表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

2/76

第2話 憂鬱な主人公

 時は流れ、七年後。

 鷺ノ宮エンタープライズ主催のシエルカードゲーム公式大会、日本代表決定戦の決勝戦。

 ここで優勝した者が世界大会へのチケットを手にする。

 日本発祥のカードゲームである為、日本代表という肩書きは大変名誉な事だが同時に大きなプレッシャーを伴う。



 彼は日本代表決定戦に参加するつもりはなかった。

 しかし、主催者直々のお招きと日本内閣の首長からのご指名とあっては断るに断れなかった。



『シン選手、ここで進化宣言ダァぁぁぁ!』



 会場に一万四千人を越える大観衆が詰めかけた中で試合は行われている。

 観客のボルテージは一気に昂り、その激しい熱気と歓声でドームが揺れた。



『ランク破のカードを所持していながら、この劣勢を楽しんでいたとでも言うのかッ!? さぁ、聞かせてくれぇぇぇ! シン選手の雄叫びをぉぉ!』



 名物実況者が選手を煽り、観客は期待に胸を膨らませた。

 彼は恥ずかしさを振り払い、肺一杯に取り込んだ空気を吐き出す。



「ランクアップ・エヴォリューション!」



 重ねられたカードが輝き、呼応するように目の前では大きな変化が起きた。

 彼の契約モンスターは眩い光の繭に包まれ、その身を本来の姿に近づける為の進化を行っている。

 繭が開き、中から現れたモンスターを見て、更に会場はどよめいた。

 彼の膝までの大きさだったモンスターは巨大化し、より禍々しく成長を遂げている。

 初めて見る姿に驚愕しつつも、契約モンスターに魅了されていく彼は目を細め、口角を釣り上げた。 



「これが……進化」

「準備は終わったか? ほな、本気でぃや」



 当初は乗り気では無かった彼の心に火が灯った。

 彼はいつもそうだ。逆境であれば、ある程に興奮して力を増す。

 会場に足を運んだ観客もテレビの前で釘付けになっているであろう視聴者も彼から目が離せない。



 そんな不思議な魅力の持ち主が何故、先程まで嫌々バトルしていたのか。

 彼の置かれている立場を説明する為には数ヶ月前まで記憶を遡らなければならない。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ