表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
歌の龍王  作者: 朱鷺田祐介
13/74

【13】残された宝玉

運命の劇場へようこそ

龍の秘密を追う魔道師ザンダルは、奇妙な運命に導かれ、旅立つことになる。


「歌の龍王」は、拙作のダーク・ファンタジーTRPG「深淵」の世界を舞台にした幻想物語です。


赤の戦車


形なき混沌が現実だ。

これに形を与えて秩序を生み出すのが我らの使命なのだ。



 魔剣「野火」の刃に貫かれた赤き瞳の巫女ドレンダルは、急速に干からびていった。枯れ葉のように茶色になった体。

 ぱきっと渇いた音が地下に響き、その体は崩れ去っていった。


 だが、ナルサスはすぐに剣を納めなかった。

 じっと、目だけを動かして左右を伺う。

 その後、ゆっくりした動きで、死者を見下ろす。

 そこには、先ほどまで味方だった遺体が三つ。

 黒鬼の傭兵、二人の弓兵。

 騎士は盾を構え、まだ警戒を解いていない。


「ナルサス!」

 青龍の魔道師ザンダルはやっと声を発した。

「倒したのか?」

 その声に、ナルサスは、遺体から目を反らし、「野火」を腰の鞘に納める。

「ああ、殺した」

 ナルサスは、じっと魔剣の柄を見下ろす。

「あの魔女は殺した。しばらくは出て来ない」

 魔剣使いの傭兵はやや空虚な声で答える。

「ならばいい」

とザンダルが答える。あたりの魔法の気配も消えている。幻視にひっかかるのは、ナルサスの魔剣だけ。それもまるで牛を食らって満足した火龍のように、殺気がおさまっている。


「終わったのであれば、魔道師殿に問おう」

と、騎士ゾロエが赤い宝玉を持ち上げる。もはや、光は弱まっている。

「これはいかがする?」

「我が預かる」と、ザンダルは前に進んだ。「それは騎士殿には邪悪すぎる」

 騎士は、宝玉を渡すとその場に再び座り込んだ。

「悪いが、魔道師殿とナルサス殿で援軍を呼んできてもらえぬか?

 この者たちの遺体を残していくのは忍びない」

 ゾロエにとっては、一時的とはいえ、部下であった者たちだ。

 主人として、出来る限りのことはする。

「もはや双魚はおらぬと思うが、ゾロエ殿、お一人でよいのか?」

と、ザンダルが問い返す。

「この地下を熟知し、その宝玉を処分する役割に関わりないのは、この私しかおらぬ。

 ナルサス殿には、魔道師殿の警護をお願いしたい」



「なあ、魔道師殿」

 地上へ続く扉へ向かって道を戻りながら、ナルサスはザンダルに囁いた。

「『歌の龍王』という言葉を聞いたことがあるか?」

「残念ながら、ないな」とザンダル。

「龍王の件は、確かに我が専門なれど、世に十二と一騎ありとされる龍王も、そのすべてが現在も知られている訳ではない。その中に、歌の龍王という二つ名を持つ者はいない。

 そういう龍と出会ったことがあるのか?」

「いや」と、ナルサスは剣の柄をなでる。「この剣は、殺した者の命を吸う。その時、その者の想いが伝わってくることがある。あの魔女もそうだった。なぜか、最後に奴の声が聞こえた。『歌の龍王』と」

「それは調べる必要がありそうですね」

「もう一つ、気になることがある」とナルサス。「俺が殺した時、奴は笑っていた」

 ザンダルはぞっとした。

 なるほど、ナルサスがすぐに警戒を解かなかったはずだ。

 魔剣に斬られて死ぬというのに、笑うとは……

 ザンダルは、懐にしまった赤い宝玉のことを思い出す。

 魔族の封印を解き明かす道具。

 六度、名前を呼ばせれば、封印は解かれると、あの魔女は言った。

 すでに二度、ナルサスは名前を呼んでしまった。

 つまり、後四度。

 そして、忘れてはならないこと。

 魔族は死なない。

 おそらく、ドレンダルももはや死なない。

 仮の身は滅ぼされても、いつか甦る。

 この赤い宝玉を取り戻そうとするかもしれない。

「水底に沈めてしまえばいい」

 ナルサスが言う。

「いや、沈めても無駄だ」とザンダルは答える。「水龍ティウチノスがいたころならば、魔族も躊躇うだろうが、今のアラノス湖にどこまでの封印の力はない」

 ザンダルは、選択した。

「ナルサス殿、もう少し付き合っていただこう。

 私は、この宝玉を魔道師学院に届けようと思う」

 魔道師学院とは、世界でただ一つ、魔法を研究している場所である。中原と北原の中間に位置するグラム山の山中にある。モーファットからは、大河を遡っても二カ月はかかる遥か北の地である。

「そこならば、封じられるというのだな?」

 ナルサスの問いに、ザンダルは強くうなずいた。



★本作は、朱鷺田祐介の公式サイト「黒い森の祠」別館「スザク・アーカイブ」で連載され、現在も継続中(最新64話/2021年春まで)を転載しているものです。


http://suzakugames.cocolog-nifty.com/suzakuarchive/

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ