中を探り、自身のシエルカードを取り出そうとしたが途中で止めた。



「…待てよ。そのフランス人は猫のカードを使ってないのか?」

「多分。悪魔と契約したのはシンが世界で初めてって言ってた」

「おいおいおい。マジかよ。お前のカードって送り主不明だよな。めっちゃヤバい奴なんじゃねーの?」



 口渇感が限界を超えた為、半分程あるカフェオレを飲み干す。



「こいつを使わないで大会に参加するべきか?」

「やろうと思えば出来るよ。シエルカードの権限を譲渡すればね。でも、私達の蛇ちゃんはどノーマルだし、リョウくんの亀ちゃんは防御特化だから、シンくんの兎ちゃんが一番勝てる見込みがあると思うよ」



 これまでのバトルを思い出しながら語る亜梨乃は食べかけのパフェとの格闘を再開した。



「ステータスを隠すんだっ!」



 名案を思い付いたように瞳を輝かせるリョウはスマートフォンを取り出し、説明を始めた。

 シエルカードはバトル中のみそれぞれのカード名を確認出来るが、それを合法的に隠蔽する方法がある。



「これならカード名はバレないぜ。でも状態異常バッドステータスのスキルはすぐにバレちまう」

「スキルキャンセル出来るか分からない。でも強力なスキルを使った方が優勝できる可能性は高い」

「やるしかないか」



 グラスの中に残った氷をガリガリと噛んでいるシンの表情は真剣そのものだった。



「ははあ~ん。シン、凪姉が関わってるな」



 流石、悪友と言ったところか。

 シンの行動原理を良く理解している。

 隣では露骨に亜梨乃の機嫌が悪くなったが、シンがそれに気付く気配はない。



「……まぁ」

「そっか、そっか。凪姉絡みならお前は本気になるわな」



 作戦会議を終えたシン達はむくれている亜梨乃を連れて帰路についた。

 その日の夜。シンは改めてシエルカードゲームのルールを確かめるのだった。

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