第4話 古き塔。階下の探索。
「……あれ?」
「どうかしたのか?」
小首を傾げるメルメメルアに問いかけるラディウス。
「あ、いえ、この遺跡に立ち入る人はほとんどいないはずなのです。なので、普通に考えたらエレベーターは上で止まっているはずなのです。なのに下から上がってくるというのが不思議だったです」
というメルメメルアの言葉にラディウスは、思う。
――たしかに頻繁に使われているわけではない以上、誰かがこのエレベーターで下に行ったのなら、必ずもう一度使って上に戻ってくるはずだ。
下から戻ってくる時だけ徒歩で……というパターンであれば、下にかごが止まったままなのもわからんではないが、そんな事を敢えてする必要もないしなぁ……
「誰かが下にいるって事か?」
「そう考えるのが妥当な気はするですが……さっきの兵士さんは、何も言っていなかったのです。それに、誰かが先に入っているという情報も来ていないし、聞いていないです」
ラディウスは念の為、注意しておいた方が良いかもしれないと考え、エレベーターの到着に対して身構えた。
程なくして、エレベーターが到着しドアが開く。
一瞬緊張したが、誰も乗ってはいなかった。
「とりあえず、誰も乗ってはいなさそうだな」
「そのようなのです。下へ行ってみるしかないです」
そう話しつつ、ふたりはエレベーターに乗り込む。
エレベーター内には特にボタンの類はなく、ふたりが乗り込んで5秒程で自動的にドアが閉まり、下へ向かって動き出した。
上で待っていた時間と同じ時間を掛けて下へ移動した後、エレベーターが再び停止。目の前のドアが開く。
念の為と思って構えていたラディウスだったが、ドアが開いた先には誰もいなかった。
ただ、どこかで見た事のある機器がそこかしこに半壊あるいは完全に壊れた状態で転がっていた。
暗くて見えづらいがよく目を凝らしてみると、割れた培養槽らしきものも複数並んでいるのが分かる。
――これは……伯爵邸の地下――ルティカがエクリプスと融合させられていたあの場所に似ているな……
いや、どちらも同じ人間が元々あった遺跡を改造して作り上げた物なのだから、当然といえば当然か。
それにしても……やはりというべきか、あの機器はこちらの世界の物だったようだな……
「うーん……。照明は中途半端に生きてるが……ちょっと光の強さが足りないな」
「前来た時よりも少し暗くなっているですね。照明魔法で明るくし――」
メルメメルアがガジェットを取り出すよりも先に、ラディウスがガジェットを取り出して前方を照らした。
「――凄い光量なのです……。一体、このガジェットの魔法は何なのです?」
「ん? 一般的な照明魔法を改造して作った代物だな」
「そ、そうなのですか……」
――やっぱりとんでもない人なのです。古代から来た人ではないのに、どうしてこんなに高い技術を持ってるです?
……まさか、過去じゃなくて未来から来たとかだったり……するですかね……?
あまりにもサラリと言うラディウスに、メルメメルアはそんな事を思った。
「で……どこに目的の代物があるんだ?」
「あ、素材が保管されているのは、この先の通路を進んだ所なのです。すいませんが、そのガジェットを貸していただけると助かるです」
ラディウスの問いかけにそう返すメルメメルア。
ラディウスが快諾してガジェットを手渡すと、メルメメルアが前に立って先導するように歩き出す。
ラディウスはそれに続く形で、機器の残骸やらなにやらが転がっている広場を進んでいき、通路へと入る。
「こっちもあちこちが壊れてるな……。ってか、天井が崩壊して良く分からん配線やら配管やらが垂れてきているし……」
「所々、液漏れしている所があったりするですが、とりあえず触れたら危険な物はないので心配無用なのです」
ラディウスの呟きに、ちょっとズレた事を言って返すメルメメルア。
「いや、そこは気にしていないが……ん?」
メルメメルアに対して言葉を返す途中で、ふと気づくラディウス。
「どうかしたです?」
「前方で光が揺らいだ気がしたんだよ」
「光が揺らいだ……です?」
「ああ。……もしかしたら、誰かがガジェット――照明魔法を使って、あの辺りを照らしていたのかもしれないな」
ラディウスはそう答えながら、マリスディテクターを使う。
――あれがもし人だったとしても、さすがにこの時点で害意を持っているとは思い難いが……。まあ、念の為だ。
そんな風にラディウスが思った直後、マリスディテクターが害意を探知した。してしまった。
引き続き、あまり時間が取れない為、次の更新は明後日になります…… orz




