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歌の龍王  作者: 朱鷺田祐介
17/74

【17】カラールの玉座

運命の劇場へようこそ

龍の秘密を追う魔道師ザンダルは、奇妙な運命に導かれ、旅立つことになる。


「歌の龍王」は、拙作のダーク・ファンタジーTRPG「深淵」の世界を舞台にした幻想物語です。


白の牧人


子供たちが砂で遊ぶ。

戯れに描いた絵に真実が描き出される。



 レ・ドーラの岸辺からカラールの山へ一刻ほど飛んだ。

 【龍翼】の魔法は、長期飛行には向かない。一応、空を飛べるというだけだ。

 空を飛ぶという行為は不思議なものだ。

 鳥や虫の場合、身体構造の軽さと翼の構造があって成立する移動手法であるが、火龍や人の子は、本来、自力で飛ぶには頑丈すぎる、すなわち、重すぎる身体を保有している。ゆえに、龍の翼を生やす魔法は、翼と言う魔法の要石を経由して、飛行の力を得ることに他ならない。

龍の民ラヴィオスは、それを常用できる魔力を血脈として受けついだ。それゆえ、ラヴィオスは羽と尾を持つ。その服は上着が貫頭衣のように見えて、背中の羽の邪魔にならぬように、背中が大きく開き、そのまま、ゆったりとしたスカート状に下へ垂れているが、腰のあたりには、前垂れがある。


(文化というものは複合的な事績の総合的な発露である)

 以前、学院で学んだ各地の風俗に関する講義を思い出しながら、ラヴィオスたちの飛行する姿を見ていると、あっと言う間に飛行の時は過ぎてしまった。


 ラヴィオスたちは、山腹に村を築いていた。塔のような、橋のような奇怪な出っ張りが崖から突き出しているのは、おそらく飛行を助けるためだろう。

「さらに飛ぶぞ」

 龍人の姫が、さらに高いあたりを指差す。

 そこには、妖精騎士たちが好んで築く、高く優美な塔を持った古城が立っていた。高い山の中腹に築かれた古代の城だ。おそらくは、あれが指輪の大公こと妖精王ミソロンギが住んだカラールの城砦であろう。


 一瞬、声が聞こえた。


 希望? 夢?

 それは一体、何を意味するというのだ?


(幻視か?)と、ザンダルは頭を振る。ここはかつて、妖精王が魔族と戦った場所。いかなる夢が封じられていようともおかしくはない。

 あの言葉を発したのは、魔族か、妖精騎士か?

 いずれにせよ、それは絶望のどん底にあったのだろう。


(理解できるということは悲しいことだ)


 誰がそう言ったかは覚えていない。魔道師学院で修行していた頃の記憶。そして、それはおそらくこう続くのだ。


(幻視に飲み込まれてはいけない。

 戻り、語ることこそが魔道師の定め)


 そうだ。辿りつけ。



 やがて、龍人とザンダルはカラールの城のテラスに舞い降りた。

 城の上層にあるテラスは、大きく開き切った大扉を経て、内部の大広間に続いていた。おそらくは、妖精騎士が空を飛んで参集するのに適した構造なのだろう。

 大広間の中には、複数の龍人が待ち受けていた。輿の上に座り込んでいるのは龍人の姫が口にした「婆様」であろうか。比較的年齢の分かりにくい龍人たちの中でも老齢による顔のしわが顕著である。

 ザンダルは、龍人の姫に促されるまま、婆様の前に進み、跪く。

「龍に仕えし人の子よ。破滅の子よ」

 婆様がよわよわしい声で言う。

「我はお前に警告を与えるために、この地に招いた。

 お前は赤き瞳を魔族より託された。

 それは、魔族の策謀である」


 《策謀》。

 魔族は復活のため、遥か古代から多くの陰謀の仕掛けをこの地上にばらまいてきた。人の子から世界を奪い取り、新たな時代を我がものとするために、魔族は複雑怪奇な深謀遠慮を張り巡らせている。一見、無関係な事柄が運命の綾織りの中で、次なる紋様を生み出すべく歪められている。

「汝がモーファットを救うべく、赤き瞳の巫女ドレンダルと戦いしはモーファットにとって避けうることのできぬこと。そして、汝がその魔の宝玉を学院に封じようとするのも当然のなりゆき。土鬼の襲撃を避けるべく策を講じて、南回りとしたも当然。

 だが、それらすべては《策謀》のうち。

 もしや、ここで今宵、我が汝に警告するのさえも《策謀》のうちかもしれぬ」

 永遠の命とおそるべき幻視の力を持つ魔族たちにとって、ありうるだろうザンダルの一生を見通すことも不可能ではない。

「だが、我らも幻視した以上、汝の定めを信じ、助言することこそ《策謀》に対する抵抗となろう。これらはすべて、《後継者の指輪》を巡る戦いなり」

 《後継者の指輪》とは、かつて、指輪の女王が巨人に託した世界の主の印。巨人が滅びた後、妖精騎士が引き継ぎ、ミソロンギまで、代々の妖精王が所有してきた。ミソロンギの失踪とともに、消えたまま、すでに幾百年を経た。

「これより、汝は古き者たちと多数出会うであろう。

 魔族たちもまた、汝の前に姿を現すだろう。

 世界は絶望に満ちるかもしれない。

 だが、汝がその宝玉を無事、学院に届けることこそ重要な任務なのだ」

 龍人の婆はそのまま沈黙した。

 ザンダルは言葉を発することができなかった。

「これが全てだ」

 龍人の姫がささやくように言った。

 婆はもう動かない。

「婆は多くの予言を背負い、伝えるためにここまで生きてきた。

 お前が最後の面会人だ」

 声が震えるように聞こえたのは、気のせいではないだろう。




魔族の策謀の話が・・・



★本作は、朱鷺田祐介の公式サイト「黒い森の祠」別館「スザク・アーカイブ」で連載され、現在も継続中(最新64話/2021年春まで)を転載しているものです。


http://suzakugames.cocolog-nifty.com/suzakuarchive/

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