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歌の龍王  作者: 朱鷺田祐介
43/74

【43】龍骨の野(5)

運命の劇場へようこそ

龍の秘密を追う魔道師ザンダルは、奇妙な運命に導かれ、旅立つことになる。


「歌の龍王」は、拙作のダーク・ファンタジーTRPG「深淵」の世界を舞台にした幻想物語です。


「戦争と征服は異なる作業です」


白の通火


我は灯りを掲げ、後続を導く。

闇の中にも、常に道は存在するのだ。



「戦争と征服は異なる作業です」

 カスリーンの装甲馬車の上でザンダルは解説した。

北原で開発された大型の装甲馬車は、実に12の車輪を有することで、小さな家にも等しい大きさを持っている。それは、カスリーンのための居住区を兼ねるとともに、軍団の作戦本部となり、彼女の宮廷となっていた。

「戦争では、敵を倒せばよい」

と、カスリーンが答える。彼女はけだるそうに、毛皮を敷き詰めたソファに横たわっている。

「だが、征服するには、占領地を維持する工夫が必要だ」

「御見事です」と、ザンダルが頭を垂れる。

「ふ、お前が教えてくれたことだ」とカスリーン。

「知識を聞いても、身に出来ぬ者がいかに多いことか?

 いえ、私も同様ですが」

「魔道師が何を言う? お前たちこそ知識の徒ではないか?」

「残念ながら、我ら魔道師は知識に囚われております。

 知識を身につけて、その先の応用がなければ、ただの言葉に過ぎません。

 カスリーン様は、この5年間で実行に移された。

 それが素晴らしい」

「いい加減にしろ、ザンダル。何が言いたい?」

 カスリーンはきっと魔道師を睨みつける。

 魔道師は、地図を指差す。

「今回は、一気に前線を押し上げ、レ・ドーラに向かいますが、戦線が維持できなくなる限界点があります。戦場の判断は迅速かつ、適切に行わなくてはなりません。

 判断すべき時期としては、ラグレッタ砦より先、2日目と7日目」

 そこで、ザンダルの指はレ・ドーラの野そのものを指さしていた。

「レ・ドーラに踏み込んで2~3日目が、注意すべき時です。

 死した龍どもの気に狂う者が出るでしょう。

 ここで、我らのとるべき道は三つ」

「続けて、前進するか、後退するか?

 して、もう一つは?」

「その場に留まります」

「狂うのではないのか?」

「ええ、ですから、狂う理由を消しましょう」

「出来るのか?」

「龍骨をすべて回収すればいいのです」



★本作は、朱鷺田祐介の公式サイト「黒い森の祠」別館「スザク・アーカイブ」で連載され、現在も継続中(最新64話/2021年春まで)を転載しているものです。


http://suzakugames.cocolog-nifty.com/suzakuarchive/

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