第2話 古き遺構。埋もれし塔と黒い石箱。
「それにしても……さっきも言ったけど、レゾナンスタワーって思ったよりも背が低いけど、あれで通信に問題はなかったんだろうか……?」
レゾナンスタワーへの道すがら、ラディウスがそんな疑問を口にする。
地球にいた頃の知識――電波塔についての知識から、ふとそう思ったのだ。
「――実はあのレゾナンスタワーなのですが、長い年月の間に、全体の3分の2以上が土の中に埋もれてしまっているです」
「ああ、そういう事か……。それなら納得だ」
メルメメルアの解答に対し、そう言って首を縦に振るラディウス。
そして、一呼吸置いてから顎に手を当て、言葉を続ける。
「って事は、あの2倍の長さが地下にあるって事か?」
「そういう事なのです。ちなみにヴィンスレイドが作り変えた区画は、かなり下なのです」
「……それは行くのに骨が折れそうだな……」
――古代ならエレベーターとかも使えただろうが、現代では既に遺跡と化しているわけだからさすがにあったとしても使えないだろうなぁ……
と、そんな事をラディウスが思っていると、
「エレベーターが生きている……というか、正確に言うと復活しているので、そんなにかからずに辿り着けるですよ」
なんて事をさらりと言うメルメメルア。
「マジか!」
「マジなのです」
「まさか、エレベーターが使えるとは想定外だな……」
「皮肉な話ではあるですが、それを復活させたのはヴィンスレイドなのです」
メルメメルアがため息混じりに言って首を横に振る。
「あー、そりゃたしかに皮肉な話だな。……しかし、ヴィンスレイドって随分と優秀だったんだな。まあ、宮廷魔工士の筆頭ってくらいだし当然か……」
「はいなのです。私も詳しくは知らないですが、こういった鉄道の動力機関となるガジェットの開発にも関わっていたりしたそうで、かなり優秀だったそうなのです」
――あいつと対峙した時、あいつがべらべらと喋っていて隙だらけだったお陰で、拍子抜けする程あっさりと倒す事が出来たが……もし、最初から全力で仕掛けて来られていたら、苦戦したかもしれないな。
メルメメルアの言葉を聞きながら、ラディウスがそんな事を思っている間に、目的地であるレゾナンスタワーの入口と思しきものが見えてくる。
よく見ると、その入口の手前には立て札が設置されており、『帝国政府管理遺跡』と記されていた。
「なるほど……たしかにアルベリヒの言った通り、一応管理はしているみたいだな……兵士っぽい人もいるし」
「何気に周囲に感知魔法を常駐化したガジェットも設置してあるですよ。まあ……既に使われなくなって久しい旧式も旧式の物ですが」
ラディウスの言葉にそんな風に返しつつ、肩をすくめてみせるメルメメルア。
「ほら、あそこにもあるです」
と、そうメルメメルアが言って指さした先へとラディウスが視線を向け、そして気づく。
――あの黒い石箱のような形状のガジェットは……伯爵邸へと続く道に設置されていた物と一緒だな……
……って事は、こちらの世界で旧式の型落ちとなった奴を、あちらの世界へ持ち込んだって事なのか……?
そして、案の定……というべきか、そのガジェットの感知魔法によってふたりの接近を知った兵士が、ラディウスたちの方へと近づいてくるのだった。
設置式の感知魔法ガジェット再登場です。あちら側との繋がりですね。