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第40話 奇病、シエルシンドローム

 あっという間に一週間が経ち、テレビニュースはシエルカードゲーム一色に染まった。

 その理由は単純明快で事件が起こったからだ。

 日本代表だったカガリと同様に意識不明となった若者が全国各地の病院に搬送されている事が明るみになった。

 どの患者にも目立った外傷や持病は無く、唯一の共通点としてシエルカードゲームのプレイヤー、即ち契約者であると判明した。

 それも主にバトルを楽しんでいる人達でランク急のカードを持つ者が多かった。

 彼らは意識不明なだけで治療法はなく、長期入院を余儀なくされ、病床が逼迫するという事態に陥っていた。

 そして遂に日本のみではなく、世界中でも同様の患者が確認されるようになった。



『若者を中心に謎の病気が蔓延していますが、これを"シエル症候群《シンドローム》"と名付け、専門病院を開設する方向で調整していると進堂総理が明言されました』



 テレビの中では大勢の記者に囲まれた進堂総理が現状の報告と今後の対応について語っている。

 彼もコアなシエルカードゲームのプレイヤーであり、並々ならぬ思いがあるのだろう。

 鷺ノ宮エンタープライズには原因究明と対応策を講じるように要請しているため安心して欲しいという事と、どのような状況でも世界大会は執り行うという事の二点を強調していた。



 批判の声も多く上がったが大会は中止にならず、シンの自宅には鷺ノ宮 朝陽が来訪し、決断を迫っていた。



「こんな状況で本当に大会を開催するんですか?」

「これが最後の大会になるだろう」

「発症する原因とかは分かったんですか?」

「それはまだ……。だが、必ず治療法を見つける。このゲームの開発者として誓うよ。それで、どうだろうか」

「……やっぱり参加出来ません。すみません」



 鷺ノ宮 朝陽は「そうか」と短く呟き、立ち上がった。

 どこかに電話をかけ、シンが不参加を表明したと説明すると何度か頷き、スマートフォンをシンに渡した。

 恐る恐る耳元へ持って行くと聞き覚えのある男性の声が囁いた。



「シン選手、世界大会に出場するんだ。拒否権は無い。それが七枚之悪魔《デモン・オブ・セッテ》を持つ者の責任だ」

「なっ!?」

「これが大人のやり方だ。あまり手荒な真似をさせないで欲しいね」

「……ンドゥー選手。いや、進堂総理か」

「そうだ。今の私はプレイヤーの立場で会話していない。一人の政治家として君と話している」



 スマートフォンを持つ手が震える。

 ただの高校生が内閣総理大臣と関わりを持つ事も、脅迫される日が来る事も誰が予測できただろうか。

 シンは冷静さを装い、スマートフォンを耳から離して通話をテレビ電話へと切り替えた。



「分かりましたよ。参加すれば良いんでしょ」

「良い顔をしている。その意気だ。カガリ戦のように手を抜くんじゃないぞ」



 全てを見透かしているような笑顔が気に入らない。



「大会まで時間がありません。協力して貰いますよ、おじさん」



 鷺ノ宮 朝陽を見つめる目は決意に満ち溢れていた。

 もしかすると自分もシエル症候群《シンドローム》を発症してしまうかもしれないという恐怖はあるが、家族や友人を人質に取られている以上、やるべき事は全部やっておきたい。



 シンは残りの約三週間で冬姫《ふゆひめ》、皇《すめらぎ》、リョウ、亜梨乃、その他ランキング上位のプレイヤー達とバトルを重ね、【魅惑の小悪魔】との絆を深めると同時に各国代表選手の情報を頭に叩き込んだ。

 ついでにンドゥーにもオンラインバトルを申し込み、特訓に付き合わせたのだった。

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