婚約破棄事件簿 ~ 王太子がやらかしました! ~
州王⇒国王のようなもの
州⇒国のようなもの
アームストロング子爵⇒元帥。冒険者現役時代より少ぉぉぉぉし衰えてるけど、Zランクの実力は健在。
Fランク⇒測定できる最高ランク。いずれGランクが新設されます。
Aランク⇒新人のランク。ランクアップするとBランクになる。
儂は州王である。
現在、州が壊滅の危機である。
ふむ、意味がわからないとな?これから説明するから黙って聴いとれ!
事は数分前……
『エリザベス=フォン=アームストロング!貴様は未来の王妃であるリリィを虐めていたことは明白!よって貴様との婚約を破棄する!』
王太子である愚息がこの卒業パーティーで馬鹿をやらかしおったのだ!
エリザベス嬢はアームストロング子爵家の令嬢でな、愚息の婚約者なのだ。学業は勿論のこと、王妃教育でも優れた成績を出しており、貴賤を問わず慈悲を与える聖女のような娘だ。さすがに武の方はそこそこだがな。
あの娘が義娘になってくれる日を、来月の結婚式の日を、王妃共々楽しみにしておったのだが……。
あの馬鹿は別の令嬢に堕ちおった!
その令嬢はコンカドール公爵家のリリィ嬢のことなのだ。愚息とエリザベス嬢との二つ下の学年なのだ。学業の方は高位貴族に相応しく、常に好成績をだしておる。なんなら当時のエリザベス嬢よりも若干ながら優れておるほどだ。
なに、家格も成績も上ならリリィ嬢でいいだろうとな?そこも含めて説明するから黙って聴いとれ。
問題点は三つある。
まずひとつ、これは政略による婚約ではない。
当時五歳であった愚息が望んだ婚約でな。当時の州王であった父上、王妃であった母上、王太子であった儂と、王太子妃であった現王妃との四人で頭を下げて愚息の婚約者にしてもらったのだ。
アームストロング子爵は特に反対は無くてな、娘さえ良ければと。斯くして愚息とエリザベス嬢との婚約は相成ったのに。
わかるか、これは愚息が望んだものなのだ!
次にひとつ、リリィ嬢は阿婆擦れであるということ。
確かにリリィ嬢は家格も成績も王太子妃に相応しいと言えよう。しかし、かの令嬢は愚息だけでなく複数の婚約者や配偶者のいる男に手を出しておるのだ!
性質の悪いことに男達に破局させては別れを繰り返しておる。犠牲者には王妃の甥子も含まれており、近々処罰しようとしていたところだ。
まさか愚息までもが歯牙にかかっておったとは……もっと早く発覚しておれば……。
最後にひとつ、これが一番の厄介事でな……。
アームストロング子爵は娘のエリザベス嬢を溺愛しておる。
それだけならば解決法はあったのだが、子爵は州内最強の元帥なのだ!
少々話は逸れるが、
この世界には冒険者ギルドというものがある。そこに登録しておる冒険者たちにはランクが下からA、B、C、D……と現在はFまで、そしてその上にZランクがある。
非公式に更に上にΖΖランクがあるがそれは置いておこう。
さてアームストロング子爵は叙爵される以前は平民としての冒険者であった。いまでこそ多少衰えておる(と思う)が、当時はZランクであった。
その実力は下位の龍でさえZランクを二桁揃えてようやっと討伐できるところ、彼は上位の龍を単独で討伐し得るのだ。
無論Zランクと言えどもピンキリではあるが、彼ほどの者となれば世界でも片手で数えるほどである。
そんな彼をとある功績を口実に我が州の子爵にと取り込んだのだ。
誤解せぬよう先に言っておくが、我が州軍は決して弱くはない、むしろ龍を討伐した実績もある自慢の軍だ。
そんな軍も彼が暴れれば一晩と持たずに壊滅される。
わかるか、そんな子爵が溺愛するエリザベス嬢に愚息が何をしたか!?
そして子爵もまたこの卒業パーティーに参加しておるのだ!
タ ス ケ テ……