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第6話 いざ、公式ショップへ

 バトル後、負け惜しみの一つでも言われるかと思っていたが、彼らは亜梨乃に謝罪しシンのカードを見せて欲しいと申し出た。

 その後も軽く交流を図り、後腐れなく別れる事が出来た。

 その頃には観客達も散り散りになっており、ゲームセンター内の喧騒は落ち着いていた。



 シンは自分が本当にプレイヤーになっているのか確かめる為にシエルカード公式ショップに直行した。



「確かにお客様はこちらのカードと契約済みですね」

「いつ頃の事か忘れてしまって……。日時も分かりますか?」

「申し訳ありません。どなた様も日付までは記録されておりませんので確認出来かねます」



 未成年は親の了承なしにカードとの契約は行えないルールだ。

 身に覚えのない出来事だが実際に記録が残っており、既にプレイヤーの一人としてサーバーに登録されている。

 これから先、別のカードとは契約を結ぶ事は出来ない。



「にしても、凄ぇ強いよな。俺達のカードと違って名前も小動物じゃなくて小悪魔だしな」



 何気ないリョウの呟きに答えたのは公式ショップの店員だった。



「そのカード、もしかしてDemon of Setteの一柱ではありませんか」

「デモン……なんですか?」

「七枚之悪魔と書いてデモン オブ セッテと呼ばれている公式が公表しているカテゴリーの一つです。この世に七枚しか存在しない悪魔系のカードだと思いますよ」

「それって激激激レアだよ、シン君っ!」

「悪魔……魅惑……七つの大罪?」



 興奮する亜梨乃の反対側から麻々乃がタブレットを向ける。

 その画面に表示されているのは兎が如何に性欲旺盛かと言う内容が纏められたサイトだった。



「ふぅん。でも俺はもうバトルする気はないし」

「とか言っちゃってー。さっきの目はマジだったぜ、シン。あの頃に戻ったみたいだった」

「……俺は」



 公式ショップを後にした四人は近くの喫茶店に入った。

 細やかな祝勝会を開く四人の話題はやはりシエルカードについてだった。



「シエルカードのカテゴリーはいくつある?」

「七つ」



 麻々乃はこれまでにリョウや亜梨乃が過去に行ったバトルを記録しており、そのデータを見る限りではカードの種類は無限に思えた。



「じゃあ、このゲームのユーザーは何を楽しみに遊んでいるんだ?」

「バトル、進化、好感度上げとかじゃね」

「プレイヤー以外だとコレクションとか?」

「転売」



 思い思いの答えを述べる三人の話を聞きつつ、シンはストローに口を付けた。



「リョウや亜梨乃も進化させたいのか?」

「そりゃあなぁ」

「うん。でも凄い確率だよ? 普通のカードゲームと違うから進化ラインが揃う確率は0.000000001%とかだよ」

「じゃあ、殆どのプレイヤーがランク序のカードだけで遊んでいるのか?」

「そうとも限らねぇぞ。麻々乃、データ見れるか?」



 タブレットを操作し、画面を向ける。

 そこにはリョウとバトルを行なっている鳥が進化する映像が流れていた。



「いつもの店の常連だよ。シンも見た事があると思う。一回だけ頼み込んでバトルさせて貰ったけど、ランク破のモンスターはめっちゃ強ぇぞ」

「この人はどうやって進化先のカードを手に入れたんだ?」

「フリマアプリだってよ」

「……そうか。それが転売か」



 タブレットを自分の方へ向けた麻々乃がリョウの説明に補足する。



「この人は五十万円払ってカードを買ったって言ってた。世界にたった一枚のカードはその人にしか価値がない。でも十倍の値段が付くなら、美味しい商売」

「ご、五十万!!?」



 大声を上げながら立ち上がった亜梨乃の頭を押さえつけるシンとリョウは周囲の客に苦笑いで頭を下げた。



「金を積むしかないのか」

「あとはトレード」



 麻々乃はまたしてもタブレットを向けた。

 画面に映るのは大人気掲示板の中でもシエルカードを扱っているスレッドだった。



「これも条件が厳しいな」

「シン、兎を進化させたい?」

「……いや、俺は別に」



 否定しようとした矢先、リョウが豪快に肩を組み、顔を近づけた。



「認めろよ。お前、今めっちゃ燃えてるぜ」



 バツが悪そうなシンを笑う三人は改めて彼に礼を言って、その日は解散となった。



 その日の夜。

 ベットに寝転び、【魅惑の小悪魔】のカードを眺めるシンの心には疑念よりも好奇心が渦巻いていた。

 これは誰からの送り物なのか。

 送り主が不明な為、配達された物ではない筈だ。

 そうなるとシンの自宅を知っている者に限られる。

 小学校や中学校の同級生達は彼の自宅を知っているが、今更カードを送り付ける理由がないだろう。

 それに既にシンが契約済みのカードだ。

 本来であれば警察に相談する案件なのかもしれないが、そうしなかった。



「……凪姉なぎねぇ?」



 最後の可能性に賭けたシンはスマートフォンを取り出し、久々に彼女に連絡する。

 シンはカードをパスケースに入れて、眠りについた。

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