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歌の龍王  作者: 朱鷺田祐介
51/74

【51】龍王の猟犬(3)

運命の劇場へようこそ

龍の秘密を追う魔道師ザンダルは、奇妙な運命に導かれ、旅立つことになる。


「歌の龍王」は、拙作のダーク・ファンタジーTRPG「深淵」の世界を舞台にした幻想物語です。


 魔道師がまじない師ではなく、魔道師たる点は「見ている距離」である。



赤の戦車


形なき混沌が現実だ。

これに秩序という形を与えて、

未来を生み出すのが我らの使命なのだ。



 魔道師がまじない師ではなく、魔道師たる点は「見ている距離」である。

 どれほど長い先まで見て、物事を考えているのか? その違いである。

 例えば、気の長いといわれる農民は1年先、あるいは数年先を見ているだろう。これから撒く種の育つまでを彼らは分かっているし、家畜たちがどう育っていくか、それを見ているだろう。次の世代のことも考えているかもしれない。

 だが、魔道師たちは数十年先、数百年先を見つめるように訓練されている。

 なぜならば、彼らの敵は無限の命を持つ魔族の《策謀》だからだ。

 魔族たちは何十年、何百年、何世代もの時をかけて、《策謀》を展開する。彼らは長い時をかけて罠を用意するのだ。

 不死者だけが可能な長期間を念頭に置いた《策謀》に対抗するため、魔道師は、人間よりも長く残る研究機関としての魔道師学院を維持している。個々の魔道師の寿命は五十年ほどでも、組織が意思と知識を保持していけば、魔族に対抗できるはずだ。

 魔道師学院は、今後数百年を視野に置いて、ありとあらゆる状況を想定し、対策を検討している。最良の方法だけではない。最悪の状況、すなわち、魔族が次々と解放され、人の子を滅ぼすという事態にならないために、その一歩手前、二歩手前の「少しでも不利を減らす」という状況への路線を検討し続けてきた。

 ザンダルの生き方も同じだ。

 火龍との戦い、という最悪の状況に対処するために、あらゆる可能性を検討し、それぞれに備える。そこへの一歩に向かって、火龍を観察し、火龍の力を学び、火龍との戦いすら検討してきた。

 そして、ザンダルが魔族《赤き瞳の侯爵スゴン》の《策謀》に巻き込まれて、わずか一月余り。すでに学院は最悪の事態を想定していた。


「魔族は必ず特定の強い心理的な傾向を持ちます」とフェムレンは冷静に答える。

「《赤き瞳の侯爵スゴン》の場合、火龍との戦いという強い目的がある。目の前に火龍がいれば、《スゴン》は火龍との戦いに向かう。そういう訳で、スゴンを解放せざるを得ないとしたら、目の前に火龍の亡霊がいるレ・ドーラはファオンの野と並ぶ候補地なのです」

 目前で顕現しつつある巨大な火龍の死霊が放つおぞましき霊力の波をものともせずに、フェムレンは言い切った。

「まあ、こう我々が考えるというのも、奴らの仕掛けかもしれませんがね」


 その通り。

 学院の反応もまた《策謀》の一部という訳だ。後四度、スゴンの名を呼べば、かの者は開放される。それゆえに、ザンダルをここに呼び寄せ、《赤き瞳》を使わせようとしているかもしれない。


 だが、考えている暇はない。

 目の前の怪物は、待ってはくれそうにない。


「後悔するなよ、フェムレン」

 ザンダルは杖を前に突き出した。

「その力を示せ、赤き瞳の侯爵スゴン!」


 どこか、封印がひとつ外れた。

 闇の中で赤い双眸が輝き、杖の先の赤き瞳が輝きを増す。

 骨塚の上で形を取りつつあった、火龍の死霊が怒りの遠吠えを上げた。

 火龍の猟犬の姿が風に揺らぐ。


(あと三度)


 龍を殺すために生まれた魔族がそう囁いた。



★本作は、朱鷺田祐介の公式サイト「黒い森の祠」別館「スザク・アーカイブ」で連載され、現在も継続中(最新64話/2021年春まで)を転載しているものです。


http://suzakugames.cocolog-nifty.com/suzakuarchive/

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