第1話 ふたつの世界。戦闘と製作を行き来する者。
「……ところでルティカ、その剣、いつまで持ってるの……? っていうか、もしかして持っていくつもり?」
「あーいや、使えそうかなーと一瞬思ったんすけど、よく考えたら、これ鞘がないから微妙っすね。抜身で持ち歩くのは色々問題があるっすし……。元の場所に戻しとくっすかねぇ……」
ラディウスが伯爵邸へと戻ってくると、その目の前で伯爵邸を出発しようとしていたふたりが、そんな事を言っていた。
「あ、その剣なんだが……どうにもちょっと気になるから、俺が少しばかり調べてみようと思う。それが終わったら俺が戻しておくよ」
「あ、了解っす。それじゃあ、これは渡しておくっすね」
ラディウスがそう声をかけると、それを聞いたルティカがラディウスの方へと戻ってきて、剣をラディウスへと手渡した。
「ああ、たしかに受け取った。それで……ふたりはこのまま宿へ――古き籠手亭へ行くのか?」
受け取った剣をストレージに放り込みながら問うラディウス。
「その前に一旦、冒険者ギルドかな? 色々と報告しておかないといけないし」
「そうっすね。それに多分、人手募集の依頼書も貼ってあるんじゃないかと思うっすし」
「なるほど、そう言われるとそうだな」
ラディウスはふたりの話に腕を組み、頷く。
「それじゃ、また宿でっすよーっ! アメリア、誰かに依頼を取られる前に急ぐっすよ!」
そう言ってくるりと向きを変え、手を振ると、伯爵邸から出ていくルティカ。
「え、あ、ちょ、ちょっと待ちなさいってー! ……って、そ、そうだっ」
アメリアは慌てて追いかけようとした所で、何かを思い出したように足を止め、ラディウスの方を向く。
そして、
「――改めて色々助かったよ。ありがとう!」
と、笑みを浮かべてお礼を述べると、改めてルティカを追いかけて走っていった。
「って、だから待ちなさいってのー!」
「な、なんとも騒がしい立ち去り方な事だな……。だけどまあ……あれだけ元気なら問題はなさそうだ」
ふたりの立ち去った後をしばらく眺めていたラディウスは、ぽつりとそんな事を呟くと、ガジェット作成に利用している部屋へと向かう。
「さて……と。幸いというべきか、材料は山のようにあるからな……。拝借して色々作らせてもらうとするか」
ラディウスはそう呟くと、素材を片っ端からかき集め、数多のガジェットを作り始める。
……とはいえ、さすがにドールガジェット2体を撃破するために必要なガジェットを、そう簡単に作り終えられるわけもなく……ラディウスは、セシリアや兵士たちの経過を観察するという名目で伯爵邸に泊まりながら、ガジェットを作り続けた。
「どうやら兵士たちの方も、もう大丈夫そうですね」
兵士たちの経過観察を終えたラディウスが、横にいる司祭にそう言葉を投げかける。
「そのようですね。セシリア様の方も目覚められましたし、今日にでも使いの者を送って、馬車を呼び寄せたら街へ戻ろうかと思います。ラディウス様もご一緒にどうですかな?」
「いいのですか? ちょうど今日戻る予定だったんですよ」
「無論ですとも。というより、むしろその方がありがたいのです。ここで恩人の――救世主たる貴方様を置いていく方が、教会として正直言うと問題だったりしますし」
ラディウスの問いかけに対し、そんな風に答える司祭。
「は、はあ……そうなのですか? では、お言葉に甘えて。……あ、出発まで、少しガジェットの調整をしています」
ラディウスはそう言って話を切り上げると、その場を立ち去る。
――う、うーん……。なんだか随分と持ち上げられているなぁ……
まあ……セシリアがいる事だし、大事にはならないよう、上手く調整出来るとは思うけど。……多分。
そんな事を思いつつ、ドールガジェットを倒す為、先行して作ったトラップ用のガジェットを手に、一度遺跡の方へと戻るラディウスだった――
かなり遅くなりましたが、どうにか木曜日中に投稿出来ました……
(本当に、本当にギリギリ木曜日という様な状態ではありますが(汗))
片方の世界で戦闘していて、片方の世界で色々作るという、なんともまあ……な状態です。
次回は土曜日中の投稿を予定しています!
(いつもどおり、12時に出せると良いのですが……正直、不明です。すいません orz)
追記:タイトルが間違っていたので修正しました。