第3話 ふたつの世界。ドールガジェット戦1
予定よりも少し更新が遅れました……
「――さて、トラップの準備は整えたが……果たしてアレでどれだけダメージを与えられるやら……だな」
瓦礫の裏に身を潜めながら呟くラディウス。
「……十分すぎる程のトラップだと思うですが、まだ足りないです?」
「ドールガジェットは、とてつもなく頑丈だからな……。あれくらいで倒せたら整備不良を疑うレベルだ」
メルメメルアの問いかけに対し、腕を組みながらそんな風に返すラディウス。
「ラディウスさんはドールガジェットと交戦した事があるです?」
「ああ、一度だけある。ただ……その時は単体だった」
ラディウスが時を遡る前の事を思い出しながら頷き、そう答える。
――問いかけておいてなんですが、交戦した事があるというのが、わけわからないのです……
本当に、一体どこの時代から来たです……?
てな事をメルメメルアが困惑しつつ思案した直後、爆発音が扉越しに響いてきた。
どうやら、通路に仕掛けられたトラップガジェットが発動したようだ。
「おっと、引っかからないかと思ったが、引っかかったな……。ガジェットへの探知能力が低いのか? ……いや、あの程度の魔法なら、大したダメージを受けないと判断した可能性もあるな」
ラディウスはそう呟きながら扉を注視する。
「私の探知魔法にも反応があったのです! もう扉の向こう側にいるのです!」
メルメメルアが自身のガジェットを確認してそんな風に言った直後、扉からドンッという衝撃音が聞こえる。
ふたりがそちらへと視線を向けると、扉には凹んだ痕が出来ていた。
刹那、凄まじい放電音が響き渡り始め、それに合わせるようにして、別の魔法の音や、激しい金属音もまた響き始める。
「どうやら、扉の破壊とガジェット破壊、その双方を同時に始めたようだな」
「扉が破壊される前にドールガジェットが壊れてくれると助かるですが……」
「まあ、難しいだろうな」
ラディウスの言葉どおり、しばらくすると放電音がしなくなり、扉が砕け散った。
バチバチとあちこちをショートさせ、各部のパーツにも損傷が多く見られる3フォーネ近い体躯の4本腕機械人形――2体のドールガジェットが姿を見せる。
「が、頑丈すぎるのですっ!」
「結構ダメージは入っているようだが、まだ動けるか……やっぱり」
そんな事をふたりが口にしたその直後、ラディウスたちの姿を捕捉した2体のドールガジェットの片方――キリングアイドルが、魔法弾を放ちながら突撃してくる。
「なんとも判断の早い事で……っ! なら、まずはこいつだ……っ!」
ラディウスは螺旋を描く溝の入った大きな円錐状の穂先を持つ槍を、ストレージから取り出し、それを構える。
――あれは……ランス……です?
妙な溝が入っているですが……どうみても、昔の騎士が馬上で使ったという槍――ランスなのです。あんな物でなにをするつもりなのです?
と、メルメメルアが心の中で疑問を呟いた瞬間、穂先がけたたましい駆動音を響かせながら、凄まじい速度で回転し始める。
「――ドリル……シュートッ!」
ラディウスがそう言い放つと同時に、穂先だけが超高速で回転したまま柄から分離され、突っ込んでくるキリングアイドルに向かって一直線に襲いかかる。
キリングアイドルは接近するそれに気づき、4本のアームのうち2本をクロスさせ、ガードの構えを取るも、穂先――いや、ドリルの螺旋が生み出す衝撃に押し負け、
「GYGGIAAT!? STFDHPK――!」
という声なのか何なのかさっぱり理解出来ない音と共に、ガードしたアームごと穿ち貫かれ、そのボディに大穴を開けながら、床へと倒れ込む。
後ろに居たもう1体のドールガジェット――スナイプフィギュアは回避行動を取ったため、ボディを保護するアーマーの一部と、アームの1本が持っていたライフルに似た武器が砕けただけだった。
「GGU! KDWTAHAS!」
大穴を開けられたキリングアイドルが魔法弾を放ちつつ、立ち上がる。
「ちっ、あれだけのダメージを与えても、まだ動くか……っ! わかっちゃいたが、やはりタフだな……っ!」
ラディウスはそんな悪態をつきながらも、次の攻撃に移るべく、新たなガジェットをストレージから取り出すのだった。
「1」とタイトルに書いてある通り、戦闘自体が次の話に続きます。
さすがにこいつとの戦闘は、1話では収まりません……
なお、今週は先週に引き続き、1日おきの更新とさせていただきます orz
追記:ドールガジェットがガジェットドールとなっていた部分を修正しました。