第4話 ふたつの世界。ドールガジェット戦2
予定よりも、1時間ほど遅れての投稿です……
「メル! こいつを使って足止めしておいてくれ!」
ラディウスは取り出したクロスボウ型ガジェットをメルメメルアへと渡す。
「わ、わかったのです!」
メルメメルアはそれを受け取ると、頭に流れ込んできた情報どおりに、キリングアイドルへとそれ――ボルトが何もセットされていないクロスボウの先端を向け、トリガーを引いた。
次の瞬間、クロスボウの先端に、矢の形をしたギラギラと輝く紅炎が次々に生み出され、そしてそれらが乱れ飛ぶようにして射出されていく!
「――ファイアボルト乱れ撃ち! なのです! 続けてスパークボルト乱れ撃ち! なのです!」
メルメメルアの言い放ったとおり、クロスボウからガトリング砲の如き速度で射出され続けている魔法のボルトが、紅炎からバチバチと放電する青い電光へと切り替わる。
「GYGWOHJSZ――!」
ファイアボルトとスパークボルトの乱れ撃ちをまともに食らい、その場に釘付け状態となるキリングアイドル。
ラディウスはその隙に、ドリルを発射して筒状の柄だけとなったガジェットにボンベのような形状のガジェットを連結。
「よし、アタッチメントリビルド完了っ! こいつも食らっとけぇぇっ!」
ラディウスはそう言い放ち、メルメメルアの横から筒状の柄をドールガジェットへと向ける。
と、次の瞬間、筒からドラゴンのブレスを思わせる勢いで蒼炎が放射され、瞬く間に目の前のドールガジェットを飲み込んだ。
「GWATN……GTGT……ZKA……SC――!」
そんな相変わらずの音にノイズが混じったかと思うと、蒼炎をまともに浴びたキリングアイドルが爆散した。
「す、凄いのです! ドールガジェットを倒したのです!」
「喜ぶのはまだ早いぞ。あと1体いるからな!」
メルメメルアにそう忠告しつつ、次のガジェットを取り出そうとした所で、ラディウスが気づく。
もう1体のドールガジェット――スナイプフィギュアが砲撃体勢に入っていた事に。
「げっ! あれはまずい……っ!」
紫色に輝く光の粒子がアームの掌部分にある同じく紫色の結晶体のようなものへと収斂し続けているのが目に入ったラディウスは、慌てて伯爵邸へと飛ぶ。
――あれは、おそらくソーサリーブラスター……魔法のビームだ。
ってか、まさかあんなものを搭載しているタイプだったとはな……予想外すぎるぞ……
あんなものを撃てるんじゃ、瓦礫の多い広い場所に誘い込んだ意味は、あまりなくなってしまったな……。対策をしないと、確実に瓦礫ごと消し飛ばされるのがオチだ。
ラディウスはそんな事を思案しながら、伯爵邸の一室で、ソーサリーブラスターを凌ぐためのガジェットを作り始める。
と、程なくして部屋の入口のドアをノックする音がラディウスの耳に届く。
そしてそれに続く形で、屋敷の使用人の声が聞こえてくる。
「ラディウス様、お迎えの馬車が到着いたしました」
――おっと、もう来たのか。
まあ、他のガジェットを作るのにも結構な時間を要しているしな……
仕方ない、一旦セシリアと共に街へ戻るとするか。
必要な材料……どころか、それ以外の材料も含めて、あらかたストレージに格納済みだし、ここじゃなくても作る事は出来るからな。
なんというか……こういう時は向こう側へ行かない限り、向こうはあの瞬間のまま、という仕組みは実に助かる。
ラディウスは使用人の呼びかけに対し、心の中でそう呟いて結論を出すと、
「わかりました、ありがとうございます! すぐに行きます、とお伝えください!」
と返事をすると、出してあった工具や素材をストレージに格納し、部屋を出る。
「あ、ラディ!」
玄関を出た所で、先に外にいたセシリアがラディウスに気づき、駆け寄ってくる。
「おい、回復したばかりで走ると危な――」
「わひゃっ!?」
ラディウスの警告の途中で、蹴躓くセシリア。
ラディウスは即座に籠手型のガジェットを起動。
魔法の錨――アストラルアンカーを大量に放出すると、鎖の部分でセシリアを雁字搦めにする事で、セシリアの転倒を阻止する事に成功した。
……と、思ったその刹那、
「ひぎゃぁあぁっ!?」
セシリアが何やら素っ頓狂な声――悲鳴を上げた。
後半はドールガジェット戦ではないですが、まあ『向こう側では』戦闘継続中なので……
ちなみに『ボルト』は、クロスボウ用の太くて短い矢の事です。
(クロスボウでは、弓で使われる矢は発射出来ないので、区別する為にこう記述しています)
次回も1日間を空けて、金曜日の更新を予定しています。
なかなか時間が取れずに更新頻度が低下気味で申し訳ありません orz
追記:フリガナに誤字があったので修正しました。
また、ドールガジェットがガジェットドールとなっていた箇所を修正しました。




